roma▲新世代のデザイン言語を反映させ、ラインナップのなかった新ジャンルのグランドツアラーとして登場。優雅でなめらかな走りながらも、スイッチひとつでレーシングマシンへと変貌する。

普段使いもできる、初めてのフェラーリにうってつけの柔軟さ

フェラーリの車名は、伝統的に排気量や気筒数などそのモデルにちなんだ数字と車形を表すアルファベットが組み合わされ、そこに様々なサブネームが添えられていることが多い。例えば、フェラーリ F8トリブートは、フェラーリの8気筒モデルを自ら記念するという意味が込められた名前。フラッグシップの812GTSならば、800馬力の12気筒、グラントゥーリズモのスパイダーという具合だ。

ところが最近、カリフォルニア、ポルトフィーノのように、地名のみというパターンも出てきた。地名も以前は360モデナや550マラネロのように、数字(&アルファベット)に添えられているのが常で、地名のみのパターンは新しい。

そもそも数字やアルファベットのない名前自体がフェラーリの場合は珍しくて、過去の有名なところではモンディアルやテスタロッサ、エンツォ・フェラーリ、ラ・フェラーリが思い浮かぶ程度だ。

カリフォルニアやポルトフィーノのようにとても分かりやすい名前を使い始めた背景には、生粋のフェラリスタ(=ロイヤルカスタマー)以外にもマーケットを見いだそうとしたからだと思う。モデナやマラネロ、フィオラーノは好きモノにしかわからない地名だ(フェラーリファンなら小躍りする名前だが)。そうじゃないユーザーにも親しんでもらえ、しかもフェラーリらしい堂々とした、聞こえのいい名前をつける戦略で、ユーザー層の拡大を計った。

実際、名車スパイダー(250GTカリフォルニア)にちなんだ2ドアRHT(リトラクタブルハードトップ)のカリフォルニアを出した際には、ドイツ製高性能ブランドからの乗り替え組も多かったという。分かりやすい名前のモデルがマラネロの門を広げる役割を果たしたと言っていい。

2019年11月に発表した、新たな2ドアのベルリネッタもまた、とても分かりやすい名前で、イタリアの首都にちなんでローマと名づけられた。首都の名前をそのまま使う、フェラーリにしかできない芸当だ。
 

roma▲ディフューザーなどのエアロパーツは、エレガントさを際立たせるため、ボディに溶け込む控えめなデザインとなっている
roma▲可変リアウイングは、ボディラインを崩さないようリアウインドウ後部に設置。サイズや動作を最適化することでリアのトラクションを増幅し、0-100km/hは3.4秒を誇る

一見してシンプルで美しいスタイリングで、現代のスーパースポーツカーがその性能と引き換えに失いつつあったエレガンスをもう一度取り戻したかのようである。

半世紀以上も前のフェラーリ・ロードカーといえば、レースでの強くて真っ赤なイメージとは裏腹に、地味なカラーリングの美しいベルリネッタGTが主流だった。赤いフェラーリのロードカーがもてはやされ始めたのは80年代以降のこと。さらに21世紀になってからは、軽量化やエアロダイナミクスを徹底的に追求した結果、どんどん華々しいデザインになっていく。

レーシングカーじゃないんだから、もっと落ち着いたデザインの跳ね馬に、周りを気にすることなく毎日乗りたいものだ。そんな声が高まった結果、ローマは生まれたのである。

ロングノーズ&ショートデッキの典型的なイタリアンクラシックのベルリネッタスタイル。けれども、きれいにまとめすぎないあたりに、独特のエレガンス表現を見る。鋭くとがったフロントノーズはややバランスを崩しながら下がり、リアシートのキャビンは低く小さくまとめられて、リアデッキも小さめ。

その代わり、前後のフェンダーラインをグラマーに描いたあたり、美しい時代のフェラーリに共通するデザインのDNAが見いだせる。ローマにはサイドフェンダーのSFシールドエンブレムは似合わない。レースのにおいがまるでしないからだ。

エクステリア以上にエレガントなのがインテリアデザインだ。機能重視だった最近のフェラーリの中では秀逸。デュアルコックピットスタイルと名づけられた室内は左右のパッセンジャー席が美しく仕切られており、ドライビングに熱中することはもちろん、その居心地そのものを楽しむ空間にもなっている。
 

roma▲シンプルさを追求するため採用された網状グリルは、ひとつの金属ブロックを削り出して作られる。また、上品さを高めるため、通気口は必要最低限に抑えている
roma▲テールライトは、フェラーリ恒例の丸型ライトではなく棒状へ。それによってテール上辺が一直線に見え、ラグジュアリーな印象が強まっている

ローマは、最新のポルトフィーノMと並行して開発されたようである。リトラクタブルハードトップをもつポルトフィーノをベースとしつつ、その7割を新設計とし、進化したパワートレーンを積んだ。確かにローマはポルトフィーノのクーペ版ではなかったけれども、今年にほとんど同じスペックをもつポルトフィーノの進化版Mが登場したことで、結果的には姉妹モデルとなっている。

メカニズム的に注目すべきは、フロントミッドに積まれたパワートレーンだ。3.9L直噴V8ツインターボエンジンの最高出力は620psにまで引き上げられ、新開発8速デュアルクラッチトランスミッション(DCT)を組み合わせる。

