▲日産車全モデルに乗れる試乗会で、私が一番感動したのはGT-RでもフェアレディZでもリーフでもなく、オーテックモデルだった▲日産車全モデルに乗れる試乗会で、私が一番感動したのはGT-RでもフェアレディZでもリーフでもなく、オーテックモデルだった

こだわりしか感じない2台をピックアップ

千葉県・東京ドイツ村にて開催された日産のフルラインナップ試乗会。

私が特に印象に残ったのは、スポーツモデルでもなく、電気自動車でもなく、オーテックモデルだった。

具体的には、ノート e-POWER AUTECHとセレナ e-POWER AUTECHの2車種。これが、とにかく“こだわり”を感じ取れるモデルだったのだ。

まず、見た目の雰囲気がどちらも上品。好感度が増す加飾がなされている。

ボディカラーは、ノートが「オーロラフレアブルーパール」という鮮やかな青。セレナは「シャイニングブルー」でどちらもパールメタリックを使った鮮やかなブルーだった。標準モデルでは販売されていない2色だ。

そして一番の注目は、メッキを施したパーツたち。フロントグリルをはじめ、随所に使用し、高級感を演出しているのだ。

標準車に比べ、とにかく凝ったデザインである。専用の17インチホイールも特別感があっていい。

このような“ちょっとの工夫”で、大きな存在感を生み出すオーテックの仕事は、以前から興味深かった。しかし、こういった場では参考出品ばかりで、なかなか試乗する機会はなかった。そのため、期待値高く試乗させてもらった。

▲オーテック(オーテックジャパン)とは、日産自動車グループの一社であり、カスタムカー、福祉車両など、日産の特装車事業などを手がけている。身近なところだと、画像の「ライダー」シリーズなど ▲オーテック(オーテックジャパン)とは、日産自動車グループの一社であり、カスタムカーや福祉車両など、日産の特装車事業などを手がけている。身近なところだと、画像の「ライダー」シリーズなど

セレナ e-POWER AUTECH

まずはセレナから試乗。人工スエードをシートやドアトリムに使い、オーナーの満足感を高めるインテリアになっていた。人工スエードはキルティング加工してソフトなタッチにしている。芸が細かい。

走り出して真っ先に感じた違いは、その乗り心地である。セレナのプラットフォームは、正直いって「最新鋭の良いもの」ではない。標準車ではどうしても、剛性の低さが浮き彫りになる乗り心地だ。(e-POWERモデルでは幾分良好になっていたが)

しかし、ボディ補強がなされた セレナ e-POWER AUTECHは、2クラス上の乗り心地に感じたのだ。

静粛性は、標準車のe-POWERと同様。

タイヤはスポーティなミシュランパイロットスポーツ。これはヨレが少ないハードなタイヤで、通常、装着するとシャシーの方が負けそうになるはずなのだ。それなのに、乗り心地が標準よりもずっと良い。スタビリティも高い。

ボディ補強というのは、これほどまで乗り心地に影響するのだと痛感した。

このパフォーマンスでこの価格なら「お値打ち」だと感じる。

▲試乗したセレナ e-POWER AUTECH ▲試乗したセレナ e-POWER AUTECH
▲シートは適度なホールド感。ロングドライブでは疲労を軽減してくれるだろう ▲シートは適度なホールド感。ロングドライブでは疲労を軽減してくれるだろう

ノートe-POWER AUTECH SPORTS SPEC

続いてノートに試乗。こちらも人工スエードのシート。ホールド性が良好だった。

走らせると、セレナよりもさらに静粛性が高いと感じた。そして乗り心地がすこぶる良い。サスペンションが低速の小さな入力から、かなり丁寧に動いている。

こちらも、プラットフォームの強化が顕著にでている。しかも、セレナよりコンパクトな分、重量増加を最小限に抑えたうえで、ボディ補強がなされているのだ。

専用のスプリングとショックアブソーバーは、スポーティとコンフォートの中間を満たすようなセッティングだった。16インチタイヤとの相性もとても良い。

そして、これまた専用にチューニングされたコンピューターが、メリハリある加速を演出している。ちなみにシャシーコンピューター系のチューニングは、ノートNISMOと共用のものだそうだ。

パワーステアリングのセッティングもあえて重さを携えていて、高級感の演出と安心感に一役買っていた。このステアリング設定は、ノート e-POWER AUTECH SPORTS SPEC専用だそうだ。

2台はどちらも、価格以上のバリューを感じるモデルだった。見た目が際立つが、性能への力の入れようも素晴らしい。世界中の車両開発の経験を生かした少数精鋭のチームが、このような日産のスペシャルモデルを支えているのだろう。だからこそ、方向性が定まったバランスの取れたモデルを世に中に送り出すことができるのだ。

▲試乗したノート e-POWER AUTECH ▲試乗したノート e-POWER AUTECH SPORTS SPEC
▲目を引くメッキグリル。日産エンブレムにドット部分の影が映り込まないよう、綿密に設計されているそうだ。細かすぎる…… ▲目を引くメッキグリル。日産エンブレムにドット部分の影が映り込まないよう、綿密に設計されているそうだ。細かすぎる……
text/松本英雄
photo/編集部、日産

【SPECIFICATIONS】
■車種・グレード:セレナ e-POWER AUTECH ■乗車定員:7名
■エンジン種類:直3DOHC(発電用)+モーター(駆動用) ■総排気量:1198cc
■最高出力(モーター):100(136) [kW(PS)]
■最大トルク(モーター):320(32.6) [N・m(kgf・m)]
■駆動方式:FF ■トランスミッション:―
■全長×全幅×全高:4770×1740×1865(mm) ■ホイールベース:2860mm
■車両価格:382.104万円(税込)

■車種・グレード:ノート e-POWER AUTECH SPORTS SPEC ■乗車定員:5名
■エンジン種類:直3DOHC(発電用)+モーター(駆動用)■総排気量:1198cc
■最高出力(モーター):58kW(79PS)/6000rpm[kW(ps)/rpm]
■最大トルク(モーター):106N・m(10.8kgf・m)/4400rpm[N・m(kgf・m)/rpm]
■駆動方式:FF ■トランスミッション:―
■全長x全幅x全高:4100×1695×1520(mm) ■ホイールベース:2600mm
■車両価格:245.376万円(税込)