歳月の経過とともに進化を続ける湘南のガレージハウス【edgeHOUSE】
カテゴリー: カーライフ
タグ: EDGEが効いている / ガレージハウス
2018/06/21
生活感を排除した湘南の家|小林江一郎(湘栄建設 株式会社)
今回訪れたO邸は、湘南の海から徒歩1分、西湘バイパスや国道1号線といった幹線道路からも至近で、JRの駅まで1㎞ほどと恵まれた環境にある。もともと周辺の土地は、かつて財界人や著名人が好んだ別荘地としても名高く、O邸周辺も当時を思わせる穏やかな街並みが特徴だ。
まず目に入るのは、1階ガレージのガラス扉から見える純白のフェラーリ 360モデナの存在。そのガラス扉には「WELCOME OPEN 10:00 CLOSE 6:00」と記されているから、カフェか雑貨屋と勘違いしてしまいそうな佇まいだ。事実、「たまに、何屋さんなんですか? と尋ねられることがありますよ」と、施主のOさん。そんな道行く人が足を止める遊び心が満載されたO邸には、外観から想像する以上に多くの仕掛けが施されていた。
ガレージ脇のアプローチを通り、突き当たりの右手が玄関。ガレージはアプローチ側もガラス扉になっているので、玄関へのアクセス中にも愛車の様子が確認できる。玄関を入ると、邸内がすべてバリアフリー化されていることに気づく。
玄関ホールにはエレベーターも設置されていて、Oさんが将来を見据えた家造りを施していることがわかる。左手は寝室で小窓からはガレージ内を見ることができ、外に設けられたバルコニーからはアウターガレージとインナーガレージの両方が確認できるというレイアウト。
再び玄関ホールに戻り、2階へ上がる階段脇の扉から数段下りると、そこは納戸。奥の引き戸を開けると、360モデナの美しいリアビューが現れた。
ガレージ内に入ると、すべての壁面に雑貨類がレイアウトされている。海がらみのもの、車がらみのもの、それらとは無縁の農機具を模したミニチュアのマスコットなどなど。いずれも趣味のよい雑貨屋に並んでいそうなアイテムばかりをセンスよく、時には洒落を利かせてあしらわれていることが特徴だ。
これらのキャッチーなデコレーションは、ガレージだけではなく邸内外のいたるところにあしらわれている。この様子を見るだけでも、Oさんのセンスや家族のライフスタイルがうかがえるというものだ。
2階へ上がる階段の踊り場には、Oさんの書斎が設けられている。3畳弱のスペースだが天井が高いため、閉塞感はない。デスクに腰掛けると正面にある横長の窓からガレージを見下ろすことができるのも、Oさんのこだわりだ。
2階は、広いワンルームというイメージで、ダイニングルームとリビングルーム、そして広いテラスがひとつの空間を作り出していた。すべての壁面には面積の広い窓が設けられ、自然光がたっぷりと注ぎ込む。
テラス越しに海の方向を見ると、海面こそ望めないが往年の松並木を思わせる木々の様子から海を感じることができる。空間がひとつにつながって感じられるのは、O邸内に一般的な「ドア」が存在しないから。1階も同様で、部屋の仕切りは全開可能な引き戸を用いている。
家は育てるもの、作り上げていくもの、を理想的に実践
設計を担当したのは建築士・小林江一郎さん。施主のOさんとの出会いは、小林さんの自邸が紹介されたTV番組を、たまたまOさんが見ていたことがきっかけ。その番組でOさんが見た小林邸は、自邸を新築する際のイメージどおりで「感性もドンピシャでした」と言うほどだったという。
設計段階でのディスカッションは毎週のように繰り返されたが、「もともとビジョンが明確だったので、とてもやりやすかったです」と小林さん。対してOさんも、「毎回スケッチを描いてきてもらい、そこに私のイメージを摺り合わせていきました。細かいところまでとことん詰めていったので、竣工時に食い違っている点は皆無でした」と、完成度の高さに満足している。
「Oさんは、本当に充実したライフスタイルを楽しんでいます」と、小林さん。「O邸は(竣工から13年たって)リゾート風のイメージが完成されつつあると思います。竣工時からかなり進化していますね」
家は進化するものだと……?
「私は日頃から、家は育てるもの、作り上げていくもの、とお話しています。Oさんはそれを理想的に実践されています」と、作り手としてもOさんの暮らしぶりには絶賛だ。
もともと東京出身のOさんだが、奥さまの実家が湘南にあることも考慮して、自邸を建てるなら湘南方面に……と考えていたという。そして大好きな海まで徒歩1分、愛車の走りを満喫できる箱根まで30分程度という絶好のロケーション。Oさんは都心のオフィスまで電車通勤をする毎日だが、「家で飲まない日はありません」というほど、自宅でのだんらんを楽しんでいる。
Oさんが自邸を建てた13年前は、年齢的にお若い頃だと思うが、その時点ですでに将来の自身のライフスタイルをイメージし、さらに老後の暮らし方まで視野に入れていたことになる。その先見性にも恐れ入るが、長期にわたる生活イメージを具現化した小林さんのセンスと技術にも感心した今回の取材であった。
【施主の希望:家の中のどこからでも愛車が眺められるように!】
■施主のOさんが、小林さんに設計を依頼するにあたり希望したことは、まずガレージ内の愛車が見えること。それも、リビング&ダイニングルームや書斎など、邸内のどこにいても愛車を感じていたいというオーダー。ただし、それにより日常生活がスポイルされるようでは困る……という希望も。
そんなOさんはこれまで、BMW 318isに始まりポルシェ 968など通好みのドイツ車を所有。どれも10年以上乗り続け、現在は360モデナで休日の箱根を楽しんでいる。
【建築家のこだわり:初の試み! ポリカーボネート製の床を提案】
■小林さんが苦労したのは動線。いたるところから愛車が見たいという希望だったのでガレージ中心の設計になるが、生活動線が使いづらくては本末転倒。そこで小林さんは、2階の床をポリカーボネート製の窓とすることを提案した。初めての試みだったが、Oさんからは喜んでもらえたという。
また、バリアフリーやエレベーターについては大学病院などへ行き十分に調査をしてから着手するという勉強熱心なところも、Oさんが高く評価した点だ。
■主要用途:専用住宅
■構造:木造 在来工法
■敷地面積:132.78平米
■建築面積:66.10平米
■延床面積:129.20平米
■設計・監理:湘栄建設株式会社
■TEL:0463-61-6236
【関連URL】
※カーセンサーEDGE 2017年11月号(2017年9月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています
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