2台のガヤルドが棲む家 + 山本健太郎

オフィスビルをリノベーション。ラグジュアリーな「男の基地」

オフィスビル風の建物とエッジを効かせたボクシーな建造物。見ただけで内部の構造に興味が沸く。そこは、男が憧れる複数の空間が次々に現れる垂涎の「基地」であった。

元オフィスビルのメリットを活かし憧れの世界を凝縮

今回ご紹介する物件は、建築家・山本健太郎さんの作品。ずいぶん前から「ガヤルド2台が収まるガレージ……」と予告されていて、ずっと楽しみにしていた。そしてやっと訪れることができたのだが、まだ一部工事が完了していない部分もあり、まさにできたてホヤホヤの状態で拝見することできた。

千葉県千葉市にあるこのO邸は、リノベーション物件。もともと企業が入っていた3階建てのオフィスビルをOさんが購入し、内装を全面刷新するとともに1階の玄関やガレージ周辺を増築している。そんな建物をベースにしているだけに、各フロアの有効面積が広い。1階から3階まで、覗くたびに取材陣全員から「おおっ」という感嘆の声が上がるほど贅沢で洗練された空間が次々に現れたのだった。

正面から見ると、タイル張りの3階建てオフィスビルと、黒光りするボクシーな建造物が組み合わされている。このガリバリウムで構築された一角が増築された部分だ。ガレージシャッターは開放され、赤いランサー エボリューションが収まっている。この風景だけだと、立派なガレージ+スポーツカーという平凡な印象。しかし、その奥にもうひとつシャッターが。

内部を覗くと、外観からは想像すらしなかった世界が現れた。ブラックのランボルギーニ ガヤルドとオレンジのガヤルド スパイダーが、薄暗いガレージ内で小さなスポットライトを浴びながら静かに佇んでいる。左手に目をやると、そこはOさんが「スタジオ」と呼ぶ音楽スペース。じつはこのガレージは、ライブハウスとしての機能ももっている。スタジオはそのままステージに、2台のガヤルドを表の駐車スペースに移動させれば立派なライブハウスの完成だ。

このガレージとスタジオは、Oさんの希望で玄関から2階へアクセスする際に眺められるように設計されている。改めて玄関からの動線をたどってみると、右手はまるで美術館かハイエンドなショールームのような景色が広がる。とても個人住宅のガレージとは思えないほどだ。

さて、ここで当初から抱いていた素朴な疑問をOさんにぶつけてみた。「どうして1軒の家に2台のガヤルドが?」。Oさんは、「ガヤルド(ブラック)は5年前に私が購入したもので、スパイダーは、わずか1週間違いで家内が購入したものなのです」。お二人が知り合ったのは3年前というから、その時点でどちらもガヤルドオーナーだったというわけだ。ガヤルドが結びつけたご縁。Oさんはアヴェンタドールに狙いをつけているようだが、そんなエピソードがあればガヤルドを手放すわけにはいきませんな……。

取材陣は2階に上がり、さらに驚いた。長い廊下の左側にはジムがあり、右側は広いバスルームとその先にウッドデッキを備えるテラスが。どちらも広いガラスウォールで仕切られているから、いっそう空間の広がりを感じる。さらに3階。なんと広さ50畳もの広大なリビング&ダイニングルーム。グランドピアノとアイランドキッチンが同居していても、なんの違和感もない。」

「この家のコンセプトは?」という質問に、Oさんは、「男の基地です。たとえば所ジョージさんの世田谷ベースのような……」。たしかにまさにどんな男でも1度は憧れた世界が、このO邸にはちりばめられている。スーパーカー、オートバイ、ミュージック。すると山本さんが、「そこに私がラグジュアリーを1滴たらしました」。なるほど、そのエッセンスこそが山本ワールドを構築する秘密だったのだ。

間取り図 | EDGE HOUSE

「O邸・2台のガヤルドが棲む家」
建築家:山本健太郎

tel.03-5788-5313 http://www.ka-design-studio.com/
所在地:千葉県千葉市 主要用途:専用住宅
構造:鉄骨造 敷地面積:224.59㎡ 延床面積:343.2㎡
設計・監理:有限会社Kaデザイン一級建築士事務所

文・菊谷 聡 text / KIKUTANI Satoshi
写真・木村博道 photos / KIMURA Hiromichi

ガレージ | EDGE HOUSE

Oさんが望んだ「男の基地」とは具体的にはクルマ、オートバイ、スタジオ。それがこの空間に凝縮されている。こんなガレージを所有していたら、歳をとっているヒマはない。

玄関 | EDGE HOUSE

玄関を入ると右手にはスタジオとガレージが見える。初めて訪れたゲストで、ここを素通りする人はまずいないだろう

2階 ジム・浴室 | EDGE HOUSE

2階。手前はジムで奥の丸い物体(じつはバスタブ!)が置かれているスペースは浴室。現在、その先にルーフバルコニーを製作中

3階 リビング&ダイニング | EDGE HOUSE

3階は、なんと50畳の広さをもつリビング&ダイニングルーム。1階や2階と異なり、白いフロアとしてプライベート感を強調している