日産自動車が、去る9月に「日産360」という世界的な試乗イベントをカリフォルニア州アーバインで開催した。そこに展示されたショーモデルからは、日産が考える「プレミアムブランドとは何か」を感じ取ることができた。

日産の考えるプレミアムブランドのあり方がよくわかるのが“インフィニティ・エッセンス”。2009年にお披露目された車ではあるが、そのデザインからは4年経過したとは思えない新しさを感じることができる。内装も素晴らしくクオリティが高く、外と内とのアンビエンスは生ものではない地に足の着いた高級グランツーリズモが息づいている。

そのデザインを受け継ぐショーカー“インフィニティ・エセレア”は、高級コンパクトセグメントとして2011年にコンセプトが発表になったモデル。2015年の市販化を目指し調整が進められているようだ。おそらくボディ形状的にFFで、プラットフォームの共有性からピラーの傾きが制限されているデザインだと思われるが、このセグメントにチャレンジして一気にブランド力を向上したいという気迫がこもった一台だ。

プレミアムブランドとしての質感の向上については最近の日産車でもよく分かる。実際に北米で販売されているQX56というアッパーSUVは、ボディプレスの塊感を出し、内装のダッシュパネルの色などに映える素材を使っていてアグレッシブだ。

サンディエゴにある日産デザインアメリカの副社長である上田太郎氏とインフィニティデザインディレクター入江慎一郎氏の二人からも説明を受けたが、そこで強く感じ取れたのも日産のアッパーブランドであるインフィニティの拡大とブランド力の向上、そのためのデザインや質へのこだわりだ。

本物のプレミアム性とは? それはエクステリアからも、乗り込んだインテリアからも、走ってみても、そのプレミアム感を誰もが感じ取れ、納得できるモデルではないだろうか。プレミアム感を実現するために重要な素のデザインとディテールの造り込み、そのイメージが象徴的にコンセプトカーには託されていた。

世界で販売されている最新の日産車に乗ってもらうことが「日産360」というイベントの表の意味だが、私が読み取るのは、日産のアッパーブランドであるインフィニティのブランドイメージを日本のメディアに浸透、向上させることも狙っているように見受けられる。

アメリカのアッパーブランドと同じモデル(次期スカイライン)がまもなく日本でも販売されるにあたり、インフィニティ=高級日産車というアピールをとおして販売台数を増やしたいという目的も当然考えられる。本当は日本でもインフィニティブランド戦略を行いたいはずであるが、強豪ひしめく日本のマーケットで、今の日産にそれだけの体力があるかと言えば難しいだろう。

コンセプトモデルとして展示された車からは、日産が考えるプレミアムカーのこれからが所信表明のように雄弁に感じ取れた。

Text/松本英雄

2009年にお披露目された“インフィニティ・エッセンス”。デザイン性と質感を最重要とするインフィニティを体現している

2009年にお披露目された“インフィニティ・エッセンス”。デザイン性と質感を最重要とするインフィニティを体現している

“インフィニティ・エッセンス”の車内。乗り込むことにより高い質感とデザイン性、そして本物のプレミアム感が伝わる仕上がりとなっている

“インフィニティ・エッセンス”の車内。乗り込むことにより高い質感とデザイン性、そして本物のプレミアム感が伝わる仕上がりとなっている

2015年に生産を予定されている“インフィニティ・エセレア”。プレミアムブランドとしてのインフィニティの次代を担う1台だ

2015年に生産を予定されている“インフィニティ・エセレア”。プレミアムブランドとしてのインフィニティの次代を担う1台だ