電動ハードトップモデルを搭載した第2のロードスター

日本の誇る軽量オープンカー、マツダロードスター。1989年の初代(ユーノスロードスター)は、国内のみならず海外でも好評を博し、当時市場にほとんど存在しなかった2シーターオープンが、北米や欧州で次々と復活するきっかけとなりました。2000年には世界で最も多く生産された2人乗り小型オープンスポーツカーとして、ギネスブックによる認定を受けています。

歴代ロードスターは、代々幌型のトップを採用してきました。2005-2006年日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した現行のNC型もまた、2種類のカラーバリエーションをもつソフトトップを採用しています。しかし近年では、全世界的にソフトトップのオープンカーは亜流となりつつあります。メルセデス・ベンツSLKクラス、プジョー206/307CC、ルノーメガーヌグラスルーフカブリオレなど、電動開閉式のハードトップをもつ“クーペカブリオレ”が一般的となりました。

クーペカブリオレのメリットは、オープンとクーペという2つのスタイルを楽しめること、電動で開閉できるためオープン(クローズ)する時の手間がかからないことなどが挙げられます。半面、重量がかさむなどのデメリットもあるのですが、多くのユーザーはクーペカブリオレの使い勝手の良さ、汎用性の高さを支持しているといえるでしょう。
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この流れに乗り遅れまいと、2006年8月にロードスターの電動ハードトップモデルが登場しました。「マツダ ロードスター パワーリトラクタブルハードトップ(RHT)」というなんとも長い車名のモデルで、世界最速となる約12秒でルーフを開閉します。2008年12月に行われたマイナーチェンジでも引き続きラインナップされており、ソフトトップタイプをしのぐ売れ行きを見せているようです。

登場時の新車価格は240万~280万円。2Lの直4DOHCエンジンを搭載し、グレードによって5速または6速MT(マイナーチェンジ後は6速のみ)か6速ATを組み合わせます。駆動はFR。最高出力はMT車で170ps、AT車で166psを発揮し、最大トルクは19.3kg-mに達します。このあたりはソフトトップタイプのロードスターと大きな違いはありません。

最大の特徴は重量とトランクスペース。ハードトップで、かつ電動ということで、かなりの重量増が予想されるところですが、樹脂製の軽量ルーフを採用するとともにリアデッキなどの設計変更によって、37kg増(1130~1140kg)に抑えられています。そして分割式のルーフはソフトトップ同様、シートバックスペースに収納。トランク容量は同じサイズをキープしているのです。

軽快な走行性能も、もちろん健在。じっくり乗り比べなければ、ソフトトップとの違いは感じられないレベルです。開口部が開いたことを補うために剛性を高め、ホイールベース間にルーフを収納することで前後重量配分を50:50に近づけ、ダンパーを50種類以上から選び抜くなど、その走りへのこだわりは尋常ではありません。まさに「人馬一体」というキャッチフレーズに違わぬ走りが楽しめます。
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快適性という観点では、クローズ時のロードノイズがやはりソフトトップとは段違いで、クーペ並みの静粛性を確保できているのは魅力です。オープン時の風の巻き込みは、90km/hくらいまではほとんど気にならないレベル。また、開閉時間がわずか12秒程度ということは、信号待ちなどでも座席に座ったまま気軽に開閉できるということ。雨がぽつぽつ降ってきても、赤信号の合間にサッと屋根を閉じられるのは実に便利です。

新車販売ではソフトトップをはるかに凌ぐ売れ行きを見せているRHTですが、中古車市場では流通量はあまり多くありません。原稿執筆時点でカーセンサーnetに掲載されている現行型ロードスターは159台。そのうちRHTは46台。発売期間が短いことを考慮しても、かなり少なめ。それだけ人気モデルだといえそうです。

価格は40台が200万円以上と、人気車らしい高値安定相場。それでも100万円台の4台は走行距離が3万km以内と、良好なコンディションが期待できる中古車ばかり。なかにはマツダディーラーの認定中古車も存在しています。

特筆すべきは、46台すべてが未修復歴車というところ。オープンカーはスポーティに走るユーザーが多いイメージですが、ロードスターは団塊の世代を中心とした中高年にも人気の車。大人な走りをするユーザーが増えたことで、コンディションのいい車両が増加しているようです。

梅雨から夏に向かうこの季節。突然の雨はオープンカーにとって大敵です。しかしロードスターRHTなら、屋根の開閉はラクラク。普段はクーペのように使えるので、使い勝手もバッチリです。夏のバカンスを予定しているあなた、お店へ足を運んで実物を確かめてみてはいかがでしょうか。気になった人は下の検索窓に「ロードスター RHT」と入れて検索してみてください。


Text/渡瀬基樹