エコカー▲自動車・カーライフに関する調査研究機関「リクルート自動車総研」の膨大な統計データを基に、ユーザーの購買行動や世の傾向を勝手に予想したり解説したりするコラム

移動以外の使い道も電化シフト推進のカギに

先頃、中国が2035年をめどにガソリン車の販売をやめ、すべて新エネルギー車にすると、各種メディアで報じられた。

ニュアンスはそれぞれ異なるものの、すでに環境政策に前向きなカリフォルニア州をはじめヨーロッパでも、こうした方針を打ち出している国や地域が多い。

その流れに、世界最大級の自動車マーケットである中国もかじを切ることになると、ガソリンや軽油を燃料とする内燃機関車が新車販売店に並ばない世界が、いよいよ現実的になってくる。

自動車メーカーの動きも活発だ。特に欧州では、新型車のラインナップに次々と電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)を投入しているメーカーが多い。

日本でもトヨタ RAV4 PHVがヒットしている他、日産は2021年にEV専用となる新型SUVのアリアの販売を控えている。

コンパクトEVのHonda eを発売したばかりのホンダも、SUVタイプのEVやPHVの投入に向けて動いているようだ。
 

リクルート自動車総研グラフ

こうした環境にやさしい車に対するユーザー側の関心も、グラフ①にあるとおり徐々に高まってきている。

そこで気になるのは、どんなスピード感で伝統的な内燃機関から新エネルギー車へシフトしていくかだ。

そのカギとなるのが、航続距離をはじめユーザーの心をつかむ性能を車が備えているかどうか。そして、利便性を大きく左右するインフラ面も重要な要素となってくるだろう。

2009年からスタートした住宅用太陽光発電の余剰電力の固定価格買取制度(FIT)だが、10年間の適用期間を満了していくケースがこの先順次増えていく。

そうなると、EVやPHVの大容量バッテリーを活用し、電気代の節約はもちろん災害時の電源確保にもつながるV2H(ビークル・トゥ・ホーム)やHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)の導入を検討する人が増える可能性が高くなるはずだ。

つまり、移動手段以外に車の使い道が開かれることで、新エネルギー車へのシフトに追い風が吹くかもしれない。

現状、中古車市場では伝統的なガソリンエンジン車の流通量が圧倒的に多い。しかし、ハイブリッド車を中心にPHVやEVの中古車もここへきて徐々に増えてきているのも事実だ(グラフ②)。

世界規模で展開することが予想される車の電化シフト。一方で、勢いづくグローバリゼーションと正比例するように、ローカルなものを救おうとするカウンターな動きも先鋭化するのが、現状の見立てだ。

このまま世界の自動車が電動化の道を突き進めば、伝統的な内燃機関は淘汰されるに違いない。

だが、車もひとつの文化であり産業史における重要なチャプターであると考えると、グローバリゼーション下に置かれたローカルフードや言語、風俗、習慣などと同様、いくつかの内燃機関車は歴史の貴重な証しとして保護され、まさにクラシックカーや骨董品のように、価値が上がる可能性もなきにしもあらずだ。

日本は世界でも有数の自動車生産国。そうした視点をもてば、今でさえ宝探し感たっぷりな中古車選びが、より一層楽しくなってこないだろうか。
 

孫の代には国宝級!? 今、予算100万円で買える注目の内燃機関車3選

1:マツダ RX-8(初代)

マツダ RX-8 ▲新エネルギー車へシフトしようがしまいが、現状最後の量産ロータリースポーツ車であり、唯一のサイドポート方式ロータリーエンジン搭載車という点で、すでにお宝車の価値あり!
 

2:スバル インプレッサスポーツ(初代)

スバル インプレッサスポーツ ▲現状はポルシェとスバルしか製造していない水平対向エンジン。それだけでも内燃機関としての価値は高いが、そんな希少性の高いエンジンを大衆車に搭載するのはスバルだけだ
 

3:トヨタ クラウンマジェスタ(4代目)

トヨタ クラウンマジェスタ ▲2004年7月~2009年2月に生産されたシリーズ4代目。重厚感ある走りを生み出す4.3Lの大排気量V8エンジンは、電化シフトした未来では化石的な価値をもつかもしれない
 
文/編集部、写真/photoAC、マツダ、スバル、トヨタ