ガレージ123に並ぶマツダ ロードスター▲ロドのメンテナンス&チューニングに関するアドバイスを教えていただいた埼玉にあるガレージ123の根岸さん。主にNBとNCのロードスターを専門に扱うお店で、サーキット職員だった経験を活かして楽しく走るためのメンテナンスに関する相談にのるだけでなく、販売も行っている。いや、正確には販売がメインだそうです(笑)!

最近ロードスターを購入する若者が増えているんです!

「世界で最も多く生産された2人乗りの小型オープンスポーツカー」としてギネス記録に認定、その後も記録を更新し続けているロードスター。

初代NA型の販売からちょうど30年が経過したこともあり、中古車としての流通量は豊富、かつ、価格が手頃な物件も多く存在している人気車です。

そのため、最近では若者の購入者も多く、初めてのマイカーに……なんてケースも結構あるそうで。手軽に買える車種だからこそ起きるお悩みも同時に増えているとのこと。

例えば、古いモデルを買ったけど、メンテナンスってディーラーでできるの……?

例えば、安かったから遠方にある車両を買ったけど日々の点検はどこに出そう……??

例えば、突然不具合が生じたので、今すぐ近くで見てほしい………とか。


もちろん、お悩みだけでなく嬉しい相談も多いそうなんです。

「買ってみたらすっごく楽しい! もっと気持ちよく、もっと速く走れるようにいじってみたい!」なんて、買ってから想像以上の楽しみを感じて思う、あんなことやそんなこと。

そんなお悩みやご希望を応えるべく、埼玉でNB、NC型のロードスターをメインで販売している「ガレージ123」の根岸さんに、日々のメンテナンスや手順、費用についていろいろ伺ってまいりました!

ガレージ123 根岸さん ▲ ロードスターの状態はもちろん、レベルと予算に応じて段階的にステップを提示してもらえるのは嬉しい。気軽に相談しながら楽しく走るも良し、サーキットデビューを果たせたら最高ですよね

いじれば速くなる? でもお金も限りがあるし段階的に……

編集部 西村(以下、西村): 率直にお聞きします、自分もサーキットを走ってみて思うんですけど、こうやったら速く走れるようになるってなにかポイントはあるんですか?

ガレージ123 根岸さん(以下、根岸さん): もちろんありますけど、少し状況を絞ってお伝えしますね。
まず、サーキット専用の車を買うのではなく、普段乗っている車をサーキットでも走らせたいという方が大半です、ロードスターを買っている方は。

西村: ですよね!

根岸さん: だとすると、最低限「壊さないように」というのが大前提となってきます。そして、みなさん予算がありますので、段階的に手を入れていく方が現実的です。

西村: はい、若いみなさんがロードスターを買われるケースも多いので、ぜひ段階的なバージョンアップの手順を教えていただきたいです!

根岸さん: では。 車の性能を100パーセント引き出すようにすることです、車はノーマルでも構わないので。
具体的にはオイルのリフレッシュを最初にお勧めしております。ミッションやデフなどのオイルを交換して車が本来の性能を発揮できることが重要です。この作業は全交換で2~3万円の予算感でできます。
レース用の高いスペックのものを使うこともできますが、街乗りレベルであれば純正相当で十分と弊社は考えております。

西村: 速く走る以前に壊さないためのメンテナンスにもなるのでオイル系は重要ですよね! 見た目も変わらないので地味ですが、そもそもの性能を使い切るだけでもそれなりの腕が必要ですし……。

根岸さん: 人間でいえば血液に当たるでしょうか。筋トレする前に健康じゃなきゃ話にならないので。

西村: 最初のステップは、オイル系のリフレッシュですね。

マツダ ロードスター ▲本記事で紹介する手順によって完成させた根岸さんのNB型ロド。見た目は決してハデではないけれど、その分普段使いと両立するには良いバランスとのこと。それでも筑波サーキットでのタイムを聞くととっても速いです(笑)!!!

速く走るためには止まれることが重要!?

西村: リフレッシュをしたら、次は速く走れるようしたいです!

根岸さん: みなさん速く走るためにはスピードをアップさせることを想像されるのですが、車を自由に操りサーキットでタイムを伸ばすために重要なのはブレーキ、つまり「止まる」という性能です。
そもそもスピードを出せるようになればなるほど、止まれるようになっていないと大きな事故につながる可能性があります。

西村: 分かります。
実際サーキットを走るときに、ストレートで加速するのはアクセルを一気に踏むだけですが、コーナー入るときにはどのタイミングでどれくらいの強さでブレーキ踏むのか、踏み続けるのかが車を綺麗に運転してタイムに影響するもっとも重要なポイントですよね。ブレーキが利かないというのは本当に怖い……。


根岸さん: はい、なのでこちらも地味ですが、ブレーキまわりではローターやパッドのリフレッシュをオススメしています。純正相当だと1万円前後、パッドを強化する場合はステージにも寄りますが2万円前後からご案内可能です。

西村: 同じく、車本来の運動性能を引き出すことが安全、かつ速さに直結するんですね。
 

マツダ ロードスター ▲ブレーキや車高調は車と路面をつなぐ文字どおり足回りとなる部分。安全性にも速さにも影響するのでよく考えて手を入れていきたいですね!

