元ホームラン王、山崎武司の思う「車の未来」
2015/12/21
東京モーターショー2015を見た、山崎武司さんの感想とは……?
先日行われた“日本自動車界最大のイベント、東京モーターショー2015。プロ野球界屈指の車好きとして知られる山崎武司さんにとっても、一人の車好きとして楽しみにしていたイベントのひとつだったようです。
注目を集めたロータリー搭載スポーツカー「RX-VISION」や「自動運転車」をはじめ、展示されていた中で印象に残った車にこれからの車へ望む「思い」、山崎さんの思う「未来の車」などについて、お話を伺ってきました。
車好きにとって、大切なのは「自分の意志で運転すること」
―先日行かれたという「東京モーターショー2015」。イベント全体を見ての感想はどのような感じでしたでしょうか?
山崎:そうですね。車の機能がどんどん進化しているのは素直にすごいと思いますし、便利な機能はだいぶ増えた気がしましたが……車好きとしてはちょっと物足りないところがありました。
―物足りないところ、というと例えばどんな点でしょうか?
山崎:今の車って自動運転機能や排気ガスを減らす電気自動車や水素自動車に重きを置いている感じじゃないですか? 便利機能は確かに大切だし、いいとは思うんですが……車好きな人間としては「ハンドルを握って、自分の意志で運転できること」が大切だと思うんです。なので、自動運転機能の付いた車を見ると「時代はここまで来たか」と思うと同時に、少し物足りないな、と。
―走りを楽しめる車というコンセプトの車も出展されていましたが、印象に残った車はありましたか?
山崎:ホンダ シビックのタイプR。あれはカッコイイし、あの販売価格であのクオリティのスピードが出るのはスゴイよね。ニュル※でも結構速かったんでしょ? すごいことだよね。
あと、注目モデルということで話題になったマツダのRX-VISIONも見ましたよ。デザイン的にはカッコイイけれど、あのままの形では市販化はされるのかな? とは思いましたね。
―あのデザインのまま販売されたら、どうですか?
山崎:すごいと思いますが……あのままの形で市販化はないと思うんですよね。というのもここまで攻めたデザインの車って売れないと採算が取れないから、メーカー的には厳しいんじゃないかなと思うんですよね。
個人的にはこういったスパルタンな車が出てきてほしいとは思いますが。例えば、今って日産のGT-Rに対抗できるライバルってあまりないじゃない? あの車に真っ向からぶつかっていけるような車が、いろんなメーカーから出るといいなと思いますけどね。
―ここ最近はホンダ S660や先ほどお話にあがったシビックなど、比較的小型ながら走りに重きを置いた車が多数登場しています。ですが山崎さんとしては、ある程度車格があってパワーのある車が理想ですか?
山崎:そうですね。車好きな人っていうのは「パワーのある車に乗りたい」という願望みたいなものがあるし、僕自身もステイタスみたいなところがあると思うんですよ。「立派になったら、イイ車に乗れる」みたいなことが車には必要かなと。
例えばドイツだとポルシェがそれにあたるメーカーですけれど、日本にはそういったメーカーもないし、今はそんな車が少ない。だからこそ、もっとみんなが憧れるようなイイ車が増えてほしいとは思いますね。
ランボルギーニ カウンタックのデザインは今見ても“未来”を感じる
―「車の未来」という話とは少し離れてしまうかもしれないんですが……先日、あるイベントで山崎さんは映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場したデロリアンに乗るというパフォーマンスを見せてくれましたが、実際にあの車に乗ってみての感想はどうでしたか?
山崎:うーん……クラシカルでしたね(笑)。僕の好きなガルウイングなので、いいなとは思いましたけどね。
―映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は1985年に公開された映画ですが、30年前、当時高校2年生だった山崎さんは「車って未来はどうなっているんだろう?」と、考えたりしましたか?
山崎:その頃からそうだったと思うんですが、「車のスピードってどこまで上がるんだろう?」ということにいちばん関心がありましたね。今の車みたいに自動運転とか事故防止とかではなく、ただ純粋にどこまで馬力が上がって、どこまで速く走るようになるんだろうって。
当時は車には「時速300km/hの壁」というのがあって、そんなスピードの出る車なんてなかったんですが、今は市販されている車でも平気で出ちゃうじゃないですか? それは驚きましたね。
―今まで見てきた車の中で、山崎さんが「未来」を感じた車ってありますか?
山崎:これはランボルギーニ カウンタックになるかな。子供の頃に見たんだけど、とんでもないインパクトでしたよ。どうしてこんな形の車があるんだろうって思ったりしたしね。今思えば、空力もへったくれもないんだけどさ(笑)。
でも、70年代にできた車だというのにいまだに古くさく見えないし、日本車ではまだできないデザインなんじゃないかなと思うよ。僕なんかはあの車に憧れて、「立派な大人になって、カウンタックに乗りたい」って思ったりしたものです。
前にも話したかもしれませんが、プロ野球選手になって初めてホームラン王を取った96年のオフに僕、ランボルギーニ カウンタックを買おうとしてカウンタックLP500クワトロバルボーレを見に行ったんですよ。思ったよりも乗り降りがしづらいという現実を知りましたけどね(苦笑)。
―カウンタックのような車が日本メーカーからも登場すること、それが山崎さんの考える理想的な未来ということでしょうか?
山崎:そうですね。もっと言えば、個人的にはドノーマルみたいな感じ……もっとベーシックな車が増えたらいいなって思いますね。自動運転機能とか、事故防止のレーダーシステムとかっていうのも確かに素晴らしいけれど、車の楽しみって「ドノーマルな車でいかに速く走るか」「扱いにくい車を自分の腕でどうやって運転するか」みたいなところもあるからね。
ハイテクになっていくのはいいけれど、「車を運転する面白さみたいなのはなくなってほしくないな」って思います。車好きな人間にとってはやっぱり、運転する楽しさが何ものにも代え難いところがありますからね。
※編集部註:ホンダ シビックタイプRのニュルブルクリンク北コースでのベストラップは7分50秒63。FFの量産車としては歴代最速となった
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