【フェルディナント・ヤマグチ×編集長 時事放談】新しい生活様式と自動車について(後編)
2021/01/16
大変ご無沙汰しております。フェルディナント・ヤマグチでございます。
なんかムダに間が空いてしまいましたが、連載が中止になった訳ではありません。クリスマスだ正月だと遊び呆けているうちに、当欄の執筆をすっかり失念しておったのです。大変申し訳ございません。
スタートから滑ってしまいましたが、本年も当欄をどうぞよろしくおねがいします。
せっかくなので聞いておきたい
イマドキのワカモノはどんな車が欲しい?
だらだらと話してきましたが、新しい生活様式というテーマに対してはある程度いきつきましたし、せっかく学生さんのいる場ですから、彼らの自動車事情を聞いて閉めましょう。
そうですね。ありきたりですが、どんな車が欲しいか聞きましょうか。
ちなみに以前、僕が彼らのゼミのディスカッションに参加した際、車選びで大事にすることとして「運転をしやすいかどうか」が挙げられていて、みんなそれについて熱心に議論していたのが印象的でした。運転をしやすい車がいい、安心できる車がいい、と。
なるほど。運転しやすいかどうか、というのは具体的にどのような事でしょうか? 学生諸君、その辺りを具体的に教えてください。
はい! 僕にとっては、ハンドルが軽いかどうかなど、操作のしやすさが運転のしやすさですね。もっと具体的に言うと「止めやすさ」で、止めやすい車=運転のしやすい車で、そんな車が欲しいです。
以前、家の車を駐車でぶつけてしまったことがあるのですが、「もう少し曲がっているはずだったのに……」と、自分のイメージと実際の動きが合わないことが原因でした。そんなことがなければいいなと思います。
つまり、重要なのは「パッシブセーフティ」ではなく、「アクティブセーフティ」ということですね。『運動神経がいい人はケガをしない』というのと一緒で、車がちゃんと動く=ぶつけにくい、安全である、と。
その例えだと、おじいさんがつえを突いて、膝や肘にプロテクターを着ける、というのが「パッシブセーフティ」ですね。
たしかに僕は、もしものときのプロテクターより、運動ができる身体かどうか、の方が重要で、スポーツ選手のように運動神経の良い車が欲しいです。
では、Dくんはどうでしょう? どんな車が欲しいですか。
僕は自動運転の技術にかけています!! 完全自動運転の車が欲しいですし、それが自分の予算に見合ったら絶対に買います。
完全自動運転ですか……。
座ってどこかへ連れていってくれるならその方がいいと。自分でハンドルを切るところにドライブの楽しみを見出すという感覚はありませんか?
う~ん。目的地に行けたら、それでいいという感じです。空いている時間で何かできるというほうが魅力的ですし。
運転しながら助手席の彼女をどう満足させられるか、いかに余裕をもって戯れられるか、が我々の腕の見せどころというか、スキルだったのですが……おじさんには衝撃的です……。
ちなみに僕は、今でも運転することがうれしくてしょうがないんですよ! こういう仕事をしていると自動運転の車にも乗りますが、正直、舌打ちをしたくなる感覚です。
僕なんか「勝手に止まる」と分かっていても怖いので、余計に気を使っちゃいますよ(笑)。
分かります! 例えば、日産のプロパイロット。日産が自動運転と称している高速道路で使える追従機能がありますが、あれで走ると怖くてしょうがありません。自分が普段切るステアリングのタイミングと違うんですから。
でも、Dくんのような感性はこれからの自動車会社的には歓迎すべきことなのでしょうね。これは若い子たち特有の価値観なのでしょうか。
他の方はどうでしょう?
私は2人とちょっと違いますね。デザインが良い車が良いです。燃費が悪くても、乗り心地が悪くても、自分のスタイルに合った車に乗っていたいですし、人に似合うと言われたいです。服を選ぶときの感覚と似ているかもしれません。
お、いいですね! じゃあ今、「好きな車を何でも1台プレゼントする」と言われたら、どんな車を選びますか。具体的な車名でなくても、スポーツカーとか、小さい車とか、そんな表現で構いません。
う~ん……。大きくて、つるっとした車……あと、速そうな車がいいです。ただ、車高が低いのはあまり好きではありません。
それはきっと、クーペのSUVですね。
クーペタイプのSUV、最近たくさん出ていますが、正直僕は「誰がこういう車を好きなんだろう?」と思っていました。みんな、ちゃんと好きなのですね。びっくり……。
自動車会社はちゃんとディマンドに併せた車作りをしているということですね……。「なぜこの車がこんなに売れるんだろう」と私たちが思っていても、それは世の中で欲しがられているものである、と。むしろ我々みたいな人間は、本当にノイジー・マイノリティーなのでしょう……。
そうですね……。全体から見れば端っこにいるであろう我々が騒いでいることが、何だか愚かなことに思えてきました……。
うーむ……。気を取り直して……もう一人の女性はどうですか。
私もBと同じで、デザインがかわいい車がいいです。その中でも、シンプルな方がいいですね。室内を自分好みにカスタマイズしたいと思っています。同じ車でも、少し自分の色を出したいです。
エクステリアではなく、インテリアをカスタマイズしたいのですね。
はい! シートカバーなど、気分によって変えやすい部分を重視したいです。外見(エクステリア)のカスタマイズも興味はありますが、気軽に変えられないのがちょっと……。
新車で、「カラーを選べる! 組み合わせは○通り!」みたいなセールスポイントはよく聞きますが、今の話だと『気分で変えられる』というところがキーですよね。Cさんは、どのぐらいのペースで変えるイメージをもっていますか?
部屋の模様替え程度のペースです。
分かりやすい。それ、やらない人は全くやらないですからね。
たしかに、そうですね。実は私、実家暮らしで、今、自分の部屋と呼べる空間がないので、車を自分の部屋みたいに考えて理想を描いているのかもしれないです。
よく分かります! 僕も実家暮らしが長かったので、初めて車を買ったとき「一国一城の主」の気分でした。ここは自分が好き勝手できる空間、誰も入ってこない、侵されない空間というのに価値をとても感じていましたよ。
あ、これで学生全員に答えてもらいましたね。
とにもかくにも、車に対して少しでも「理想」や「考え」があるのはうれしいことですね。もう全くなにも出てこなかったら、それこそありきたりですが『若者のクルマ離れ』と閉めることしかできませんでした。
恐らくですが、昔のようにヒエラルキーありきの選び方ではなくなっているので、車から『離れている』というより、選び方が『多様化』しているんじゃないかなと思いますね。
一方で、先に話した若者たちの金銭面のことを踏まえると、効率的な移動や、そもそも移動の必要がないオンラインでのコミュニケーションが発達した現代で『車が欲しいと思われること』のハードルは上がっている気がします。
なんだかそれらしい閉めになりましたね(笑)。皆さん、ありがとうございました! カーセンサーのためにも、車は買ってあげてください!
コラムニスト
フェルディナント・ヤマグチ
カタギのリーマン稼業の傍ら、コラムニストとしてしめやかに執筆活動中。「日経ビジネス電子版」、「ベストカー」など連載多数。著書多数。車歴の9割がドイツ車。
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