THE!対決

PART1 走行性能対決

Report/島崎七生人 Photo/奥隅圭之
トヨタ クラウンアスリート
トヨタ クラウンアスリート 走り|THE!対決
↑クラウンのスポーツラインであるアスリート。そのスポーツ性はクラウンの上質さと見事に調和している。あくまで滑らかに、その上で切れの良さをスパイスとして投入したという印象だ
トヨタ クラウンアスリート エンジン トヨタ クラウンアスリート ドライビングポジション
日産 フーガ
日産 フーガ 走り|THE!対決
↑乗り比べるとクラウンアスリートがおとなしく感じるほど、フーガの走りはスポーツ志向。運転中もエンジン音などを積極的に聞かせてくれ、ドライバーに“その気”を味わわせてくれる
日産 フーガ エンジン 日産 フーガ ドライビングポジション

滑らかさとキレの良さの両立に成功したクラウンアスリート

観音開きドアの初代誕生から実に53年、現行型で13代目を数えるクラウンは、ニッポンの高級車の原点のような車だ。片やフーガは、事情はどうあったにせよ、セドリック&グロリアの名を捨て、現ゴーン社長による改革が行われた“新しい日産”を象徴する車種の一つ。両車をこうしてライバル企画に取り上げるのはもちろん当然、ではあるが、同じ国産車同士のライバルながら、キャラの違いがかなり鮮明なのが面白い。

今回のロケ車は、クラウンがアスリート3.5 Gパッケージ、フーガが350GT タイプS。クラウンはアスリート中のトップグレード、一方のフーガは上下に4.5LのV8と2.5Lをラインナップする、そのちょうど中間に位置づけられるグレードだった。が、前述したとおり今回の2車は、乗ってみて実感するカラーの違いは明らか。言葉で表現すると、クラウンが「洗練」、フーガが「ダイナミズム」といったところか。

まずクラウン。アスリートは、1999年~の先々代登場時にクラウンの新ラインとして登場したシリーズ。初代登場時に「メルセデス・ベンツのAMGのようだ!」の印象をもったものだが、その狙いどころは、現在もブレはないようだ。

とくにフーガと比べると、高性能車なのに一切、神経を逆撫でされないのは美点。とくに音振(=嫌な騒音や振動)が徹底的にツブされているのは見事というほかない。ガラスから入ってきそうな透過音さえないし、エンジン音も高回転域で一定の音量で聞こえるようにしている程度。

また、あくまでなめらかな乗り味なのも特徴。アスリートはもともと、キレのいい運動性能と乗り味を高次元で両立させてきたモデルだが、最新型でのそのまとめ具合は相当に高尚だ。人によっては刺激がなさすぎて物足りなく感じるかもしれないが、そこが良さ、だ。もちろん動力性能に不満はなく、315ps/38.4kg-mの性能をもつ2GR-FSE型3.5LのV6エンジンは、どこからでも力強く上質なパワー感を堪能させてくれる。6速ATの制御も文句のつけようがない。

もはやスポーツカー?積極的にアクセルを踏みたくなるフーガ

一方でフーガは「これはスポーツカーか!?」と思わせられる走りぷりが魅力だ。とにかく速く、レスポンスが良く、すべてがスパッ!と明快なのが特徴。7500rpmからレッドゾーンが始まる3.5LのV6、VQ35HRエンジンも、313ps/36.5kg-mと、数値ではわずかにアスリートのそれを優位に立たせているものの、とにかく踏んだ瞬間から豪快でパワフル。間髪入れずに加速してくれる。

エンジン回転が上がるにつれ室内に届くサウンドも、自然に聞こえる音を消さずに積極的に聞かせている印象。もちろん動力性能での不満はまったくなく、高速走行も日本の公道では余力を残しすぎるくらいだ。

ただし乗り味もクラウンと比べるとアスリートがロイヤルに思えるほど。19インチタイヤを装着(アスリートは18インチ、メイクは刻印上ともにBSポテンザRE050A)し、履きこなしてはいるが、低速時にややハードさを実感するのは事実。そのかわりハンドリング、車の挙動はスッ!と素直で動きに無駄がなく、年齢を問わず車好き、スポーツセダン好きなら、かなり理想的な車に仕上げられている。
今回の燃費計測結果
  平均燃費 参考燃費
(一般道)
参考燃費
(高速道路)
トヨタ クラウンアスリート 13.4km/L 9.1km/L 14.0km/L
日産 フーガ 10.8km/L 7.5km/L 12.0km/L
燃費計測ルートは・・・
東京・青山→神奈川・大井松田(ここまで一般道)→東名・静岡IC→東名・海老名SA
総走行距離 310.5km
今回のまとめ
スポーティモデルの両車だが、そのベクトルはかなり異なるためどちらが優位という判断は難しい。積極的なスポーツ性を求めたいのか、それともあくまで最優先したいのは上質さなのか。自分の志向をよく考えてみると、走りに対する選択はおのずと決まってくる。
今回のテスト車両
トヨタ クラウンアスリート フロント|THE!対決
トヨタ クラウンアスリート リア|THE!対決
トヨタ クラウンアスリート インパネ|THE!対決
トヨタ クラウンアスリート
テスト車両 3.5アスリート
Gパッケージ(2WD)
567.0万円
駆動方式 2WD(FR)
トランスミッション 6AT
全長×全幅×全高(mm) 4870×1795×1470
ホイールベース(mm) 2850
車両重量(kg) 1660
最小回転半径(m) 5.2
乗車定員(人) 5
エンジン種類 V6DOHC
総排気量(cc) 3456
最高出力
[kW(ps)/rpm]
232(315)/6400
最大トルク
[N・m(kg-m)/rpm]
377(38.4)/3500
使用燃料 無鉛プレミアム
燃料タンク容量 71L
10・15モード燃費
(km/L)
10.0
タイヤサイズ 225/45R18
日産 フーガ フロント|THE!対決
日産 フーガ リア|THE!対決
日産 フーガ インパネ|THE!対決
日産 フーガ
テスト車両 350GTタイプS(2WD)
468.3万円
駆動方式 2WD(FR)
トランスミッション 5AT
全長×全幅×全高(mm) 4935×1805×1510
ホイールベース(mm) 2900
車両重量(kg) 1710
最小回転半径(m) 5.6
乗車定員(人) 5
エンジン種類 V6DOHC
総排気量(cc) 3498
最高出力[kW
(ps)/rpm]
230(313)/6800
最大トルク[N・m
(kg-m)/rpm]
358(36.5)/4800
使用燃料 無鉛プレミアム
燃料タンク容量 80L
10・15モード燃費
(km/L)
9.3
タイヤサイズ 245/40R19