ホンダ N-ONE|ニューモデル試乗

この顔を思いっきり楽しもう! 外寸や排気量など、様々な規格による制約に辟易とするのではなく、この車を好きで選んだと楽しくなれるような、N-ONEの笑顔。心ウキウキだ

この顔を思いっきり楽しもう!

新時代のNは、経済性&楽個性を目指す

ユニークな“顔”を持った車である。大きな丸いヘッドライトをラジエターグリルを兼ねた凹形のモチーフでつなぐデザインは、ホンダが1967年に初めて発売した実用型の乗用車“N360”で用いた手法の復刻ともいえる。

実用性が高く、当時の軽自動車の中では高出力で、価格が安いという特徴がウケて、大ヒット作となった同車に込められたホンダの思想を、現代のニーズの下で再構築し、新時代の軽自動車とは何かという課題への解となろうとした開発陣の思いを表現する、この懐かしくもユニークな表情なのである。

ホンダがN-ONEに込めた新時代への思いとは、まず第一にさらなる燃費改善による経済性能の向上にある。N-ONEに先だって発売されたN-BOXから搭載が開始された新開発エンジンは、今やホンダのお家芸とも言える可変バルブタイミングシステム・VTECとDOHCを組み合わせ、広い回転域における空気充填効率の改善を実現した。

平たく言うと、アイドリングから最高回転までスムースな吸気の流れを作ってやることによって、より多くの空気を取り込む仕組みを実現したというわけだ。そのことによって、各シリンダーに従来より燃料を多めに噴射することができ、発生トルクが増大するため、低めの回転域でも十分なパワーが取り出せるわけだ。

エンジンは、回転を上げると猛烈に内部損失が大きくなり著しく効率が悪化する。低回転でも余裕のパワーが取り出せる意義は大きい。従来型よりロングストローク型とし、径の大きなクランクシャフトを使用することになったことも、この狙いを後押ししている。

また、シリンダーブロックを薄肉化したことは、従来型比15%以上の軽量化以上に、冷間始動時の燃費改善に大きく寄与する。エンジンが常用温度に達するまでの時間が短縮でき、これはすなわち冷えたエンジンを暖めるために消費されてしまう燃料の量を節約するということなのだ。

現在用いられているJC08モードという燃費評価基準には、冷間始動時における燃費という項目が加味されているため、この効果は大いに反映されている。仕様によって異なるが、最大27.0km/Lという燃費は、決して空力的にすぐれているとは言えないボディ形状と、レギュラーガソリンとの組み合わせにおいて十分に評価できる値である。

軽ではなく、N-ONEを選んだという満足感

しかしながら、全長3.4m以下、全幅1.48m以下と定められた軽自動車規格めいっぱいに描かれた四角い枠の中で実現できる使い勝手や走行性能には、新しい驚きは感じられない。この枠を使い切るコンセプトは、1993年に登場したスズキ・ワゴンRで確立され、それ以降、スズキも含めた全てのメーカーが伸ばすことも縮めることもできないまま、車内の細かい工夫や意匠の変更によって目新しさを競っているのが現状だ。

走行性能についても、このタイプの軽自動車然としたものをイメージしてもらえれば、ほぼそれに準ずると思っていい。物理の法則は、超えられない。

だからこそ、存在感を際立たせるこのユニークなフロントマスクには価値がある。機能が生んだ表情ではなく、言わば書かれた顔ではあるが、ホンダに乗っているのだという自他への認知も含めて、軽自動車の新しい楽しみ方のひとつとして選択の意義はある。

ホンダの純正アクセサリーを製作するホンダアクセスからは、その新しい楽しみの可能性を拡げる様々なアイテムが用意されている。ぜひ積極的に楽しんでほしい。ただし、うっかりすると、小型乗用車を超えるほどの価格に達してしまうことに注意すべき、という心配は、老婆心だろうか。


吸気効率、冷間始動時の熱効率などが改善されたアースドリームステクノロジーの一端を担う新型エンジン。エンジン単体の燃費は大きく向上した

吸気効率、冷間始動時の熱効率などが改善されたアースドリームステクノロジーの一端を担う新型エンジン。エンジン単体の燃費は大きく向上した

2代目フィット以降、ホンダの小型車のシートは座面前端の張りが強い。長時間運転していると太ももの裏側に圧迫感が生まれる場合も。購入前に十分チェックを

2代目フィット以降、ホンダの小型車のシートは座面前端の張りが強い。長時間運転していると太ももの裏側に圧迫感が生まれる場合も。購入前に十分チェックを

デザインで遊び、楽しもうというコンセプトでありながら、ETCユニットの装着はこのような感じ。取り付け位置をディーラーで相談してみよう

デザインで遊び、楽しもうというコンセプトでありながら、ETCユニットの装着はこのような感じ。取り付け位置をディーラーで相談してみよう

SPECIFICATIONS

グレード G ツアラー プレミアム プレミアムツアラーLパッケージ2トーンカラースタイル
駆動方式 FF 4WD
トランスミッション CVT
全長×全幅×全高(mm) 3395×1475×1610 3395×1475×1630
ホイールベース(mm) 2520
車両重量(kg) 840 850 900 920
乗車定員(人) 4
エンジン種類 直3DOHC 直3DOHC+ターボ 直3DOHC 直3DOHC+ターボ
総排気量(cc) 658
最高出力[kW(ps)rpm] 43(58)/7300 47(64)/6000 43(58)/7300 47(64)/6000
最大トルク[N・m(kg-m)/rpm] 65(6.6)/3500 104(10.6)/2600 65(6.6)/3500 104(10.6)/2600
JC08モード燃費(km/L) 27.0 23.2 25.0 20.8
ガソリン種類/容量(L) レギュラー/35 レギュラー/30
車両本体価格(万円) 115.0 123.0 148.0 170.775
Tester/山口宗久 Photo/CS Net