THE!対決

PART1 走行性能が優れているのはどっち?

Report/島崎七生人 Photo/奥隅圭之
トヨタ ヴェルファイア
トヨタ ヴェルファイア 走り|THE!対決
↑洗練されたドライバビリティが印象的。乗り味はしなやかで、大柄なミニバンにありがちなユルさはない。コーナリング中の安定感もかなりのもので、安心して走らせていられる
トヨタ ヴェルファイア ドライビングポジション|THE!対決 トヨタ ヴェルファイア 2列目シート|THE!対決 トヨタ ヴェルファイア 3列目シート|THE!対決
日産 エルグランド
日産 エルグランド 走り|THE!対決
↑設計年次の差はいかんともしがたい。良く言えば鷹揚な大型ミニバンらしい振る舞いは、最新のベルファイアと比べてしまうと大味に感じてしまう。乗り味もザバッとした印象
日産 エルグランド ドライビングポジション|THE!対決 日産 エルグランド 2列目シート|THE!対決 日産 エルグランド 3列目シート|THE!対決

最新クラウンを思わせるヴェルファイアのマイルドな乗り心地

今回の試乗車は、ヴェルファイアは3.5Z Gエディション・7人乗り(FF)。車両本体価格416.0万円で、オプション117.075万円を加え533.075万円。一方のエルグランドは、350ハイウェイスターブラックレザーエディション(4WD)。車両本体価格は386.4万円でこれにラインオプション102.69万円とディーラーオプション13.02万円を加え、計502.11万円。

撮影車の都合で偶然だったかどうか、アルファードではなく今回の車、ヴェルファイアは、顔まわりからして“打倒エルグランド”の意思が一目瞭然。ライバル車に真っ向ライバル意識を燃やすパターンのトヨタ車(ストリームに牙を剥いたウイッシュは好例)の典型だ。

もう一方のエルグランドは、大陸横断鉄道の先頭車両をイメージしてウケた初代のイメージを洗練させたモデル。現行型は登場後丸6年(2002年デビュー)を過ぎていて、そろそろ次期モデルが気がかり・・・そんなタイミングのモデルだ。

さて走りだが、最新型だけあり、ヴェルファイアの洗練されたドライバビリティが印象的だった。とにかく滑らかな乗り味なのは、走り出してタイヤが1回転すればわかるほど。とくに開発時から“音と振動”の撲滅に力が入っているため「ワサワサ」 「ゴー」 「ガー」といった騒音や振動が伝わらない。まるで最新のクラウンに乗っているかのようなイメージだ。

もちろん走り出しても、乗り味はあくまでしなやか。かといって大柄なミニバンにありがちなユルさはない。コーナーリング中の安定感もかなりのもので、安心して走らせていられる。280ps/35.1kg-mのを発生する3.5LのV6エンジンもパワフルで軽快。6速ATとの組み合わせもグッドで、まるで無段変速機のようだ。高速までスムーズなのは言うまでもなく、効率も悪くなさそうなイメージも、燃費テスト(別項参照)のデータが物語っている。

デビューから6年、設計年次の古さをやや感じるエルグランド

一方のエルグランドだが、今の時点で最新のヴェルファイアと対決させるには、少々分が悪い。

せっかくのFR(後輪駆動車)ベースの貴重な存在ながら(試乗車は4WD)、設計年次の差はいかんともしがたい・・・といった感じ。特に走りの印象で、それが顕著だった。良く言えば鷹揚な大型ミニバンらしい振るまいは、最新のヴェルファイアと比べてしまうと大味に思えてしまう。乗り味はザバッとした印象で揺れかたも物理の法則どおりだし、ロードノイズ、路面からのショックなども実感する。240ps/36.0kg-mの性能を発揮するV6エンジンは、回すほどにパワフルさが体感でき、また余裕もあり、モードを切り替えればさらにパンチのある加速を味わえる。