従来の7速DCTに比べても、より小型かつ軽量で変速スピードも上がった。エネルギーロスも格段に減っている。パフォーマンスのみならず、燃費の向上にも一役かったというわけだ。

乗り味はまさにジキルとハイド、二つのまるで違う個性が同居したものだった。街中をクルーズするような場面では、優雅なスタイリングそのままに洗練されたラグジュアークーペらしい走りに徹する。弾性の利いたたソリッドな乗り心地で扱いやすく、毎日でも乗りたくなりそうな乗り手を気遣う優しい馬である。

ところが、マネッティーノ(ドライブモード)をコンフォートからスポーツ、もしくはレースにチェンジすると悍馬へと豹変した。ハンドリングはすさまじくシャープになり、あまりの敏感さにおじけづいてしまったほど。そのうえ、低回転域からモリモリと湧き出るトルクが背中を押しまくる。3000回転を超えたあたりから迫力を増すエグゾーストノートに乗せられたなら、高回転域のパワーフィールがめくるめく快感となってドライバーをとりこにする。

十分に懐かせてから、ドライブモードを変えてみることをオススメする。
 

roma▲インフォメントシステムは助手席側にも設置可能、車両操作だけでなく、スピードメーターやレブカウンターを表示することもでき、よりドライバーと走りを楽しめる
roma▲新たに採用されたインテリア構想では左右シンメトリーな作りとし、ドライバーだけでなく、乗車するすべての人を意識したデザインを採用している
roma▲「視線は路面、両手はステアリング」のコンセプトのもとリニューアルされたインパネ。画面全体でのナビ表示や、上部にレブカウンターのみ表示するレースモードなどを搭載
roma▲ポルトフィーノから搭載されているV8ターボエンジンは、ブースト圧を独自のコンピューターで制御することで、ラグを減らしたレスポンスの良い走りを実現している。また、トランスミッションにはSF90と同じものが使われている
文/西川淳、写真/橋本玲

【試乗車 諸元・スペック表】
●F1 DCT

型式 7BA-F164BAA 最小回転半径 -m
駆動方式 FR 全長×全幅×全高 4.66m×1.97m×1.3m
ドア数 2 ホイールベース 2.67m
ミッション 8AT 前トレッド/後トレッド 1.65m/1.68m
AI-SHIFT - 室内(全長×全幅×全高) -m×-m×-m
4WS - 車両重量 1570kg
シート列数 2 最大積載量 -kg
乗車定員 4名 車両総重量 -kg
ミッション位置 コラム 最低地上高 -m
マニュアルモード
標準色

ビアンコアヴス、ジアッロモデナ、ロッソコルサ、ロッソスクーデリア、ロッソムジェロ、ブルーポッジ、ネロ、アルジェントニュルブルクリンク、グリジオチタニオメタル、グリジオイングリッド、グリジオシルバーストーン、グリジオアロイ、ブルーツールドフランス、ブルーアブダビ、ブルーミラボー、ネロデイトナ、アヴォリオ、ブルースコツィア、グリジオフェロメタリック、アズーロカリフォルニア、カンナ ディ フチーレ、ブルースワター、ヴェルデブリティッシュ、ロッソディーノ、ロッソフィオラノ、ビアンコセルヴィノ、ブル―ローマ

オプション色

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型式 7BA-F164BAA
駆動方式 FR
ドア数 2
ミッション 8AT
AI-SHIFT -
4WS -
標準色 ビアンコアヴス、ジアッロモデナ、ロッソコルサ、ロッソスクーデリア、ロッソムジェロ、ブルーポッジ、ネロ、アルジェントニュルブルクリンク、グリジオチタニオメタル、グリジオイングリッド、グリジオシルバーストーン、グリジオアロイ、ブルーツールドフランス、ブルーアブダビ、ブルーミラボー、ネロデイトナ、アヴォリオ、ブルースコツィア、グリジオフェロメタリック、アズーロカリフォルニア、カンナ ディ フチーレ、ブルースワター、ヴェルデブリティッシュ、ロッソディーノ、ロッソフィオラノ、ビアンコセルヴィノ、ブル―ローマ
オプション色 -
シート列数 2
乗車定員 4名
ミッション
位置
コラム
マニュアル
モード
最小回転半径 -m
全長×全幅×
全高
4.66m×1.97m×1.3m
ホイール
ベース
2.67m
前トレッド/
後トレッド
1.65m/1.68m
室内(全長×全幅×全高) -m×-m×-m
車両重量 1570kg
最大積載量 -kg
車両総重量 -kg
最低地上高 -m
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エンジン型式 - 環境対策エンジン -
種類 V型8気筒DOHC 使用燃料 ハイオク
過給器 ターボ 燃料タンク容量 80リットル
可変気筒装置 - 燃費(10.15モード) -km/L
総排気量 3855cc 燃費(WLTCモード) -
燃費基準達成 -
最高出力 620ps 最大トルク/回転数
n・m(kg・m)/rpm
760(77.5)/5750
エンジン型式 -
種類 V型8気筒DOHC
過給器 ターボ
可変気筒装置 -
総排気量 3855cc
最高出力 620ps
最大トルク/
回転数n・m(kg・m)/rpm
760(77.5)/5750
環境対策エンジン -
使用燃料 ハイオク
燃料タンク容量 80リットル
燃費(10.15モード) -km/L
燃費(WLTCモード) -km/L
燃費基準達成 -