▲マツダが魂動デザインの「ご神体」と呼ぶクレイモデルを、私ごときが削らせていただいている!? 貴重な経験についニヤけてしまう ▲マツダが魂動デザインの「ご神体」と呼ぶクレイモデルを、私ごときが削らせていただいている!? 貴重な経験についニヤけてしまう

マツダのデザインは「カタチが湧き出てくる」イメージ!?

編集部A(以下、A) ちょっと! 気を付けてくださいよ、ぴえいるさん。ご神体ですよ、ご神体!
ぴえいる(以下、ぴ) なぁ~に、安心したまえ。粘土いじりは得意中の得意。小学生の頃、素晴らしい象を作って先生に褒められたことがあるんだ
A それとこれとは全然別ですって。マツダの魂なんですよ!
 ただね、象を作ったのに「素敵なカバだね!」って先生には言われたけれど
A えぇ~ダメダメじゃないですか!
 いや、それは先生の見る目がなかっただけ。ここにいるマツダの匠、クレイモデラーさんなら私の芸術性がきっと理解で……あっ!!!

私、ぴえいるが何をしでかしてしまったのかはいったん置いておこう。今回、訪れたのは東京ミッドタウンで行われている「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH」に出展中のマツダブースだ。ここでは同社のクレイ(粘土)モデラーによるクレイオブジェの製作実演やデミオの展示などが行われている。

まずは同社のアドバンスデザインスタジオ部長の中牟田さんにお話を伺った。

A 新型ロードスターでは、エンジン位置や居住空間を決めてからではなく「まずデザインからスタートした」と伺いましたが
中牟田 ええ。マツダはまず独自の仕込みから始めます。ちょうど腕の良い料理人が仕込みにこだわるように、我々がこういうものを作りたい! というものを作るのです
 それはデザイナーの仕事なのですか?
中牟田 生き物が見せる一瞬の強さや美しさのイメージをデザイナーが作り、クレイモデラーは立体でフォルムを生みながら、お互いにやりとりをして、ベースとなるビジョンモデルを作りあげるのです
 そのビジョンモデルを「ご神体」と呼んでいるのですね
中牟田 画よりもカタチが先にあると話が進みやすいんですよ。ちなみにビジョンモデルを作る少数先鋭のクレイモデラーをトップガンと呼んでいます

続いて、クレイモデラーを率いるデザイン本部デザインモデリングスタジオ本部長の呉羽さんにもお話を聞いた。

A 最近は一部の車種に関してはクレイを使わず、3Dデータだけで実車を作るメーカーもあるようですが、なぜマツダはクレイモデルにこだわるのですか?
呉羽 人の手で作るからこそエモーショナルなものが表現できるのだと思います。そこには日本人の美意識というものを必ず含みたいという思いもあります
 それがグローバルな競争が求められる現代において、差別化になるのですね
呉羽 それに「魂動」をカタチに、つまり気持ちをカタチにするなんて、ちょっと宗教めいた感じがしますが、実際にクレイで作業していると「カタチが湧き出す」ような感じなんですよ
 それはまさに運慶が仏像を作るのと同じような心境なんじゃないですかっ!!
A なんで急に運慶!? 唐突www それよりあのこと、謝っておいた方が…
 あ、あの…呉羽さん、実は、その…クレイモデルを削らせてもらったのですが、力が余ってガッツリいっちゃったのですが…すみません
呉羽 あ、大丈夫ですよ。これは実演用に少し柔らかいクレイを使ったレプリカですから。本物は一度削ったら元に戻せないような、もっと硬いクレイを使っています
 な、なんだ、それを早く言ってくださいよ~! チビリそうでしたよ
A 実寸大のクレイモデルもやはり硬いクレイを使うのですか?
呉羽 常に我々は一撃でカタチを作るつもりでいますから。直しが効かないように、知る限りでは世界で一番硬いクレイを使っています
A ぴえいるさんも一撃で原稿を仕上げるつもりで仕事してくださいよwww
 ぐぬぬ……

▲デザイナーが描く、生き物が見せる一瞬の強さや美しさのイメージとは、このような画のこと。これをもとにクレイモデラーがデザイナーと言葉を交わしつつ、立体的なクレイモデルを作る ▲デザイナーが描く、生き物が見せる一瞬の強さや美しさのイメージとは、このような画のこと。これをもとにクレイモデラーがデザイナーと言葉を交わしつつ、立体的なクレイモデルを作る
▲手前のクレイモデルが、現在のマツダデザインのテーマ「魂動」を表現したご神体。それをベースに、左上の金属風に仕上げられたのがデミオのご神体。さらにこれをもとに、奥のデミオの実車が作られた、という流れ ▲手前のクレイモデルが、現在のマツダデザインのテーマ「魂動」を表現したご神体。それをベースに、左上の金属風に仕上げられたのがデミオのご神体。さらにこれをもとに、奥のデミオの実車が作られた、という流れ
▲東京ミッドタウンではクレイモデラーによる実演の他、制作体験もできる ▲東京ミッドタウンではクレイモデラーによる実演の他、制作体験もできる
▲「デザインの質を作り込む」ことにこだわる同社には匠と呼ばれる人々が各所にいる。例えばステアリングの本革ステッチの縫い方ひとつにも、その匠がいて質の向上を追求しているのだとか ▲「デザインの質を作り込む」ことにこだわる同社には匠と呼ばれる人々が各所にいる。例えばステアリングの本革ステッチの縫い方ひとつにも、その匠がいて質の向上を追求しているのだとか

「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH」 マツダデザイン展示
開催期間:2014年10月17日(金)~10月26日(日)

【クレイモデル造形体験会】
2014年10月18日(土)、19日(日)、25日(土)、26日(日)
各日2回:13:00~/15:00~

text/ぴえいる