▲現在、ソウルレッドプレミアムメタリックはロードスターなど6車種に設定されている ▲現在、ソウルレッドプレミアムメタリックはロードスターなど6車種に設定されている

鮮やかさと深みを表現する3層の匠塗

ロードスター、CX-3、デミオ、アクセラ、CX-5、アテンザの6車種に設定されているボディカラー「ソウルレッドプレミアムメタリック」(以下ソウルレッド)。広島東洋カープのヘルメットにも、このソウルレッドをイメージした色が使用されている。

ソウルレッドは、光が当たる明るい部分(ハイライト)は鮮やかな赤に、影になる暗い部分(シェード)は深みのある赤に見えるように作られている。実は、かなり革新的な技術が使われているのだ。そこで、ソウルレッドの開発を担当したマツダ技術本部車両技術部の篠田さんにお話を伺った。

篠田さんによると、ソウルレッドの起源は2007年のデトロイトオートショーで発表されたコンセプトカー「流雅(りゅうが)」に始まるという。優雅で深みのある赤いボディカラーは、なんと13層を匠が手塗りしたもの。染料が使用されていたため、屋内でしか展示ができなかった。

これを市販車両で再現するためには、耐久性をクリアしたうえで1台あたり1分で塗るという技術的なハードルが立ちはだかる。そのため、マツダでは2008年からデザイン、技術研究所、生産など様々な部署が協同して、この特別な“赤”の開発を進めたという。

▲カープのヘルメットにも、ソウルレッドをイメージしたカラーが使用されている ▲カープのヘルメットにも、ソウルレッドをイメージしたカラーが使用されている
▲2007年に発表された「流雅」。匠が生み出したこの色が開発の基準となった ▲2007年に発表された「流雅」。匠が生み出したこの色が開発の基準となった

そうして生まれたソウルレッドには大きく2つの特長がある。1つ目は、わずか3層で構成されていること。

最深部の「反射層」では光を反射するアルミフレークを混入したメタリックカラーを採用。2層目の「透過層」では下の色を透過させるソリッドカラーを重ね、その上に透明の「クリア層」を乗せている。結果、ハイライト部では反射層のアルミフレークに光が当たって鮮やかな赤になる。そしてシェード部では透過層と反射層の赤が重なって深みのある赤となるのだ。

もう1つの特長は、環境にやさしい塗装になっていることだ。ソウルレッドは水性の塗料を使用した「アクアテック塗装」という技術が応用されている。長年こつこつと継続してきた環境技術の技術革新により工程と機能を集約することで、従来に比べ排出されるCO2の14%、VOC(揮発性有機化合物)の78%を削減した。ちなみにVOCは光化学スモッグやPM2.5の発生原因となる物質だ。

▲反射層、透過層、クリア層の3つをイメージしたフィルム。上が3枚が重なったところ ▲反射層、透過層、クリア層の3つをイメージしたフィルム。上が3枚が重なったところ
▲上がRX-8に使用されていたベロシティレッドマイカ、下がソウルレッド。ソウルレッドの方が暗部に深みがある ▲上がRX-8に使用されていたベロシティレッドマイカ、下がソウルレッド。ソウルレッドの方が暗部に深みがある

こういったソウルレッドの工程を、マツダでは「匠塗 TAKUMINURI」と呼んでいる。現在マツダでは、このソウルレッドが似合わない車は作らないと宣言しているほど、核となるボディカラーになっている。色も造型の一部と捉えるマツダの、まさしく「魂(ソウル)の赤」なのだ。

text/渡瀬基樹 photo/マツダ株式会社、渡瀬基樹