これまで乗り継いだ軽自動車は6台、“東京スマート軽ライフ”にふさわしいのは……!?【東京スマート軽ライフ】
2016/12/26
自動車ライター、塩見智さんが軽自動車に約1ヵ月間乗り、東京での軽ライフをリポートする「東京スマート軽ライフ」。高級車が溢れる東京での軽ライフを赤裸々につづっていく。今回は6台の東京スマート軽ライフの総括(前編)をお届けする。
狭い東京での軽生活は快適そのものだったが
さかのぼること9ヵ月前の2016年4月、「東京スマート軽ライフ」をスタートさせた。最初にテストしたのはスズキ アルトワークス。以降、ダイハツ タントカスタム、スズキ アルトラパン、ホンダ S660、ダイハツ ウェイク、そしてホンダ N-ONEと、1台につき3週間~1ヵ月にわたって借り出し、東京都内を中心に、仕事にプライベートに使い、テストした。それによってわかったことを報告したい。
まず、物理的に言うと東京の街に軽自動車は非常に適している。東京、特に都心は狭い。幹線道路は整備されているが、市街地に入るとラビリンス。カーナビの案内どおりに走行し、ある角を曲がった途端に無数の歩行者が行き交い、両側に自転車がずらり並んだ駅前の通りに進入してしまい、絶望することもしばしばだ。そんな街に適しているのが小さな車であることは明らか。軽自動車の1.4m未満の全幅と5m未満の最小回転半径は都市部では誇るべき性能と言える。けれど、実際に東京の道路で幅を利かせているのは大型セダン、ミニバン、SUVたちだ。東京が虚栄の街だからというのもあるのだろうが、単純に住民の平均年収が高いから大型車、高級車が多いということなのだろう。
一方で、軽自動車だとつらい面もある。ひとつは加速性能だ。東京は混んでいる。都心の幹線道路は首都高を含め昼間はほとんど混んでいると思っていただいてよい。混んでいるなら動力性能なんて関係ないと思いがちだが、さにあらず。混んでいるとひたすらストップ&ゴーの繰り返しになる。そして混んでいるからこそ皆先を急ぐ。このため、交差点の先頭で信号待ちをしている車は、青になったらわれ先にと勢いよく加速する。2台目以降もそれに続くため、流れを乱さないためにはそこそこ以上の加速力を求められる。少し発進が遅れただけで、ホーンを鳴らされることもしばしば。盆暮れに実家のある岡山周辺を運転すると、その流れの遅さに驚かされるのだが、そのことによって東京のせわしなさに気づくのだ。
この流れに乗るには、ターボじゃない軽自動車だと少々つらい。もちろん、ターボじゃない軽自動車でも流れを乱さないだけの加速をすることは可能だが、毎回、エンジンを唸らせて加速するのはつらい。できることと楽にできることは違う。これは首都圏の自動車専用道路にも言えること。東名高速道路や中央自動車道など、東京から各地に延びている自専道は東京から約100kmの区間まで片側3車線が続く。それらの区間の流れはとても速いため、ターボ車じゃないと少々つらい。
最も気に入った軽自動車は……?
現在新車として売られている軽自動車であれば、東京だけでなく日本中どこだって決定的な不満なく使える……物理的には。登録車に乗っているときよりも周囲から軽く扱われる機会が多かったように思う。典型的なのは割り込み。とにかく割り込まれることが多い。明らかに高級車に割り込まれるなら諦めもつくが、営業車に割り込まれると腹が立つということがこの9ヵ月でわかった。腹の立ち方が高級車のときの2割増しだ。
そのいっぽう、隣に高級車が並ぶとどことなく卑屈になる瞬間があったのを自覚しており、自分の中に軽自動車に対する偏見がまったくないとは言えない。くだらないことなのは間違いないが、正直な気持ちなので包み隠さず報告しておく。東京、特に都心では、本当に軽自動車を見かけない。東京以外の方があらためて路上をチェックしたら軽自動車の少なさに驚くはずだ。
最も気に入った軽自動車はどれかと問われると実は困る。それぞれに思い出深いからだ。アルトワークスは本当に山道を走らせるのが楽しかったし、S660はサイズが小さいだけで、どこをどう見ても、どう乗っても本格的スポーツカーだった。けれど、軽自動車の真骨頂は、限られたサイズで最大限の車内空間を誇るハイトワゴンだと思う。ウェイクまでいくと空間を有効活用する使い方をなかなか想像できないが、タントは絶妙な高さで気に入った。販売台数で度々1位になるのも無理はないと感じさせた。パワーも十分だし、各部の品質も安い登録車より高かった。自分で買うならタントを選ぶと思う。
後編へ続く
【筆者プロフィール】
1972年、岡山県生まれ。自動車雑誌編集部を経て、フリーランスの自動車ライターへ。軽自動車好き。SUV好き。「カーセンサーnet」をはじめ、「GQ Japan」「GOETHE」「webCG」「carview!」「ゴルフダイジェストオンライン」などにて執筆中。
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