▲雪上ならぬ、氷上試乗会! 凍った湖の上で日産車の走行性能を試してきた ▲雪上ならぬ、氷上試乗会! 凍った湖の上で日産車の走行性能を試してきた

凍った湖の上で行われる試乗会

毎年恒例の日産フルラインナップ氷上試乗会が開催された。今年は、昨年に比べて氷も申し分のない厚さを保ち、代表的なモデルをきちんと試す機会を得た。

▲氷上に作られた試乗コース。去年は暖冬で叶わなかった ▲氷上に作られた試乗コース。去年は暖冬で叶わなかった

NISSAN GT-R、フェアレディZに、コンパクトSUVのジューク NISMO RSといった試乗ラインナップの中、ひときわ印象深かったのは、ノート e-POWERと日産 リーフであった。

電気グループであるこの2車種は、正直、極めて地味な存在である。一方で、電気自動車(以下EV)が滑りやすい氷の上をどう走るのか、私自身に興味があったことも事実だ。必要に応じたトルクを素早く発生させることが可能なモーターの場合、滑りやすい路面では逆にグリップさせることが難しいのでは? と考えていたのだ。

例えば、我々が氷の上を歩くとき、恐る恐るゆっくりと足を運ぶだろう。力を入れすぎては滑るからだ。車も内燃機関のように緩やかに出力が立ち上がれば、人間と同様にゆっくり歩くようなコントロールが可能となる。

しかし、モーターはアクセルを踏めば瞬時に最大トルクを得られる素質を持っている。EVのトルクは安定しているのでコントロール自体はしやすいはずだが、アクセルを開ける速さと量を違和感なく緩やかに細かく制御することが意外と難しいのだ。これは日産がリーフで苦労した制御の一つで、そのあたりには最も知見があるはずなのだ。だからこそ制御の細かさが顕著に表れる氷上試乗は、願ってもない機会だった。

▲売れに売れているノート e-POWERだが、氷上での走行性能はいかに? ▲売れに売れているノート e-POWERだが、氷上での走行性能はいかに?

凍った湖の上で、いざ試乗!

氷結した路面からノートe-POWERに乗り込み、おまんじゅうのようなシフトノブをDレンジに入れてスタート。

さっそくアクセルをぐっと踏み込み加速しようとしたが、路面が滑るため、制御されて思った以上に前に進まない。気を取り直して、氷の上を歩くようにアクセルをそっと調整しながら発進してみた。これがなかなか上手く速度を乗せることができる。

横置きFF車の弱点でもあるトラクションも良好だ。加えて、e-POWERは特にバランスが良い。また、独特のエンジンブレーキのような回生ブレーキが確実に速度を落とすので、フットブレーキでコントロールするよりも安心して減速ができる。まるで急坂を滑らせずトラクションを生むヒルディセントコントロールのような働きだ。

そーっとステアリングを切り込んでみた。滑ったらアクセルを戻し回復を待って、またアクセルを開けるという動作を繰り返す。ゆっくりでも、思った以上に曲がっていく。決して焦ってステアリングを大きく切り込んだりアクセルを余計に踏んだりしてはいけない。たとえアクセルを開けて滑った状況になっても動力は伝わらないからだ。スタビリティプログラムが一生懸命に路面を捉えるタイミングを見計らっているのだ。

▲期待以上の走りを見せてくれたノートe-POWER ▲期待以上の走りを見せてくれたノートe-POWER

これだけでも、EVの安定したトルク特性が的確な制御を可能にしていることが理解できたが、さらに分かりやすいのがリーフである。ノートe-POWERより、さらに路面とコンタクトをとり、積極的に捉えるような働きをして方向を変えるのだ。

今まで滑っていたのに、一瞬のグリップも逃さない。現実的ではないが、コツを掴むと面白いように曲がり、8の字を描いた走行でもドリフトでターンを誘発させることが可能なほどだ。

これはとても面白い。もっと練習したくなる。私は、すべての試乗時間を8の字走行に費やしてしまった。

▲すっかり夢中になってしまったリーフ試乗 ▲すっかり夢中になってしまったリーフ試乗

滑りやすい氷上での試乗は、出力が安定しているEVならではの無理のない走行だった。車が、焦らず対処するようにとドライバーに呼びかけているような印象である。これは進化が期待できる内容だけに、また来年が楽しみだ。

▲会場となった長野県女神湖。来年も厚い氷が張ってくれることを願う ▲会場となった長野県女神湖。来年も厚い氷が張ってくれることを願う
text/松本英雄
photo/尾形和美