プジョー 408▲プジョーでは初となるファストバックのクロスオーバースタイルを採用した新型408。ガソリンエンジンモデルとPHEVをラインナップ。街中で扱いやすい手頃なサイズ感や広い後席なども魅力だ

軽快な走りのガソリンか? フラットライドなPHEVか?

プジョーの車名といえば、3桁の数字で、頭の数字が車格を意味し、真ん中の0は商標登録されたもので、最後の数字が世代を表すとされている。しかし、近年はSUVのモデルラインナップが拡充され、車名は4桁の数字で真ん中が「00」に、また3桁の車名も世代を表す数字が9になると次がないことから、その車名のままモデルチェンジを行うモデルも現れてきた。例えば、現行型の308は3代目といった具合に。

そして「40X」シリーズといえば、これまで主にセダンの車型で(派生車にステーションワゴンやクーペなどもあり)1930年代に登場した401に始まり、407まで「40X」シリーズが作り続けられてきた。しかし、2011年に407が生産中止となり「40X」シリーズは途絶えた。セダンとしての役割は現行ラインナップにある508が引き継ぐ形となっていた。

それから10年以上の時を経て「40X」シリーズの最新型となる「408」が誕生した。一目見てわかるように、いわゆるセダンではなく、ファストバックとSUVとを融合したクロスオーバーのスタイリングになった。
 

プジョー 408▲3DデザインのリアLEDコンビネーションランプを採用。造形的デザインの19インチホイールを備える
プジョー 408▲ルーフラインからリアへと続く流線型で、速さとしなやかさを表現したという

エクステリアでは、フレームレスグリルやライオンの牙をモチーフにしたLEDデイタイムランニングライト、ライオンの爪をイメージした鋭い3本のリアLEDランプをはじめ、エッジの効いたデザインを採用する。プジョーは2021年にライオンをモチーフにしたブランドロゴを、以前のポップなデザインからよりシャープなものへと変更し現行型308から採用しているが、これらが今後のプジョーのデザイントレンドとなるわけだ。

ボディサイズは、全長4700mm、全幅1850mm、全高1500m、ホイールベース2790mm。立体駐車場も使える、日本の道でも取り回しやすいサイズ。ひとクラス下の308シリーズのステーションワゴン(308SW)が、全長4655mm、全幅1850mm、全高1485mm、ホイールベース2730mmとなることから、実はそれほど変わらない。しかし、408はホイールベースが60mmも長いこともあり、後席のニースペースは約188mmと居住空間にゆとりがある。

一方で、ラゲージスペースの容量は、408のガソリン仕様で通常時536L、最大約1611L。408ハイブリッドだとバッテリーなどの関係で471L/1545Lまで縮小する。308SWは通常約608L、最大約1634Lで408を上回る。このことからもステーションワゴンとしての荷室の広さを求めるなら308SWを、クロスオーバーのスタイリングと長いホイールベースを生かした後席の広さが欲しいなら408を、というすみ分けになっている。

インテリアは最新の308を踏襲しており、天地がフラットになった小径ステアリングの上からメーターをのぞきこむプジョー独自の「i-Cockpit」デザインを採用する。センターには10インチタッチスクリーンを配置。また、GTグレードには最新のインフォテインメントシステム「Peugeot i-Connect Advanced」を搭載。これは音声認識コマンド「OK、プジョー」で起動し、ナビゲーション、エアコン、シートヒーター、オーディオ、電話など様々な機能を声で操作できるもの。また、OTA(Over The Air)にも対応しており、通信を使ってソフトウエアの改善やバグ対応などが可能という。

パワートレインは、ガソリンとプラグインハイブリッド(PHEV)の2種類を設定。前者は、最高出力130ps/最大トルク230N・mを発揮する1.2L直列3気筒ターボエンジンで、8速ATを組み合わせる。後者は180ps/250N・mの1.6L直4ターボに、110psを発揮するモーターと8速ATを組み合わせたもので、システム合計最高出力225ps、最大トルク360N・mを発揮。12.4kWhのバッテリーを搭載し、一充電あたりのEV走行可能距離は65kmとなっている。
 

