自動車ライター、塩見智さんが軽自動車に約1ヵ月間乗り、東京での軽ライフをリポートする「東京スマート軽ライフ」。高級車が溢れる東京での軽ライフを赤裸々につづっていく。今回はタントカスタム編の第3回。

▲静岡県伊東市の川奈ホテルにて。当初、車寄せに停車してみたのだが、後ろからアウディ A8が迫ってきたのでタントカスタムを前へ出す、の図。川奈ホテルゴルフコースを創設したのはホテル―クラでもおなじみの大倉喜八郎男爵。建物は、高島屋日本橋店、帝国ホテル(一部解体済み)、学士会館などを設計した高橋貞太郎の作 ▲静岡県伊東市の川奈ホテルにて。当初、車寄せに停車してみたのだが、後ろからアウディ A8が迫ってきたのでタントカスタムを前へ出す、の図。川奈ホテルゴルフコースを創設したのはホテル―クラでもおなじみの大倉喜八郎男爵。建物は、高島屋日本橋店、帝国ホテル(一部解体済み)、学士会館などを設計した高橋貞太郎の作

走りの質感は一級品

軽自動車はくせになる。「東京スマート軽ライフ」と銘打ち、日々東京を軽自動車で動き回っているわけだが、もちろん、仕事で大きな車に乗ることもある。軽自動車でまったく気を使わず通行している家の近所の狭い道路をたまに大きな車で通る際、思わず「なんなんだこの巨体は!」と愚痴ってしまう。この企画の前には日常的に大きな車に乗っていて、その頃にはこの道路の狭さに文句を言ったりしなかったのに、人間、楽なことには一瞬で慣れてしまうものだ。

それはそうと、1週目に驚き、3週目に入ってもまだその驚きが続いていることがあって、それは走りの質感の高さ。段差を乗り越えた際の衝撃の角がかなり丸まって乗員に伝わる。無理やり言葉で表現するならドシンではなく(軽めの)ドンッという感じか。体感的なボディ剛性が非常に高い。そのボディに支えられ、軽自動車最良クラスの乗り心地を誇る。ホンダ Nシリーズといい勝負じゃないだろうか。三菱 ミラージュ、日産 マーチより良好なんじゃないだろうか。静粛性もかなりレベルが高い。軽自動車特有のあまり心地よくない小排気量3気筒エンジンの音がまったく聞こえないわけではないが、かなりカットされている。

燃料計のセッティングにヒヤリ

さて、ここまでのタントの平均燃費は16km/L前後。軽く小さなアルトワークスの平均燃費が17km/Lだったので、重く大きなモデルにしては健闘しているといえる。燃料タンク容量が30リッターだから一度の給油で480km。実際には430kmも走るとメーター上はギリギリの勝負を展開することになる。その距離にも文句はない。

ただ、燃料計のセッティングに不満がある。残量を示す針の動きが均等ではないのだ。満タンからしばらくは燃料計の針はF(フル)をちょっと超える位置からまったく動かない。ところが、減り始めたかと思うと一気にE(エンプティ)まで突き進むから困ったもの。そのことに気づくのに給油2回分ほどの時間を要した。

▲某日朝、助手席からメーターを撮ってもらう。「航続可能距離0km」のまま結構な距離を走るハメに陥り、肝を冷やした。ちなみにトリップメーターは334.8kmとなっているが、これは給油後にトリップをリセットするのを忘れただけで、この距離で針がゼロになったわけではなく、実際の走行距離は400kmを超えていた ▲某日朝、助手席からメーターを撮ってもらう。「航続可能距離0km」のまま結構な距離を走るハメに陥り、肝を冷やした。ちなみにトリップメーターは334.8kmとなっているが、これは給油後にトリップをリセットするのを忘れただけで、この距離で針がゼロになったわけではなく、実際の走行距離は400kmを超えていた


この傾向は軽自動車に限らず、メーカーによって見られることがある(具体例を思い出せないが)。だが、軽自動車はタンク容量が小さいので、針が動き始めてからの猶予が短い。表示が4分の3以上減った段階で”ちょっとだから”と高速道路に乗ると大変な目に遭う可能性がある。”航続可能0km”と表示させたまま走行する心地悪さといったらない。今後、軽自動車に乗る際は気をつけたいポイントだと学んだ。


【筆者プロフィール】
1972年、岡山県生まれ。自動車雑誌編集部を経て、フリーランスの自動車ライターへ。軽自動車好き。SUV好き。「カーセンサーnet」をはじめ、「GQ Japan」「GOETHE」「webCG」「carview!」「ゴルフダイジェストオンライン」などにて執筆中。

text/塩見智
photo/塩見智