▲販売が好調だというマツダ CX-5およびCX-8。今回、両モデルともに一部改良されることとなった▲販売が好調だというマツダ CX-5およびCX-8。今回、両モデルともに一部改良されることとなった

新たなパワートレインが追加された

2017年に発売されたCX-5とCX-8だが、今回一部改良モデルが登場した。今回はパワートレインの異なる複数のモデルに試乗する機会を得た。

試乗はクローズドのテストコースである。

高速でのレーンチェンジを行ったり、タイトなカーブが連続するコースを走行したりと、一般道では試すことができないテストを行った。

どう「走りのアップデート」がなされたのかお伝えしたい。

▲クローズドコースでは、一般道に比べてより負荷の高い状態でテストすることができる。走りの進化を体感するには良いコンディションだ▲クローズドコースでは、一般道に比べてより負荷の高い状態でテストすることができる。走りの進化を体感するには良いコンディションだ

短期間で改良を繰り返すCX-5

初めはCX-5である。

今年の2月にも改良を実施したので、2017年に登場してから2年も経たずに2回目の改良となる。

今回の最も大きな変更点は、2.5Lのターボエンジン搭載モデルの追加だ。

このユニットは直列4気筒DOHCであるが、42.8kgf・mという4L NAのガソリンエンジンを超えるトルクをもたらしている。

開発主査は「優雅でパワフルな余裕のある走りができる」と力強く述べていた。

現行モデルのCX-5 XDに搭載しているディーゼルエンジンは、さらに上をいくトルクである。

ガソリンターボモデルは、そのあたりのパフォーマンスと比べてどのように味付けしているのか楽しみである。

そしてもう1台、よりキビキビとスポーティに楽しめそうな XDのMTモデルも新たに加わったので、こちらにも合わせて試乗する。

まずはガソリンターボモデルのステアリングを握る。試乗車は25Tと呼ばれる6ATのAWD仕様だ。

エンジンボタンを押して始動するとアイドリングは至って静かである。

特に変わった様子はない。ゆっくりと本コースへのアプローチを走らせる。

6ATはギアレシオが離れているが、エンジンの粘り特性で心地よくシフトアップを繰り返す。

時速50kmくらいの速度までは、トルクもリニアで扱いやすい。

このときはアクセルもゆっくり踏んでいたので、ターボが発揮する大きなトルクはまだ感じられない。

そこから高速周回路に速度を合わせるため、強めにアクセルを踏み込み加速する。

4気筒特有の振動が増してノイズも大きくなる。

ターボ特有の音は感じられないし、大きなトルク変動もない。

ターボエンジンのモデルの中では、扱いやすい部類である。

一方で出力は優雅でパワフルという感じではない。

重さが1.7トン近いボディと、このシャシーでは出力の高いガソリンユニットをもっても、高級感を演出することは難しいように思えた。

価格も25TはXDと大きくは変わらない。

25Tの付加価値と存在感が不安定なように思えた。

▲加速時の大きなトルク変動もなく、ターボ車の中では扱いやすいモデルだ▲加速時の大きなトルク変動もなく、ターボ車の中では扱いやすいモデルだ

次に6MT仕様のXDに試乗する。パワフルなトルクを意のままに操れて、サスペンション性能がぐっと向上したCX-5であれば、スポーツドライビングを楽しめるに違いない。

1速に入れ少々荒めにクラッチをつないでも、発進は穏やかだ。

ディーゼルらしく燃焼が安定している証しである。

大きなトルクの加速を味わいながら速度を上げ、どんどんシフトアップする。やはりこれは面白い。

追い越しなどで加速したいときには、シフトダウンすることで1.7トン近いボディを軽やかに加速させる。

しかし、一点だけ苦言を言えばシフトチェンジのときにセンターコンソールBOXに腕が当たりやすいことである。

ATのレイアウトをメインに考えていてMTとしては考えたレイアウトではなかった点がとても惜しい。

▲6MTとディーゼルの組み合わせはやはり面白い。重いボディを軽やかに操ることができる▲6MTとディーゼルの組み合わせはやはり面白い。重いボディを軽やかに操ることができる
▲レイアウトはATメインで考えられているのだろう。MTではシフトチェンジの際に腕がコンソールBOXに当たる▲レイアウトはATメインで考えられているのだろう。MTではシフトチェンジの際に腕がコンソールBOXに当たる