が、大胆であって繊細さには欠けるため、アクセルワークもどうしてもラフになりがち。燃費計測もそのあたりが影響したのだろう。

ではフル乗車時の印象はどうなのか?今回、この連載企画始まって以来の“楽チンなフル乗車試乗”になったのは、国産フルサイズのこのクラスのミニバンだったからこそ。フル乗車にはやはり“ゆとり”が大切との、至極当たり前の事実を全員で身をもって実感した次第。

その上でさらにルームミラーで同乗者の様子を見て、リポーターがつくづく「羨ましい」と思ったのがヴェルファイアだった。2列目がエグゼクティブキャプテンシート仕様だったため「まさに“王様感”。新幹線のグリーン席みたい。床から座面までの高さもよい」「尻割れ、背割れ、ヘッドレストもオフセットながら、3列目中央は意外とイケる」「6名乗車なら、とても快適」と居住性は総じて好評。乗り心地も3列目でも気にならないという。意見としては、「3列目左右のトリム側とシートの間に空間があるため、アームレストがほしい」との声もあった。

エルグランドは、発進前から「2列目のシートベルトのキャッチが自立式でないのはNG」「天井も低い」といった指摘も。3列目は「座面が短く背もたれも低いが、クッションの厚みはあっていい」と。乗り心地は、ヴェルファイアを試したあとだったこともあり、2列目、3列目とも路面の段差を通過した際に「オォ!」の悲痛な声があがった。
今回の燃費計測結果
  平均燃費 参考燃費
(一般道)
参考燃費
(高速道路)
トヨタ ヴェルファイア 11.8km/L 6.1km/L 9.9km/L
日産 エルグランド 6.6km/L 7.0km/L 8.0km/L
※エルグランドの参考燃費はメモリ式の燃費計のため、目視による参考数値です
燃費計測ルートは・・・
東京・青山→神奈川・大井松田(ここまで一般道)→東名・静岡IC→東名・海老名SA
総走行距離 310.5km
今回のまとめ
両車の設計年次の差が大きいとはいえ、騒音、振動まで配慮し、ミニバンながらクラウンに乗っているかのような快適な乗り味のヴェルファイアの勝ちとする。
今回のテスト車両
トヨタ ヴェルファイア フロント|THE!対決
トヨタ ヴェルファイア リア|THE!対決
トヨタ ヴェルファイア インパネ|THE!対決
トヨタ ヴェルファイア
テスト車両 3.5Z Gエディション
416.0万円
駆動方式 2WD(FF)
トランスミッション 6AT
全長×全幅×全高(mm) 4865×1840×1900
ホイールベース(mm) 2950
車両重量(kg) 2000
最小回転半径(m) 5.9
乗車定員(人) 7
エンジン種類 V6DOHC
総排気量(cc) 3456
最高出力
[kW(ps)/rpm]
206(280)/6200
最大トルク
[N・m(kg-m)/rpm]
344(35.1)/4700
使用燃料 無鉛プレミアム
燃料タンク容量 65L
10・15モード燃費
(km/L)
9.5
実用燃費 (km/L)
e燃費提供
8.2
タイヤサイズ 235/50R18
※実用燃費のデータはe燃費の提供です
日産 エルグランド フロント|THE!対決
日産 エルグランド リア|THE!対決
日産 エルグランド インパネ|THE!対決
日産 エルグランド
テスト車両 350ハイウェイスター
ブラックレザーエディション
386.4万円
駆動方式 4WD
トランスミッション 5AT
全長×全幅×全高(mm) 4835×1815×1910
ホイールベース(mm) 2950
車両重量(kg) 2160
最小回転半径(m) 5.7
乗車定員(人) 8
エンジン種類 V6DOHC
総排気量(cc) 3498
最高出力
[kW(ps)/rpm]
177(240)/6000
最大トルク
[N・m(kg-m)/rpm]
353(36.0)/3200
使用燃料 無鉛プレミアム
燃料タンク容量 76L
10・15モード燃費
(km/L)
8.0
実用燃費 (km/L)
e燃費提供
6.5
タイヤサイズ 215/60R17
※実用燃費のデータはe燃費の提供です