▲ジャガーとTWR(トム・ウォーキンショー・レーシング)が共同で製造 ▲ジャガーとTWR(トム・ウォーキンショー・レーシング)が共同で製造

エンジニアの妄想が生み出したスーパーカー

原稿執筆時点でカーセンサーnetに1台のみ掲載されている希少車をご紹介します。今回、2014年9月24日に発見したのは「ジャガー XJ220」です。フェラーリ F40と同時期にデビューした新車時価格は47万ポンド(当時の為替レートで1億円弱)というスーパーカーです。

この車が出来たキッカケは、当時のジャガー技術部長であったジム・ランドル氏の妄想。1984年のクリスマス休暇中に暇を持て余したランドル氏は、公道も走れてサーキットでも活躍したCタイプやDタイプを振り返り「今、CタイプやDタイプのような車を作ったら、どんな車になるか」と思いをはせたそうです。

その休暇中に段ボールで4分の1スケールのシャシーモックアップを作り、同僚のキース・ヘルフェットにボディのデザインを依頼。そして1987年ごろにジャガー社内の有志を募り、就業時間外にボランティアで開発がスタートします。当然、開発資金はないので既存のサプライヤーへも協力を求めパーツの無償提供をしてもらっていました。そのためエンジンは当時、ル・マン用に作ったV12エンジンのスペアを載せたんです(笑)。

▲コスワースのエンジニアが設計したオースチン・ローバーの「V64V V6ツインターボエンジン」がベースで、1989年にTWRが製造権利を獲得 ▲コスワースのエンジニアが設計したオースチン・ローバーの「V64V V6ツインターボエンジン」がベースで、1989年にTWRが製造権利を獲得

翌1988年、バーミンガムモーターショーでV12エンジンを積んだ4WDのコンセプトモデルを発表すると、たちまち世界中の大富豪から1500件にのぼる注文が殺到し、手付金として5万ポンド(当時の為替レートで約1000万円)が払い込まれたそうです。

ただ、時間やコストなどの制約でそのままのモデルでの市販化はできず、なくなく4WDをあきらめて、かつてジャガーのグループ会社であったオースチン・ローバーが開発したV6ツインターボエンジンをデチューンして搭載。晴れて販売することになりました。

当該中古車、前オーナーがしっかり手を入れているようで、社外ホイールや社外エキゾーストに変更されています。それにしても300台も作られなかったレアな車両を自分好みに仕立ててしまうって…なかなか豪快な話です。

▲車内には最高級のコノリーレザーやウィルトン製の高級ウールカーペットが奢られ、ジャガーらしさを醸し出しています ▲車内には最高級のコノリーレザーやウィルトン製の高級ウールカーペットが奢られ、ジャガーらしさを醸し出しています

これほど文字どおり、エンジニアたちの情熱がカタチになった車も昨今、少ないと思います。まぁ、3650万円という車両価格は多くの人にとって夢のまた夢…でしょうが、新車時価格や昨今の限定車やクラシックカー相場を鑑みれば十分、お得なモデルと言えます。

■本体価格(税込):3650.0万円 ■支払総額(税込):---
■走行距離:1.5万km ■年式:1993(H5)
■車検:2015(H27)年10月 ■整備:無 ■保証:無
■地域:広島

text/古賀貴司(自動車王国)