いよいよ足回りを強化! 見た目も変わってきます♪

根岸さん: ここまでの工程を我慢して仕上げられたら、次は速さや見た目が変わる足回りです。

西村:いよいよですね! 足回りはやっぱりお金がかかるんでしょうか?

根岸さん: 状況により変わりますが、ご相談後試走させていただき、ご提案させていただいております。またアライメントが狂っている場合には、アライメント調整のご提案もいたします。アライメント調整は2万円前後で承ります。
ホイールのサイズ感も考慮いたしますが、弊社ではブリッツさんのをおススメしており、取付やアライメント調整を含めおおよそ15万円~でご案内しております。

西村:なるほど、ここでケタが変わりますね。
オイルやブレーキ関連のリフレッシュなどをすっ飛ばしてまず車高調! ってなると、車を走らせる楽しさや手を入れたときの変化を感じ取れないまま、イキナリ15万円という予算の壁に断念するのもよくわかります。まずは性能を引き出しつつ安全に楽しみながら、このステップの予算と相談していきたいですね。


マツダ ロードスター ▲タイヤは唯一直接路面設置する部分のため使用状況によっては消耗も激しい。サーキットを走る場合など、用途や頻度、予算に応じて無理ない購入、取り替えの計画を立てましょう

消耗品のタイヤはレベルに応じた購入を!

根岸さん: 最後の工程というわけではないですが、サーキットで走るとかなりの勢いで消耗するタイヤは定期的に交換が必要になります。
街乗りメインであれば、高額なスポーツ用タイヤではなく街乗り用のタイヤで十分だと考えております。
ウチで気軽に交換できる街乗り用としてオススメしているタイヤだと、海外製で4本2万円のものがあります。自分もこれでサーキットを走ることはあります。もちろん、スポーツ走行用のハイグリップタイヤの場合はタイムが変わりますし、限界性能の違いは当然ありますが。

※根岸さんのロードスターでは、タイヤがレーススペックのときと約3秒の差が出る(筑波サーキットコース2000の場合)

西村: 路面が熱くなる季節とか時間帯を走るだけでも消耗度合いが変わりますし、耐久レースなどに出るとレース中にもコンディションはどんどん変わりますもんね。タイヤは車の中で唯一路面に直接設置する部分ですし、いろいろ試す楽しみがありますね!
他に手を入れていく部分はありますか?


根岸さん: あとは好みの部分で分岐していきますし、普段使いとのトレードオフを理解しながら考えた方が良いです。
例えば、オープンでサーキットを走る場合はロールケージが必要となります。ロードスターの場合剛性アップパーツがタイムに反映するとも限りませんので、ご自分のスタイルに合ったパーツ選択も重要です。
他にも、バケットシートやハーネスなどは、サーキットでのホールド性を格段に上げてくれますが、普段の乗り心地や乗り降りの手軽さが大幅に損なわれますね。
また、当店では吸排気系はオーダーがない限りオススメしていません。住んでる周りの方への配慮が必要な部分ですし、見た目の変化に比べて圧倒的に警察に止められることが多くなりますから……。

西村: ぜひ迷惑のかからない範囲で楽しみたいですね!

根岸さん: とにもかくにも運転技術を学んでいくことが楽しさに直結します。前よりこうやって運転できた! とか、もっとここでこうしたいからこの部分を強化したい! って欲が自然と湧いてきますから。
当店でも時々実施しますが、プロが教えてくれる走行会などに参加するのは良い手だと思いますよ。

西村: まとめますと……、

まずは、車がもつ性能を100パーセント引き出すためにオイルをリフレッシュする、そうすれば壊れにくくもなり、運転技術を学ぶのにはもってこい。

次に、スピードを上げていっても安全に走行ができるようにブレーキ関連をケアする。

最後に、車の中でも路面に近い足回りやタイヤをレベルに応じて強化していく。

……手順に合わせて予算感もアップしていくので、やっぱり順を追うことが重要ですね。


根岸さん: いわゆるチューニングという世界とは少し別だと思いますが、段階的に強化していけるので無理に一気に予算をかける必要はありません。自分も車も一緒に、少しずつレベルアップしていく楽しさがきっとありますよ!

マツダ ロードスター ▲シートやベルトなどは日常使いも考えながら変更するのが良いです
文/西村泰宏(編集部) 写真/小塚大樹
西村泰宏(にしむらやすひろ)

カーセンサー編集長

西村泰宏

カーセンサー編集長 兼 リクルート自動車総研所長。車メディアを自動車好きだけでなく、車を買うすべての人の読み物に変革すべく日々の仕事に従事。愛車はKJチェロキーと986ボクスターの2台で、クロカンとオープンカーのハイブリッド生活を満喫中。2児の父で、チャイルドシート、ジュニアシートはRECAROを装備。好きなものはスニーカー。