さすがは国内フラッグシップSUV

続いて、国内ではフラッグシップSUVとなるCX-8だ。

CX-5同様にガソリンターボモデルが加わった。

早速エンジンを始動してDレンジに入れる。CX-5に比べて静粛性が高い。

CX-5の同じエンジンを搭載したモデルよりも200kgほど重いが、走り出しはジェントルで高級感ある落ち着いた加速だ。

加速時の静粛性もCX-5とは比較にならないほど良好だ。

サスペンションの動き具合もしっとりしており、Bピラーから後ろのボディ剛性が全く違う。

さすがはフラッグシップSUV、満足度は高い。

▲新たなプラットフォームを採用しサスペンションの改良などを加えたことでオンロード走行時の静粛性が向上している▲新たなプラットフォームを採用しサスペンションの改良などを加えたことでオンロード走行時の静粛性が向上している

まるで技量が向上したような錯覚に!?

CX-5、CX-8両モデルともに、「G-ベクタリング コントロール プラス(GVC Plus)」が搭載された。

Gベクタリングコントロール(GVC)とは、『車の速度とステアリングの舵角操作に応じてエンジンのトルク制御を行い、デバイスで不快感を克服する』機能だ。

今回の“プラス”では、エンジンの細かなコントロールに加えて、ブレーキも制御することで、ドライバーをはじめ同乗者がキャビン内で今まで以上に快適に過ごせるようになるという。

初めてGVCが搭載されたプロトタイプに試乗したとき、アクセルを踏まない状態で発揮しないことを指摘したが、今回しっかりと改良されていた。

絶妙な加減でブレーキをかけ、車線変更時の揺れ返しを最小限にとどめる。

まるで職人のような技だ。

高速の車線変更のたびに頭が振られるような運転をする旦那さんでも、GVC Plusを搭載した車ならばかなりマイルドなドライビングとなって、技量が向上したと錯覚するだろう。

安全運転につながることだけではなく、さらには旦那さんの運転に不満のある奥様にとっても嬉しい装置となるはずだ。

▲試乗したテスト車両にはGVC Plusをオンオフできるスイッチが付いていた▲試乗したテスト車両にはGVC Plusをオンオフできるスイッチが付いていた
▲GVC Plusがオンの状態では、ワインディングでの安定感が増す。ステアリングを切りすぎたときに行うような修正舵を取ることが少なくなる▲GVC Plusがオンの状態では、ワインディングでの安定感が増す。ステアリングを切りすぎたときに行うような修正舵を取ることが少なくなる
▲人によってはおせっかいな制御だと感じるかもしれないが、「車を操る楽しみをもっと大きくするための補助的な制御です」と開発担当者は話してくれた▲人によってはおせっかいな制御だと感じるかもしれないが、「車を操る楽しみをもっと大きくするための補助的な制御です」と開発担当者は話してくれた
text/松本英雄
photo/篠原晃一

【SPECIFICATIONS】
■グレード:CX-5 25T Exclusive Mode ■乗車定員:5名
■エンジン種類:直4DOHC+ターボ ■総排気量:2488cc
■最高出力:169(230)/4250 [kW(ps)/rpm]
■最大トルク:420(42.8)/2000[N・m(kgf・m)/rpm]
■駆動方式:4WD ■トランスミッション:6AT
■全長x全幅x全高:4545 x 1840 x 1690(mm) ■ホイールベース:2700mm
■ガソリン種類/容量:レギュラー/58(L)
■WLTCモード燃費:12.2(km/L)
■車両価格:387.72万円(税込)

■グレード:CX-5 XD L Package ■乗車定員:5名
■エンジン種類:直4DOHC+ターボ ■総排気量:2188cc
■最高出力:140(190)/4500 [kW(ps)/rpm]
■最大トルク:450(45.9)/2000[N・m(kgf・m)/rpm]
■駆動方式:4WD ■トランスミッション:6MT
■全長x全幅x全高:4545 x 1840 x 1690(mm) ■ホイールベース:2700mm
■ガソリン種類/容量:軽油/58(L)
■WLTCモード燃費:18.6(km/L)
■車両価格:355.86万円(税込)

■グレード:CX-8 25T L Package ■乗車定員:7名
■エンジン種類:直4DOHC+ターボ ■総排気量:2488cc
■最高出力:169(230)/4250 [kW(ps)/rpm]
■最大トルク:420(42.8)/2000[N・m(kgf・m)/rpm]
■駆動方式:4WD ■トランスミッション:6AT
■全長x全幅x全高:4900 x 1840 x 1730(mm) ■ホイールベース:2930mm
■ガソリン種類/容量:レギュラー/74(L)
■WLTCモード燃費:11.6(km/L)
■車両価格:424.44万円(税込)