スチャダラパーBoseが80~90年代ブームを語る。「ワンダーシビックは車界の阿久悠?」
2016/08/05
ファッションはアメカジなのに車だけ新しいとチグハグになる?
日本のヒップホップシーン最前線でフレッシュな名曲を作り続けているスチャダラパーのMC、Boseが中古車情報誌『カーセンサー』にてお届けする人気連載「Bosensor」。カーセンサー本誌で収録しきれなかったDEEPでUNDERGROUNDな話をお届けっ!!
今回はボーダレスにお邪魔した記事(関連リンク参照)の後編です。
編集部ゆきだるま(以下、ゆきだるま):Boseさん、前回に引き続き今回も1980~90年代のシビックのお話ですね。
Bose:この時代のホンダには勢いがあったし、車好きの若者たちの方を向いたモデルがたくさんあったよね。この場合の“車好き”というのはいわゆる走り屋以外も含んでいる。ひとつのカルチャーだったんじゃないかな。
ゆきだるま:ワンダーシビックの実車って初めて見ましたが、当時を知らない私が見てもカッコいいと感じました。
Bose:でしょう? しかも現在一部で湧き起こっている80'sブーム、90'sブームはノスタルジックな思いだけじゃないのがおもしろいんだよね。当時を知らない世代が「自分たちの感性に合うのはこれだ!」という感覚で選んでいる。これって古着やビンテージ家具を選ぶのと同じような感覚だと思うんだ。新しくて手頃な値段で手に入るものもあるけれど、どうもしっくりこない。自分の持ち物の中に入り込むとチグハグになる。
大貫社長:うちのお店に来てくださるのはこの時代を知っているお客様が多いですが、もちろん若いお客様も大勢います。彼らはBoseさんの言うように「自分はコレがいい」という感性で選んでいますね。
Bose:だよね。それでいいんだよ。懐かしいものではなく自分たちの感覚にハマる最新のものとして選ぶ。その方が楽しめるからね。
ゆきだるま:編集部の先輩たちはこの時代の車を見ると「当時はこうだった」など、いろんな話をするんです。そういう知識も持った方がいいのかなって思うこともあるんですよね。そうなるとだんだん「昔から知ってる」方がいいのかと感じたり……。
Bose:知識を持つのはいいことだけど、そこに縛られる必要はないんじゃないかな。例えばビンテージジーンズだって「昔から持ってる」「前から知ってる」という雰囲気をわざわざ出して履いたりしないじゃん。それと同じでいいんだよ。肩に力を入れる必要はない。
大貫社長:この時代の車に乗ると同じ時代のいろいろなものに興味が向いたりするんですよね。私はもともとヒップホップが好きで若いときからスチャダラパーも聴いていました。
Bose:そうなんだ! 嬉しいなあ。
大貫社長:今でもいろいろな音楽を聴きますが、この時代の車に乗っていると不思議とオールドスクールなヒップホップ、例えば映画『NEW JACK CITY』のサントラなんかがとても心地よかったりします。さらに言うと横浜銀蠅とかが最高にハマるんです。
Bose:わかる! それって時代の空気なんだよね。僕らは1988年にスチャダラパーを結成しているけれど、古い車で結成当時の音楽を聴くとすごく気持ちいい。音が車に合うんだよね。あとは歌謡曲。僕のスマホには「ザ・ベストテン」フォルダが作ってあって300曲くらい入っている。いくらヒップホップとか言ってても、僕らはあの頃の音楽をたくさん聴いていたし音楽的な影響も多分に受けているからね。数多くのヒット曲の作詞を手がけた阿久悠からの影響。ここからは逃れられないよ。そう考えるとシビックも阿久悠のような存在なのかもしれない。
パワステ、パワーウインドウ、エアコンも邪魔!?
Bose:社長は90年代からヒップホップ好きだったってことは、車もL.A.ギャングっぽい感じのところからハマっていったんですか?
