▲100年以上前、紡織機の原動力として動いていた蒸気機関。日本の産業近代化においても重要な役割を担った ▲100年以上前、紡織機の原動力として動いていた蒸気機関。日本の産業近代化においても重要な役割を担った

外国人向けリーフレットや英語での説明がある

ぴえいる(以下、ぴ) Aくん、確かに私は48歳独身のおっさんだが、こう見えても外国人には意外とモテるんだよ
編集部員A(以下、A) そう、外国人にモテると言えば「トヨタ産業技術記念館」ですよ。7月1日からトヨタテクノミュージアム 産業技術記念館から名称が変わったんですけど
 いや、私も外国人にモテ……
A トリップアドバイザーという旅行クチコミサイトの「外国人に人気の日本の観光スポット2014」で28位に入ったんです。一見、微妙な順位ですけど、それでも浅草寺が25位で、29位は京都錦市場、30位が心斎橋ですからね。並み居る観光スポットの中から、なぜ「トヨタ産業技術記念館」が外国人に人気なのか、さっそく探りに行きましょう!
 まるで某家電CMの西島俊彦ばりの強引さじゃないか! わからない人は検索してね!って、ちょっと、Aくん待って!

「トヨタ産業技術記念館」とは「研究と創造の精神」と「モノづくり」の大切さを、本物の機械の展示と多彩な実演を通して伝えている博物館。どうしてここが「外国人に人気の日本の観光スポット2014」で28位に入るのか。まずは同館を実際に体験してみることにした。

 お、入り口の案内リーフレットはよく見ると日本語以外に英語、中国語、韓国語、タイ語まで揃っているぞ
A 中国語は大陸向けと台湾向けに分かれていますね。団体客で多いのはアジア圏の方々だそうです。ただ個人で来館する人までは把握していないので、正確な人数や出身国まではわからないようです

▲リーフレットは日本語、英語、中国語、韓国語、タイ語、それに子供用まで用意されている ▲リーフレットは日本語、英語、中国語、韓国語、タイ語、それに子供用まで用意されている

 ではリーフレットに沿って、まず繊維機械館から回ってみることにしよう。ほぉ、まずは綿から糸をどうやってくつるのか、糸紡ぎの道具を使って説明してくれるようだ。あれ、急に英語での説明になったぞ
A どうやらボクたち以外の人は、東南アジア辺りの人々のようですね
 この手の施設は、ただ道具や機械が置いてあって、そばに説明文が書かれているだけだったりするが、こうやって実演を交えながら説明してくれるとわかりやすいね
A しかもトヨタだというのに、最初の展示品が、昔はどこにでもあったような糸紡ぎの道具ですからね。普通、豊田佐吉の発明品を見せたくなりそうなものですが

▲糸紡ぎの実演。説明もわかりやすく、みんな、とても熱心に解説を聞いていた ▲糸紡ぎの実演。説明もわかりやすく、みんな、とても熱心に解説を聞いていた

 ……で、日本の繊維産業の黎明期に活躍したいくつかの機械を経て、ようやく豊田佐吉が23歳の時に発明した豊田式木製人力織機にたどり付くわけだ。……なるほど、実演を交えながら説明を聞くと、片手と片足で簡単に操作できる理由がよくわかるな
A まるで、からくり人形みたいですね
 これを23歳の時に作ったんだからすごいものだ

▲1890(明治23)年、豊田佐吉が23歳の時に発明した「豊田式木製人力織機」。このようにスタッフが実演しながら、どんなところに工夫があったのか、日本語や英語で解説してくれる ▲1890(明治23)年、豊田佐吉が23歳の時に発明した「豊田式木製人力織機」。このようにスタッフが実演しながら、どんなところに工夫があったのか、日本語や英語で解説してくれる

A しかも、あそこには57歳で作ったG型自動織機がありますよ! 豊田式木製人力織機の改良の末にたどり付いた、世界に誇る織機が!
 57歳まで日々改良を続けていたなんて、48歳の私などまだまだ頑張らないといけないなぁ

▲G型自動織機の組立ライン。チェーンコンベアを用いて、流れ作業で組み付けていく様子がわかる ▲G型自動織機の組立ライン。チェーンコンベアを用いて、流れ作業で組み付けていく様子がわかる