プジョー 408▲ガソリンエンジンモデルは1.2L直3ターボに8速ATを組み合わせる

まず、1.2Lのガソリン仕様に乗った。欧州ではインターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーを受賞した定評のあるエンジンであり、予備知識なしに乗ってこれが1.2Lだと気づく人はほぼいないはずだ。走り出しからパワフルで、エンジンの吹け上がりは軽く、トランスミッションも小気味よく変速していく。スポーツモードを選択すると、1速下のギアをセレクトするので、パドルシフトを駆使すれば、よりスポーティな走行が可能だ。車両重量は現代の車としては軽量な1430kgにおさまっており、あらゆるシーンで軽快に走る。足元には205/55R19サイズのミシュランeプライマシーというPHEVモデルと同じタイヤを装着していた。実はPHEVは1740kgとガソリン仕様に比べて310kgも重い。それに合わせてのものだけに、ガソリン仕様では少しばかり路面とのあたりが硬く感じられた。もう少しサイドウォールの柔らかいタイヤを装着した方が、いわゆる“猫アシ”感が演出できるかもしれない。

一方のPHEVだが、バッテリーの残量があれば基本的にはEV走行をする。トルクが瞬時に立ち上がることから力強く加速する。とはいうものの、過度に加速度が立ち上がるようなものではないため、助手席の人を不快にさせるようなこともない。乗り味も車重の重さがいい意味で重厚感につながっており、高速道路でも路面をトレースするようにフラットに走る。やはり先述したタイヤはPHEV向きというわけだ。ドライブモードは通常はハイブリッドモードで、EV走行優先ならエレクトリックモードを。エンジンを主体に状況に応じてモーターがアシストするスポーツモードもある。また、家の近くの住宅街ではEV走行をしたいというときに、走行時にエンジンを主に使うことでバッテリー残量をある一定以上に維持して残しておくEセーブモードもある。
 

プジョー 408▲10インチタッチスクリーンを採用。スクリーン下部にはショートカット機能(i-Toggle)を備え、使い勝手を高めている
プジョー 408▲シフトは308などにも採用されているスイッチ式が備わる

ADAS(先進運転支援システム)は、ガソリンもPHEVももちろん最新のものだ。アクティブクルーズコントロール(ストップ&ゴー機能付き)やフロント&サイドカメラによる360°ビジョンをはじめ、ステランティスグループのシナジーもあって、車線内の右寄りや左寄りなど、ドライバーの任意のポジションを維持してクルーズするレーンポジショニングアシストも装備する。これは例えば、高速道路での渋滞時にすり抜けしていく二輪車を避けるようなシーンでとても役に立つ。

ガソリンかPHEVかは悩ましいところ。ハンドリングの軽快感や価格(GTグレードでPHEVは+130万円)で選ぶならガソリン仕様になる。燃費も16.7km/L(WLTCモード)と良好だ。PHEVはまず家庭に充電器があることが前提になる。およそ60km圏内の日常使いはEVとしてカバーしたいという人はPHEVを選ぶのがいいだろう。どちらを選ぶにせよプジョー 408、悪くない選択だと思う。
 

プジョー 408▲大型フレームレスグリルと牙をモチーフとした縦型のデイタイムランニングライトが特徴的
プジョー 408▲GTとGTハイブリッドにはテップレザーとアルカンターラのコンビシートを装着
プジョー 408▲長いホイールベース(2790mm)のおかげで、後席が広く快適に仕立てられている
プジョー 408▲ガソリン仕様のGT(写真)は通常時(5名乗車時)536L、後席を倒せば最大約1611Lとなる
文/藤野太一 写真/柳田由人

使い勝手の良さで選ぶ、プジョー 308SW(現行型3代目)の中古車市場は?

プジョー 308SW

308の現行モデルは2022年に登場。ハッチバックとステーションワゴン(SW)が用意されており、パワートレインは1.6Lターボとモーターを組み合わせたハイブリッドと、1.5Lディーゼルターボをラインナップする。

308SWだが、2023年7月後半時点で、中古車市場には10台強が流通中。ハイブリッドとディーゼルの割合は半々といったところ。価格帯は430万~530万円。2022年4月登場とまだ新しいため、走行距離が少なく車両状態にばらつきがないので、ボディカラーや仕様を優先して選ぶことができる。
 

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文/編集部、写真/Stellantisジャパン