R35 GT-Rを乗りこなすバリキャリ女子のストイックさに惚れる! ~クルマ “女子” き:Vol.2~
2019/02/13
【連載:クルマ“女子”き(くるまずき)】自動車に移動手段以上の価値を見いだし、時間もお金も費やする、いわゆる「車好き」はほとんどが男性である。ゆえに大変貴重な「女性の車好き」、しかも男性顔負け(?)の偏愛ぶりを見せる女性を取材する企画。カーセンサーは車好き女子を、応援しています!
26歳キャリアウーマンのアシはR35 GT-R
「オンナはミラ ココアにでも乗ってりゃいいんだよ!」などと言う時代錯誤な男は、さすがに最近はいないだろう。
だが、心のどこかには「車ってのは基本的には男のものである」との思いが、もしかしたら薄っすらとあるのではないか? ……恥ずかしながら告白すると、筆者の胸中にも実は(少しだけ)そんな思いはある。
だが、そんな思い込みが完璧に打ち砕かれる瞬間も多い。
例えば、「通勤車はGT-Rですよ」と涼しい顔でおっしゃる26歳の女性、井上美玖さんのような人と会ったときだ。
――このGT-R、けっこういじってありますね?
井上さん:そうですねー。中古車として買ったときに入ってたのはNISMOのコンピュータだけでしたが、その後、わたしの意向でENDLESSのブレーキローターとパッドに交換したり、レカロのフルバケットシートを入れたりとかしましたね。
――なんでそこまでするんですか? いやいや、その前になんでGT-Rなんですか?
井上さん:速くてカッコいい乗り物が好きになったのは、バイク好きだった父の影響ですかね。
――なるほど。でも、免許取って最初に買った車はやっぱり練習用にミラ ココアだったとか?
井上さん:や、わたしにとって最初の自家用車がコレ、サンゴー(※R35型日産 GT-Rのカーマニア的呼び方)ですよ。3年ぐらい前に自分で買いました。
――……先ほどの質問に戻っちゃいますが、なんでGT-Rなんですか?
井上さん:えーと、わたし、会社まで車で通勤したかったんです。
――えっと、意味がわかりません(笑)
井上さん:通勤って、満員電車でやるよりは自分の車でやったほうが明らかに楽しいじゃないですか? 充実した時間が過ごせるというか。だから、まずはMT車で通勤したいと思ったんですね。
――「MT車で」ってとこは正直わかんなかったですけど、車で通勤したいというのはよくわかります。そして……?
井上さん:そして、ホンダのS2000とかFD(3代目マツダ RX-7)とかを探し始めたんですが、よく考えたら「都内までMT車で通勤はするのはちょっとツラいかも?」と思い、ATの車を探しはじめたんです。速くて、お尻がデカいAT車を。
――お尻がデカい?
井上さん:はい。例えばですけど、フォルムだけで言うとシボレーのコルベットみたいな。わたし、ああいうのが好きなんですよね。で、結果としてサンゴーGT-Rの中古車になったわけです。
――ほんと、車が好きなんですねぇ……
井上さん:や、ハマったのは「買ってから」ですかね。最初は、まさかここまでハマるとは思ってませんでした(笑)。
――GT-Rは普段どんな感じで使ってるんですか? 通勤以外の部分で
井上さん:まとまった休みがあれば、車で旅行に行ったりしています。実家が四国なのですが、帰省はだいたい車ですよ。昨年は、九州まで映画のロケ地を見に行ってみたりもしました。
あと、最近はよく釣りに行ってます。ラゲージが広いのでクーラーボックスも載るし、竿も入るんですよ。
――そんなこんなをしてるうちに、改造したくなっちゃったわけですね?
井上さん:はい、まさに。GT-Rはノーマル状態でも素晴らしい車ですが、走ってるうちに「もうちょっと制動力が欲しい!」とか「運転中の身体をもうちょっと固定させたい!」とか思うようになって。で、気がついたらこんな感じに(笑)。
――車の楽しさ、あるいは運転することの面白さ、またあるいはGT-Rという車で走ることの素晴らしさって、井上さんにとってはどんなモノなんでしょうか?
井上さん:う~ん……「GT-Rについて」になっちゃいますが、せっかくGT-Rという車を買ったからには、その性能をフルに活かした走りができる自分になりたい――って思うんです。もちろんこんな速い車を、素人であるわたしが「フルに」なんて動かせるわけないのはわかってます。でも、「自分ができる範囲内でのベスト」は目指したいんですよね……。
友人や知人からは「変わってる」と言われることも少なくないという井上さん。
たしかにお話を聞いていると、「世の多数派女性が言っていることとは内容がちょっと違う」という意味で、井上美玖さんは「変わっている」のだと筆者も思う。
だがそれは悪いことでもなんでもなく、ただただ自分の人生に対してストイックというかマジメというか、真摯な対応をしているだけのことなのだと筆者には感じられた。
仕事に関してもそうだ。井上さんは言う。
「仕事というのは、人生の時間のなかでかなりの時間を必然的に占める、重要なものだと思っています。それをより良いものとするべく、実はわたし、昨年末に起業して独立したんです。勤務していた会社からの暖簾分けっぽい形ではありますが、自分の時間とお金の質を、より良いものとするための選択です。……がんばって働いて、最終的には英国の○×△に乗りたいですね」
……井上さんとの約束により、「○×△」という車名をここに明かすことはできない。
だがとにかく、このように冷静かつ情熱的に、自分の人生と自動車というものについて諸々考え、そして対峙している人物に対しては「うむ、車が好きなことに男も女も関係ないよね」という以外の感想は持ちようがない。
「クルマ“女子”き(くるまずき)」という企画名からは若干ずれたニュアンスの結論となってしまった。
だがいずれにせよ、「普遍的な自動車愛好家像」をたまたま26歳女性の姿形に結晶化させたかのような、井上美玖さんなのであった。
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