大貫社長:私が車好きになったきっかけは『よろしくメカドック』でした。そしてヒップホップを聴くようになってからはインパラに油圧を組んでローライダーにしたりしていましたね。そうやって車にどっぷりつかっていくうちにVTECのおもしろさに目覚めたんです。
Bose:見た目重視の方から入っているんだ。漫画系からハマり出すとレースとかに行きそうだけど。
大貫社長:レースは小学生の頃にポケバイをやっていました。
Bose:うわっ、うらやましいタイプの人だ(笑)。ポケバイは子供の頃に憧れたもんな。ポケバイや原チャリレースは流行ったもんね。でもネオクラシックなモデルをたくさん扱う大貫社長から見て、この時代の車の魅力ってなんですか?
大貫社長:一番は現代の車にはないデザインでしょうね。そしてこの時代の車の方がメカニカル的にいじりやすいこと。今はコンピュータ制御されている箇所が多いですから。車を操っているという感覚は制御が少ないものの方が味わいやすいですね。
Bose:そうなんですよね。僕がフィアット ニューパンダからフォルクスワーゲン ゴルフ2に乗り替えたのもそこ。本当にわずかなことなんだけど一度ダイレクトな感覚を味わうと物足りなくなる。「スポーツモードとか、いらないよ」ってなっちゃうもの。
大貫社長:ですよね。パワステ、パワーウインドウもない方がいいです(笑)。お客さんの中にはエアコンを外しちゃう人もいますよ。「ベルトがあると負荷がかかる」って。
Bose:僕はエアコンは捨てられないなあ。日本の夏はエアコンがないと車に乗れないよ(笑)。
ゆきだるま:カーセンサーnetを見てくれた人の中にもこの時代の車ってカッコいい!と感じる人っていると思うんです。でも一方で30年近く前のものになるから不安を感じる人も多いと思うんですよ。社長から読者に「初めてのネオクラシックカー購入アドバイス」をいただけませんか?
ネオクラ購入への道1「記録簿は必ず確認」
大貫社長:これは古い車に限らずですが、整備履歴がどこまで残っているかはきちんと確認した方がいいですね。言うなれば記録簿はその車の“履歴書”です。履歴書はアルバイトの面接に行くときでも持っていきますよね。中古車購入はあなたが面接官になって目の前の車を買ってもいいか面接するようなものですから。
ネオクラ購入への道2「下まわりと車両固有の場所に出るさびに注意」
大貫社長:年数の経った車で最も気をつけないといけないのがさびでしょう。保管状態が悪かったものだと下まわりにかなりさびが出ていたりします。極端な言い方をすれば20万km以上走っているものでもきちんと保管されていたものならあまり心配しなくて大丈夫ですが、数万kmしか走ってないものでも下まわりがさびだらけというものもあります。あとは車種ごとにさびやすい場所というのがあります。ワンダーシビックだとリアゲートのヒンジあたりに出ることが多いですね。
ネオクラ購入への道3「プラスチックパーツの状態と流通量を確認」
大貫社長:車は消耗部品の塊です。とくにネオクラシックだと普通じゃ意識しないところが経年劣化で要交換になることもあります。買いたい車が決まったらそのモデルの部品の流通状況を聞いておきたいですね。中にはパーツが極端に少なくなっているものもありますから。とくにプラスチックパーツは要注意。なんてことない部品が全然なくて、オークションサイトに出品されると業者の争奪戦が始まることもあるくらいです。
Bose:こうやって教えてもらうといろいろなことに注意しないとって思うけれど、最も大事なのは信頼できるお店を見つけることだね。気軽に相談できる環境があればそこまでビビらなくても大丈夫。ただ、今どきの車のようにまったく壊れないというものでもないので、そこは最初に理解しておいた方がいいかな。みんなも怖がらずにこの時代の空気を存分に味わってみようよ!
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