▲写真は昨年発売された特別仕様車「ロードスター25周年記念車」。25台の限定モデルで、専用ボディカラー「ソウルレッドプレミアムメタリック」をはじめ、専用オーナメントやフロントコンビネーションランプベゼルといった特別装備が採用されている ▲写真は昨年発売された特別仕様車「ロードスター25周年記念車」。25台の限定モデルで、専用ボディカラー「ソウルレッドプレミアムメタリック」をはじめ、専用オーナメントやフロントコンビネーションランプベゼルといった特別装備が採用されている

限定車と特別仕様車は心理学を上手に活用した販売戦略!?

オトクな中古車選びテクニックのひとつが、装備やカラーが充実した「限定車」や「特別仕様車」狙い。本来、オプションのパーツやアクセサリー、ボディカラーを標準装備していたり、通常モデルにはないオプションを装備していたりする車だ。

一般的に限定車はその名のとおり、台数や生産期間が限定されている車。特別仕様車は台数や期間が限定されていないことも多い。

某有名ブランドのオーディオや革張りシートに心引かれる人は多いかもしれない。しかし、「限定」という言葉は、なぜ人の心をこんなに引きつけるのだろうか。

「それは、希少性原理によるものです」と教えてくれたのは、心理学者の内藤誼人先生。簡単にいえば、数が少ないものはよく見えるといった原理で、宝石に価値があるのも「希少性原理」によるものなのだとか。

「バージニア大学のステファン・ウォーチェル氏が行った実験で、箱の中に2個残っているクッキーと6個残っているクッキーを試食してもらい、どちらが美味しいかを判断してもらうといったものがありました。結果は、みんな2個のクッキーが美味しいと回答。しかし、このクッキーは全く同じものなんです。数が少ない方がたくさん食べられて希少性が高くなっているので美味しいはず、と思い込んでしまったんですね」

車もこれと同じで「限定」「特別仕様車」と付くことで希少性が高まり、売れやすくなることがあるという。実は、これらの車はモデル末期で販売が落ち込んだときの“テコ入れ”で発売されることが多い。心理学を上手く活用した販売戦略ともとれるわけだ。

▲もちろん、限定車はモデル末期だけということではない。例えば、ホンダ S660はデビューと同時に特別限定モデル「S660 CONCEPT EDITION」を660台発売している ▲もちろん、限定車はモデル末期だけということではない。例えば、ホンダ S660はデビューと同時に特別限定モデル「S660 CONCEPT EDITION」を660台発売している

もちろん、車の場合は前述のクッキーと違って、限定車や特別仕様車は様々な装備が付属されて本当にオトクになっている。新モデルにこだわりがなければ、十分にお買い得だ。また、中古車で購入する際にも、様々な装備が付いた1台は魅力的だろう。

とはいえ、購入の際に食指が動く「限定」という言葉だけに惑わされず、自分のカーライフと照らし合わせた車選びを心がけたい。

【取材協力(敬称略)】
内藤誼人(ないとう・よしひと):心理学者、アンギルド代表、立正大学客員教授。心理学を応用した実践的なノウハウに着目した著書多数。近著に『同性にモテる技術』(中公新書ラクレ)、『人はなぜ、「そっち」を選んでしまうのか』(青春出版社)など

text/コージー林田