「全固体電池」や「水素/空気二次電池」など次世代蓄電池のおかげでEVの未来も明るい?
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2015/07/14
電気自動車に使われるリチウムイオン電池の仕組みとは?
電気自動車やハイブリッド車に欠かせない「リチウムイオン電池」。初期のハイブリッド車が搭載していた「ニッケル水素電池」の1.5~2倍の電池容量で小型化が可能で、動作電圧は3倍の強力な蓄電池である。
今年はリチウムイオン電池の基本概念が確立されてから30年目にあたるが、進化は未だに続いている。VWは電池性能を今の約2倍に高めるメドを立てていると公言し、日産・ルノーも、遅くとも2020年までに航続距離を現行の2倍にあたる400km以上に引き上げるとしている。
いったい、どのような技術で蓄電池の性能を高めていくのだろうか。「次世代蓄電池」を語るために、まずはリチウムイオン電池の仕組みを簡単に説明しておこう。
リチウムイオン電池を一言で説明すると、「リチウムイオンが電解液を介して正極から負極に移動することで、充放電を繰り返す電池」のこと。これだとちょっと分かりづらいので、用語をひとつひとつ説明。
「リチウム」とはアルカリ金属元素のひとつ。元素表で覚えた人も多いかもしれない。「イオン」とは電荷を帯びた原子のことだ。
「電解液」とは、イオン性物質を水などに溶かして作った、電気伝導性のある液体のこと。可燃性の有機溶剤を使うため、火災や液漏れの危険性があり、発熱や発火、爆発のニュースや製品回収が起こるのはこのためである。
「正極」とはプラス極のことで、材料にはコバルト、ニッケル、マンガンなどの金属酸化物などが使われるのが一般的。「負極」とはマイナス極のことで、材料には炭素系材料や合金系の材料が使用される。
この用語を使って簡単に言い換えると、「電気を通す水を使って、プラス極からマイナス極にリチウムイオンを移動させることで電気を充電したり、放電したりしている電池」というわけだ。
リチウムイオン電池が抱える課題には、エネルギー密度と安全性の向上などが挙げられる。そして、それらを解決するために研究が進められているのが「次世代蓄電池」である。
次世代蓄電池のキモはリチウムにかわる素材選び
蓄電池メーカーのGSユアサは、正極側を従来のリチウム金属酸化物から硫黄に変更することで、従来比3倍のエネルギー密度を持つ次世代リチウムイオン電池の試作に成功しているという。また、トヨタなどが研究を進めているのが、「全固体電池」と「リチウム空気電池」だ。
「全固体電池」とは、リチウムイオンが移動する電解液を固体電解質に変えたもの。ひとつひとつのセルを包んだケースを形成する必要がないのでエネルギー密度を向上させることができ、電池自体の小型化も可能になる。液漏れの心配がないので、安全面や耐久面が高められるのも大きなメリットである。
「リチウム空気電池」は、正極に空気、負極にリチウムなどの金属を配列。酸素とリチウムの化学反応により電力を作り出す。空気中の物質を使うことで大幅な軽量化と全固体電池以上のエネルギー密度の実現が可能になる。
水素吸蔵合金中の水素と大気中の酸素との反応で水を生成しながら放電し、水の電気分解によって充電する「水素/空気二次電池」の研究も進んでいる。実用化すればリチウム空気電池の100倍以上の大電流での充放電が可能であり、幅広い用途での応用が期待できるという。
さらに、リチウムイオンではなく、「ナトリウムイオン」を使った次世代電池の研究も進む。ナトリウムは自然界に豊富で、レアメタルであるリチウムと違い安定供給が可能。価格も安い。詳細なデータは未発表だが、リチウムイオン電池よりもエネルギー密度は高く、充電時間も大幅に短いといわれている。
現状、燃料電池車が未来の車として注目されているが、蓄電池の進化によっては、電気自動車が隆盛を極める時代が訪れるかもしれない。