ポルシェ911ターボ|ニューモデル試乗

GT-R級の駆動伝達力とアジリティを手に入れながら、車体の動き自体はリアエンジンらしい情感をなんとか残してある。それでいて快適性はスポーツセダン同然。911らしくもありながら何もかもを1台で完結できる、そんな大人の贅沢なミニマリズムだ

敵はGT-RかGT3か。究極の911、再び

ターボはGT的ラグジュアリー性を追求

そもそも911という車の原点的主旨は、純然たるスポーツカーでありながら、日々の実用にもたけ、ツーリングも快適にこなせるという多用途性にあった。

イタリアを中心とするスポーツカー群の猛攻を受け止めるべく、絶対的な速さという要素が加味されるようになった1970年代、究極の911として付与されたのが「ターボ」だったわけだ。

長らく911の頂点はターボが担っていたが、その転換点が顕著にみえたのは水冷世代を迎えてからだろう。サーキット上等のGT3の登場で、ターボは持ち前の4駆シャシーを生かし、スタビリティをしっかり確保しながらGT的ラグジュアリー性を追求できる立場になった。

実際、ターボとGT3の立ち位置は996~997の世代で、見事にそういう風になっていたと思う。

GT3と並べてみても迷うことのできる運動性能を秘めて現れた

アーキテクチャーが完全刷新された最新991世代のターボは、前世代の印象に照らせば、相当よく曲がる車に仕上がっている。

新しくなった4WDシステムはセンターカップリングを電子油圧制御マルチプレート式とし、瞬発的に緻密な制御を行うことによって前軸側のグリップがしっかり舵角方向に働くようになった。

それに加えて、後輪を車速に応じて操舵させるリアアクスルステアを取り入れたことも大きいのだろう。4駆につきまとうアンダー感はほとんど感じさせず、グイグイとアペックスをたぐい寄せてシュッとニュートラルに曲がっていくサマは日産GT-Rを思い出さなくもない。

思えばそういうお相手が現れたことも、ターボを再び走りの方向へと向かせた一因でもあるのだろう。

ともあれ、今度のモデルは真面目にGT3と並べてみても迷うことのできる運動性能を秘めて現れたことは間違いない。

空気圧で展開する3ステージ式可変フロントスポイラー、3段階に調節できる可変リアスポイラーを前後それぞれに装着している

空気圧で展開する3ステージ式可変フロントスポイラー、3段階に調節できる可変リアスポイラーを前後それぞれに装着している

アイドリングストップやコースティング機能も備え、先代と比べで30ps向上させつつ燃費は最大16%も低減させた

アイドリングストップやコースティング機能も備え、先代と比べで30ps向上させつつ燃費は最大16%も低減させた

Sではブラックとレッドのツートンカラーレザーインテリアが標準となる。アダプティブスポーツシートは18way電動調節式

Sではブラックとレッドのツートンカラーレザーインテリアが標準となる。アダプティブスポーツシートは18way電動調節式

SPECIFICATIONS

グレード TURBO S
駆動方式 4WD
トランスミッション 7DCT
全長×全幅×全高(mm) 4506×1880×1296
ホイールベース(mm) 2450
車両重量(kg) 1605
乗車定員(人) 4
エンジン種類 水平対向6DOHCターボ
総排気量(cc) 3800
最高出力[ps/rpm] 560/6500-6750
最大トルク[N・m/rpm] 700/2100-4250
Tester/渡辺敏史 Photo/ポルシェ ジャパン