【試乗】ベントレー コンチネンタルGTコンバーチブル|エレガントさが増した近代ベントレーらしい1台
カテゴリー: ベントレーの試乗レポート
タグ: ベントレー / コンチネンタルGTコンバーチブル / 松本英雄
2020/04/11
2019年、創立100周年を迎えたベントレー
ベントレーと聞くとどんなイメージだろうか?
“弩級の高級車”には間違いないと思うが、そのブランド力と存在感抜群デザインには少々の威圧感があり、肩で風を切って走るイメージがないだろうか。
そのようなイメージをおもちの方は、この瞬間から拭っていただきたい。
3代目となったコンチネンタルGTから特に、ベントレーは“エレガントさ”に拍車がかかっている。
存在感あるフロントグリルこそ伝統的なデザインを踏襲しているが、位置はヘッドライトより下方にセット。これはスポーティさを際立たせるための処理だろう。エンジンフードを押し下げるフォルムにすることにより、繊細さも見いだしている。
今回は、こうして“エレガントさ”を加速させた「コンチネンタルGT」でも、よりラグジュアリーさを感じる「コンバーチブル」に試乗した。感想をお伝えしたい。
このコンチネンタルを見て、クーペをデザインしたのが先かコンバーチブルが先かと尋ねられれば、間違いなくコンバーチブルがあってのクーペと答えたい。
なぜならば、クーペから派生したコンバーチブルあるいはロードスターはバランスが崩れる場合が多い。
例に出すと穏やかではないので割愛するが、この場合は明かにAピラーからクオーター部分までの流れがスマートで、クーペよりも美しい幌のスタイリングを作りあげている。明らかに先代のコンバーチブルより、スタイリッシュなコンシャスへと変化がある。
吟味された素材を使ったキャビンの調度品は繊細で、トラディショナルな装いを感じさせながらもクラシックモーターボートをほうふつさせるクラスターが“いつの時代も変わらぬベントレー”を教えてくれるようだ。
スイスの時計メーカー「Breitling(ブライトリング)」のナビタイマーを思わせる3連の計器類も、ベントレー用に昔から取り付けられていたモチーフのようにぴったりである。
エクステリアやインテリアの話が長くなってしまったが、試乗レポートに移ろう。
シートポジションは少々後ろにし、ゆったりとした雰囲気で腰を下ろした。
W型の12気筒は過去3代に採用してきただけあり、静粛性が一段と向上している。ホテルの車寄せから発進だ。大きなトルクは非常に扱いやすく、優雅さを象徴する。
国会議事堂周辺の広い道でグッとアクセルを踏むと、2トンを超える車重に十分に力をためて余裕の走りを見せてくれた。
いつでも加速できる状態でスタンバイである。車に力をためるインパルジョンの蓄えがあるほど、意のままのドライビングが可能となる。
国道246の赤坂見附・立体交差のカーブは、上って下るコーナーでトレースがしにくい道だ。特に下りの右車線は、切り増しせずにスムーズなコーナリングを行うのは道と車の慣れを要すところだが……、大きいボディでもピタリとトレースできた。
シンプルに乗りやすいのである。これはパッセンジャーも気持ちが良いに違いない。そしてドライバーは、運転がうまくなったように感じるはずだ。
総合的な乗り心地は、クーペと変わらないフィールである。都心部を走る車としてはもちろん申し分ないが、これだけの性能は、やはり郊外と高速道路、そして長距離で試してみたい。
かつてベントレーは、英国から南仏まで素晴らしいドライブと日差しを求めるエグゼクティブな人々が満足するモデルを目指し、車を作っていた。
今でもそれがコンチネンタル、すなわち“大陸仕様”のモデルということだ。
南仏とまではいかないが、日本の高速道路もロングドライブに適してきた。今回のように短い時間でも“優雅なひととき”を経験させてくれるベントレー。今度はぜひ、ロングドライブで試してみたい。
もちろん、そのときは気持ちにもいつも以上に余裕が生まれることを忘れてはならない。
自動車テクノロジーライター
松本英雄
自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。
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