スチャダラパーBoseがネオクラシックなホンダ車専門店に潜入。秘密のアジトに80年代のお宝が眠る!?
2015/10/15
商談前に社長の面接? 車を売ってもらえるかすらわからないお店が登場!
日本のヒップホップシーン最前線でフレッシュな名曲を作り続けているスチャダラパーのMC、Bose。中古車情報誌『カーセンサー』にて彼がお届けする人気連載「Bosensor」。取材現場で拾ったDEEPでUNDERGROUNDな話をお届けっ!!
Bose:僕が好きな車のひとつに1983年にデビューしたワンダーシビックがあります。カーセンサーですごくきれいなワンダーシビックを見つけたので、今回はネオクラシックなホンダ車を扱うクラインクラフトさんを訪ねるために埼玉県……。
編集部ペリー(以下、ペリー):うわ~~~っ、Boseさんストップストップ!! はい、カメラも一旦止めて!
Bose:なんだよ、いったい。人が気持ちよくレポートしているっていうのに。
ペリー:実は今回「撮影場所を絶対に明かさない」というのが取材を受けてもらう条件なんですよ。だからレポーターっぽく入られちゃうと困るんです。
Bose:そういう大事なことは先に言ってよ! でもストックヤードの場所が秘密ってなんでだろう。普通は絶対に出してほしいと言われそうだけれど……。
ペリー:お店のHPにも「商談は完全予約制」「冷やかし絶対お断り」「当店のやり方を不愉快と感じる方はどうぞ他のお店へ」などいろいろ書いてありましたからね。今回はかなり強敵かもしれないですよ……。
Bose:おいおい……。なんかビビっちゃうな。でもせっかくここまで来たんだし、激レアなホンダ車を見ないと帰れないよ。
渡辺社長:Boseさん、はじめまして。
ペリー:あっ、社長。今日は取材をうけていただいてありがとうございます! なんだか無理言って申し訳ありませんでした。Boseさんがお店の車をすごく気に入って、ぜひ生で見たいと……。
Bose:おい、そんなに硬くならないでも大丈夫だよ。
ペリー:(Boseさん、何言ってんスカ! ここで社長の機嫌を損ねたら「帰れ!」と言われるかも……)
Bose:大丈夫。渡辺社長はたぶん僕と同じ感性の持ち主だから楽しい取材になるよ。たぶんこだわりが強くていろいろ苦労もしてきたから言葉が少しきつくなっちゃったんだろうね。
渡辺社長:あはは。私もBoseさんからは同じ匂いを感じました。どうぞ、今日はいろいろ見ていってください。
ペリー:えっ、いったい何がどうなってんの? キンチョーしているのは僕だけッスか??
Bose:理由は後で話すよ。早速ですが社長、自慢のお宝を見せてもらっていいですか?
「オリジナルコンディションのものを後世に残す」という使命
渡辺社長:Boseさん、すみません。Boseさんがカーセンサーで見つけたシビックは、こことは別の場所に保管してあるので今日はお見せすることができないんですよ。ここには2ndと3rdモデルのプレリュードがあるので、それでもいいですか?
Bose:そうなんだ、残念。でもそのあたりも好物なんでぜひ見せて欲しいな。でもストックヤードの場所を明かさないとか、数ヵ所に分けて厳重に保管するとか、なぜ今のような営業形態になったんですか?
渡辺社長: 私がネオクラシックの部類に入るホンダ車のオリジナルコンディションにこだわっているからです。実はこの時代のホンダ車はもうほとんど現存していないんですよ。例えばマニアの間ではクイントインテグラは国内で500台も残っていないなんてささやかれています。
Bose:同じ時代のトヨタ車や日産車もだいぶ見なくなったけれど、ホンダ車は群を抜いているからね。なぜなんだろう。
渡辺社長:これはこの時代のホンダ車の特徴ですが、作りがヒラヒラで鉄板もペラペラですからね。でもエンジンはよく回るんです。もうひとつの理由は平成の初めごろからホンダの部品供給体制が変わったことが挙げられます。かつてホンダは旧車が一番維持しやすいメーカーだったんです。でも今は一定期間が過ぎると保安部品も供給されなくなる。必然的に維持が難しくなり、廃車になっちゃうんですよ。そういう車をなるべく拾うようにはしているのですが……。
Bose:なんだかもったいない話だよな。
渡辺社長:で、部品が手に入らないからうちに「パーツだけ売ってよ。ヤフオクで3000円ってなっているから送料込みでそのくらいで」みたいな電話が多くかかってくるようになって。失礼な話だと思いません?