子供も大人も本当に楽しめる

糸紡ぎ器から学んでいったこともあり、不良品を作らないようにするトヨタ生産方式の考え方などが自然と理解できた。いかに豊田佐吉の創意工夫がすごいのか、当時から現在につながるトヨタのモノづくりの礎を垣間見ることができた。

最後にコンピュータ制御の最新式織機を見て、いよいよ自動車館へと進む。

▲これが最新の織機。ものすごいスピードと音…。それにしても外国人観光客の方が本当に多い印象 ▲これが最新の織機。ものすごいスピードと音…。それにしても外国人観光客の方が本当に多い印象

A ぴえいるさん、自動車館の前に期間限定(9月15日まで)の豊田喜一郎生誕120周年特別展「喜一郎の夢」もありますよ
 ほぉ! 初めて作ったトヨダAA型も展示されているじゃないかっ!

▲9月15日まではトヨタ自動車の創業者・豊田喜一郎に関する特別展示も行われている ▲9月15日まではトヨタ自動車の創業者・豊田喜一郎に関する特別展示も行われている

2人は「喜一郎の夢」を堪能し、自動車館で鋳造・鍛造・切削加工の実演やプレス、組み立て、塗装の様子も実物大で見て回った。

▲自動車館には歴代のトヨタの名車が並ぶ……というのはごく一部のスペースであって、トヨタ産業技術記念館の見どころや聞きどころ、体験どころがたっぷりある ▲自動車館には歴代のトヨタの名車が並ぶ……というのはごく一部のスペースであって、トヨタ産業技術記念館の見どころや聞きどころ、体験どころがたっぷりある
▲1960年に建てられた元町工場で活躍した600tのプレス機 ▲1960年に建てられた元町工場で活躍した600tのプレス機
▲こちらは組み立て作業の実演 ▲こちらは組み立て作業の実演
▲こっちは塗装装置の実演 ▲こっちは塗装装置の実演

 いやぁ、実に面白い。途中ですっかりここに来た意図を忘れ、単純に楽しんでしまったよ。実演を交えながら外国人向けには英語で説明してくれるから、確かに彼らに人気のスポットになってもおかしくはないね
A あ、あそこに外国の方が2人いらっしゃいますから、ちょっとインタビューしてみましょうよ
 え? いや私は外国人にモテるとはいったが、英語ができるとは言ってないぞ。だいたい向こうは「シャチョウサン、カッコイイ」とカタコトで話してくれるから……
A ……フィリピンパブでモテたって話ですか。チッ…、とにかくほら、聞いてください!
 あ! えぇ~っと……ホワイ アー ユー ヒアー?
外国人観光客 ☆▲×¥#……!
 ダメだよAくん、さっぱりわからん
A ったく、使えないオッサン。ちょっとどいてください。………どうやら彼らはオランダから来て、大日本印刷や富士フイルム、そしてトヨタとか、日本のテクノロジーにとっても興味があってここに来たそうですよ。そういうツアーもあるみたいですね
 なるほど、日本の技術力に関心が高い外国人がやっぱり多いんだな。これぞジャパンクオリティ、クール ジャパン!ってことか。って、あれ? Aくん英語できるの?(やっぱりわからん。わからんが、スモーファイターという単語だけは聞き取れたぞ。そうか、ちょうど大相撲は名古屋場所を開催中……ってことは……)オー、アイラブハクホウ、ツー!
A ……ちょっと黙っててくださいよ! 彼らは大相撲を見たいんだけど、どうやって行けばいいかを聞いているだけですよ!

この後しばらくAと外国人観光客との会話が続く中、ぴえいるは「今度からフィリピンパブに行ったら英語を教えてもらうようにしよう」と心に誓うのであった。

▲繊維機械や車に関連したオリジナルの遊具を楽しむコーナー(テクノランド)もある。写真は床に映写されたマークをきれいに走って追うというもの。本来ちびっ子が楽しむものなのに、大人げなく本気で走ったぴえいる(48歳)だった…… ▲繊維機械や車に関連したオリジナルの遊具を楽しむコーナー(テクノランド)もある。写真は床に映写されたマークをきれいに走って追うというもの。本来ちびっ子が楽しむものなのに、大人げなく本気で走ったぴえいる(48歳)だった……
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