▲高値相場が続くフィアット500のツインエア系。しかし高値な車には高いだけの良さがあるものです ▲高値相場が続くフィアット500のツインエア系。しかし高値な車には高いだけの良さがあるものです

人は興味がないものにはたとえ1000円だって払いたくない

皆さんこんにちは、輸入中古車評論家の伊達軍曹です。わたくしを含め、中古車情報媒体に寄稿している多くの人は「高値が続いていた○○社の××というモデルの相場がついに下がった! 買い時到来だ!」みたいなことを書いています。それはそれで一つの正解なのでしょうが、たまに思うことがあります。そのモデルの相場が下がるということは、本当に良いことなのなのだろうか? それって本当に「買い時!」だったり「お得!」だったりするのだろうか?と。

中古車の価格というのは政府とか大メーカーが決めているものではなく、いわば「人気投票の結果」みたいなものです。人気が高ければ年式とかにかかわらず価格は上昇しますし、人気がなければ、いくら新しかろうがオプション装備満載だろうが、価格は下がります。

では、その人気は何で決まるかといえば、端的に言ってしまえば「良い車かどうか」ということでしょう。原理主義的な意味合いで良い車か否かではなく、「その車を買った人の多くが満足できたかどうか」ということです。

で、多くの人が満足した車というのには、やはり良い部分が多々あるわけです。筆者はAKB48についてまったく詳しくありませんが、人気投票(総選挙というのでしたっけ?)で上位に入る人はやはり可愛らしく、そして何かと魅力的なはず。それと同じことです。

そして冒頭の本題に戻りますが、以上のように考えたとき、「相場が下がった中古車」というのは本当にお得なのか?と疑問に思うのであります。なぜならば、中古車の相場が下がるのは、下がるだけの「理由」があるからです。「年数が経過してボロくなった」から「飽きられた」まで様々ですが、そのレベルはさておき、なんらかのネガティブな理由があって初めて中古車の相場は下がります。

そうして価格が下がったモデル=ネガティブ要因が増えたモデルを多少安く買うよりも、ちょっと割高だったとしても人気が高いモデル=何かと魅力的なモデルを買ったほうが、総合的に見れば「割安」なのではないか?と思うのであります。

よく知らないAKBのことをたびたび例に出すのもアレですが、例えば彼女らの握手券というものの値段はたぶん一律なのでしょう。しかし仮に、あなたが大好きでたまらない上位の誰それさんの握手券が1万円で、下位のよく知らない人の握手券が1000円だったとします。その場合、「下位の誰それさんは1000円だからお得だな! そっちに行こうかな!」とは思いませんよね? 高くても、長蛇の列だったとしても、上位の誰それさんのほうに行きますよね? 興味のないものに対しては1000円だって払いたくないし、本当に好きなものならばある程度の出費はいとわないのが人間というものです。

で、「ある程度の出費」が必要な状況が長らく続いているのがフィアット500の中古車です。

▲初期の4気筒はさておき、2010年途中に追加された2気筒ツインエアはなかなか相場が下がりません ▲初期の4気筒はさておき、2010年途中に追加された2気筒ツインエアはなかなか相場が下がりません

2008年から2010年途中の初期モデルはさすがに最近ちょっと安くなってきましたが、2010年途中からの後期型の中古車相場は一向に下がる気配がなく、特に先進的な2気筒エンジンを積む「ツインエア」の相場は微上昇が続く始末です。

そうなったときに「フィアット500は高いから、別のメーカーの××にしよう」とか、「本当は2気筒のツインエアが欲しいけど、高いから、安くなった4気筒にしよう」と思う人も多いでしょう。それはそれで間違いだとは思いませんが、わたしから言わせると決して「お得」ではありません。なぜならば、中古車に限らずお買い物の損得というのは目先の金額だけではなく「結果として満足できたか否か」で測るべきだからです。

そして、高値が続くツインエアはやはり魅力的です。燃費が良いというのも当然ありますが、それ以上に、あの妙に有機的なビート感は、その他のエンジンでは決して得ることのできないワン・アンド・オンリーな魅力にあふれています。「エンジンはどうでもいい、とにかくフィアット500のデザインが好きなんだ!」という人は安い4気筒を選べばいいと思いますが、そうでないならば、多少の高値は「必要経費」と割りきってツインエアを狙ったほうがいいと、筆者は思います。結局はそのほうが、広義の「割安感」「お買い得感」を感じることができるからです。

▲2気筒エンジンならではの有機的なビートが心地よいフィアットのツインエア・エンジン ▲2気筒エンジンならではの有機的なビートが心地よいフィアットのツインエア・エンジン

ということで今回のわたくしからのオススメは、「ちょっと高値かもしれないけど、好きならば今買って絶対に損のないツインエア系のフィアット500系」です。

text/伊達軍曹