Bose:ほんとだよね。社長がそのパーツを集めるためにどれだけ苦労しているかをまったくわかってない。僕らの世界だと顔も知らないやつから「そのネタちょうだいよ」って言われるようなものだな。
渡辺社長:私はオリジナルコンディションにこだわっているんですが、うちの車をベースにカスタムしたいという人も結構いるんです。カスタムも状態が良いものでやった方が仕上がりがいいですからね。カスタム自体を否定するつもりはないけれど、私の考えとは違う。ほとんどなくなったオリジナルコンディションのホンダ車を後世に残すことは私の“使命”だと思っているんです。ちなみに場所を明かさないのは盗難対策でもあります。
お店にある車も本当は売りたくない!?
ペリー:話が盛り上がっていますが、せっかくだからプレリュードを見せてもらいましょうよ。Bose:まったく……。いい話を聞いていたのになんで話の腰を折るんだよ。
ペリー:だってこのままだと今回は車がまったく出てこないで終わっちゃうじゃないスか。それじゃ自動車媒体として困るんで。
渡辺社長:あはは。せっかく来てもらったんだからぜひ見てくださいよ。
Bose:お、このカバーがかかったやつだね。この低くて薄いノーズ。間違いなく3rdプレリュードだよ。じゃあカバーを外してください!
渡辺社長:じゃあ行きますよ。
Bose:なんだこれ! メチャメチャきれいじゃん!! 白のSiでノーマル。よくこんなのが残っていたなあ。
渡辺社長:シートの生地はオリジナルが手に入らないので別のものを使っていますが、フロアマットはオリジナルです。僕はもともと内装フェチなんですよ。マットは靴のかかとですぐ痛んだり破れたりするから、私はオリジナルマットの上に透明のビニールマットを敷いてもらうようお願いしています。
Bose:ここぞ! というときだけ透明マットを外しましょうって。もうマット本来の意味をなしていないし(笑)。
渡辺社長:実はこの車は売れないやつでして……。先日までミニカーの制作会社に貸していたのでちょっと汚れちゃっててすみません。
Bose:すげー。そういう話はもうメーカーじゃなくてこういう店にくるんだ(笑)。そしてこの企画の取材で毎回出てくる“売れない”車。ビンテージのレコード屋や洋服屋と同じだよね。それにしてもこんなに状態の良いやつはどっから出てくるんだろう。
渡辺社長:実はこれ、近所の方からの買い取りなんですよ。この個体をホームセンターなどで何度か見かけていて、その度に「きれいだな~」と思いながらじっと眺めていたりしたんです(笑)。
Bose:やってること、僕とそんな変わらないよ(笑)。
渡辺社長:そうしたら偶然うちに電話がかかってきて「買い取ってほしい」と。オーナーとお会いして話したら意気投合して。「この車は売り物にしません。私が責任を持って乗ります」「そうしていただけると嬉しいです」って。
Bose:ついに社長が個人的に買い取っちゃうパターンが現れたよ(笑)。ちなみにお店にある車で本当は売りたくないやつって何台くらいあるんですか?
渡辺社長:……いっぱいあります(笑)。
Bose:(笑)。なんでこの企画で取材させてもらう店は商売そっちのけなんだろう(笑)。
ペリー:Boseさんがそういう匂いがするお店ばかり選んでいるからじゃないですか。
Bose:その方が楽しいからね。よし、カーセンサー本誌ではこのプレリュードをじっくり見て、日刊カーセンサーでは次回、渡辺社長の半生に迫ってみよう。お楽しみに!