CITROEN BERLINGO ▲レジャーアクティビティビークルというキャラクターを上手く活用。同車の持つ魅力をロケを通じてプレゼンテーションする内容は見ていて楽しいし、頭の中にその魅力がスッと入ってくる秀作だった

コロナ禍以降にみるオンライン新車発表会

ゆったりとした歩みなのかもしれないが、新型車の発表や販売好調のニュースなども少しずつ増えてきた自動車業界。コロナ禍以前に戻ることはないと発想を変えて前に進んでいく必要があるのは言わずもがなである。

その中で大きく変わったのが自動車メーカーを中心に行われる報道発表会のスタイルだ。これまでも会社の規模や方針、コストに見合ったPR効果など多岐にわたってインパクトのある発表会が数多く開催されてきた。

マスコミは会場に招待され、社長や開発責任者などの話を聞く。もちろんその場には実車が展示され、触れて確認することもできた。また大手新聞社やテレビなどはいわゆる「囲み(ぶら下がり)取材」を行い、トップからの情報等をどこよりも引き出そうとする。

しかし、コロナ禍以降は当然のことながらその流れはパタリと止まる。そして一気に増えたのが「オンライン」による発表会というスタイルだ。

ライブ中継もあるが、多くの場合は事前に撮影した映像を流し、資料等もウェブサイトからダウンロードする。質疑応答はライブのときは可能だが収録の場合は質問だけ送っておき、後日返答が届くといった形である。

ニューノーマルの時代と呼ばれる昨今だが、筆者的にはオンラインによるメリットはそれなりに感じている。

まず家から出なくて良いことは移動時間の大幅な削減に繋がる。この原稿を書いている前日には1日に3回も記者発表会が行われたが、3ヵ所を電車で移動するだけでも正直出費は増えるし、何よりもスケジューリングが難しい。

しかし、ZOOMやSkype等を使ったオンライン発表会であれば、画面の切り替えだけで数秒後には次のイベントに移動できる。自動車メーカーにとっても会場代などのコストを抑えられるので、その分、凝った映像を作れるといったメリットも大きい。

とあるメーカーの広報担当者に話を聞くと「現状ではオンラインのデメリットはそう感じない」と言う。

「発表会は広報よりもマーケティング部署がドカンと打ち上げ花火を上げたい場所でもあり、その点ではマーケのほうがストレスは溜まっているのでは」とも言う。

では実際にデメリットがないのかと言えば、そんなことはなく、イベントに参加する関係者とのコミュニケーションロスが大きい。それぞれが持つ情報をキャッチボールできないことは独りよがりに陥りやすく、正確な判断力も低下する。

グローバルでのモーターショーも中止・延期されている中、日本においては来年の東京モーターショー前のTAS(東京オートサロン)が注目されている。タイミング良くTASはリアルとバーチャルを併用する〝ハイブリッド〟なイベントになるという情報が入ってきた。

しかし、実際これがどのようなスタイルになるのかは予想もつかない。バーチャルは単なるライブ配信なのか、それともVR(仮想現実)のようなものを活用するかも見えていないが、世界に先駆けた提案を期待せずにはいられない。
 

CITROEN BERLINGO ▲2019年の10月と11月の2回にわたってオンラインで先行発売したところ、2回ともわずか5時間半で締め切られた人気車。現在はカタログモデルの販売が始まっている。レジャーアクティビティビークルという名のとおり、アウトドアに相応しい1台
文/高山正寛、写真/グループPSAジャパン

※カーセンサーEDGE 2020年12月号(2020年10月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています