マツダの新たなフラグシップとなる3代目「アテンザ」。月間販売計画1000台を予定していたが、販売開始後1月で約7300台の受注を達成。そんな売上超絶好調のマツダ アテンザの開発主査の梶山浩さんとチーフデザイナーの玉谷聡さんに話を伺った。

――3代目アテンザでは「人と車の一体感」を大切にされたそうですが、こだわったポイントをお教えください。

梶山 ロールをコントロールすることに気を使いましたね。ある程度ロールさせてあげることが大切なんです。

例えば、人間でもひざを曲げず棒立ちだと動きづらいです。しかし、ひざを少し曲げていると安定した姿勢で素早く動くことができます。車もそれと同じで、少しロールさせた方が、車の動きがわかるし、ドライバーの期待どおりに動いてくれます。

運転の難しい車というのは、妙にコーナーでの戻しが強かったり、妙に車が中に入っていったりする。そうならないよう、タメを作る設計にしてあります。コーナー立ち上がりにアクセルを踏んでいく際、エンジンの加速とステアの戻りに確かな一体感を味わってもらうことができると思いますよ。

――なるほど。たしかに実際に運転してみると、意図どおりに思いどおりに走ってくれると思いました。

梶山 足回り以外にも、アテンザではアクセルペダルの細かい動き、加速度なども検知するようにしてあるんですね。早く踏まれた場合は、早く走りたいわけだから積極的にシフトチェンジを行うし、じわ~と踏んだときには粘りのある加速感を味わえるようにしているんです。

さらにアクセルペダルは自然に足になじむ角度に微妙に左右でも傾けていたり、ステアリングも一番革を使用し、手になじむように加工するなど、走りと人の感覚の一体感を高めるよう注力しました。

車に乗ることにワクワクして、運転中は気持ちを爆発させ、1日の終わりに今日の楽しかった運転シーンが思い起こされる。そんな、車を中心にしたワクワクした1日を繰り返し楽しめるものを作りたいなぁと思っていました。

玉谷 デザインも同じです。デザインの初期段階から生産部門の職人たちと意思統一を行っていたので、車を買ったことで生活にハリを与えられるようなものを目指しました。

――走りの良さもさることながら、そのデザインが受け入れられたからこその人気だと思います。

玉谷 ありがとうございます。3代目アテンザでは、ことさら“骨格”を意識してデザインしました。タイヤが物をしっかり支えている、タイヤがきちんと外にあってタンクなどがその上に載っている、それが骨格であり、デザインする上でとても重要なことなんです。

アテンザでいうと、どこから見てもビシッとタイヤが踏ん張って見えるようタイヤを配置しています。そして、そのタイヤに向かって各パーツのシルエットが収束するようにデザインしました。例えば、セダンはAピラーがノーズに流れないようにキュッとタイヤに入っていくようにしました。

そして、あえて少し骨格を崩すことで、剣道の突きに入る瞬間のような“動きの準備”を表現しています。それによって車自体が前に行こうとしている雰囲気をかもし出すことができ、アテンザのパーソナリティに合ったデザインになったと思います。

――最後に読者にひとことお願いします。

梶山 現在、マツダのセールスマンたちは「車を購入いただくのではなく、マツダの志をご購入いただく」をキャッチフレーズにしています。ぜひ、マツダが目指した世界観をアテンザで体感していただけたらと思います。

現行型のマツダ アテンザは2012年11月20日に販売を開始。12月20日までに予想の7倍以上も受注し大きな反響を呼んだ

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開発主査の梶山浩さん。「2012年5月にドイツで行ったアテンザの最終チェックでは、200mほど走っただけで鳥肌が立った」という

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チーフデザイナーの玉谷聡さん。マツダならではの動物的表現とフラグシップにふさわしい大人っぽさを両立したデザインを目指したという

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Aピラーの曲線を延長していくとフロントタイヤに収束するようになっており、タイヤにきちんとボディが乗った骨格を意識したデザインがなされている

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インテリアは感覚的になじみやすく、長期間乗っても飽きがこないようにデザイン。さらに「大人の男の魅力を引き出すようにもしました」とのこと

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「タイヤ周りは車の色気を出すのに重要なところ。光の反射の仕方にもこだわり、最後の最後で全幅を10mm増やしました」と玉谷さん

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