ポルシェ ケイマン|ニューモデル試乗

2人乗りであること、車内にバッグやコートの置き場がないこと、大型スーツケースを積み込めないことなどの不便さはあるが、それを補って余りある楽しさをもたらしてくれる。異次元の気持ちよさを異次元のコスパで味わいたいなら、他の選択肢はボクスターぐらいだ

文句の付け所がない完璧なスポーツカー

完璧なキカイだけが生みだせる気持ちよさ

新型ケイマンは先代よりスタイリッシュになりインテリアの質感もジャンプアップした。500万円にも及ぶ911との価格差を考慮しながら、自分のなかで無理矢理納得させる、などという無粋な思考工程は必要ない。ケイマン単体を眺めただけでもう十分うっとりできるからだ。

走ってみても「完璧なスポーツカーだな」という言葉が口を突いて出るまでさしたる時間はかからなかった。

それは、例えば強烈なまでのボディの剛性感だったり、フリクションを徹底的に抑え込んだ滑らかな足の動きだったり、血の通った精密機械ともいうべきエンジンの回転フィールだったり。とにかく、すべての部分が想像を絶するほどの滑らかさをもっていて、粗さや荒っぽさやガタやヨレといった無粋な感触がどこにもない。

そこにあるのは、完璧な設計、完璧な工作精度、完璧な組み付け精度をもつ完璧なキカイだけが生みだせる気持ちよさ。ある人はそれを「スポーツカーなのに抜群に乗り心地がいい」と表現するだろう。またある人は「速度を上げれば上げるほどしっかり感が増す足」、「速さと洗練度を併せ持つエンジン」、「扱いやすさとスポーツ性の高レベルでの両立」という表現を使うだろう。どれも当たっている。

日常さえも豊かにしてくれるスポーツカー

しかしそれらはケイマンの魅力を示す個々の事象に過ぎない。

硬いとか柔らかいとか、クイックとかダルとか、速いとか遅いとか、そういう月並みな言葉では表現できない気持ちよさが凝縮されている。それも、飛ばして初めてわかる気持ちよさではなく、走り始めた瞬間からビシビシと伝わってくる気持ちよさが。

非日常を求めて乗るのもいい。しかしケイマンは、通勤や買い物といった日常さえも豊かにしてくれるスポーツカーだ。こんな車が612万円~、安すぎる。

ケイマンがシングル、ケイマンSがデュアルのテールパイプを備える。リアデザインの特徴の一つとなるリアスポイラーはボクスターより高く鋭角

ケイマンがシングル、ケイマンSがデュアルのテールパイプを備える。リアデザインの特徴の一つとなるリアスポイラーはボクスターより高く鋭角

ミッドシップのエンジン直後にあるリアのラゲージ容量は合計約275L。ちなみにボンネット下、フロントのラゲージは約150Lの容量を確保

ミッドシップのエンジン直後にあるリアのラゲージ容量は合計約275L。ちなみにボンネット下、フロントのラゲージは約150Lの容量を確保

グラスファイバー製コアをカーボンで包んだシェルをもつスポーツバケットシートをオプションで用意。レーシーな雰囲気を演出する

グラスファイバー製コアをカーボンで包んだシェルをもつスポーツバケットシートをオプションで用意。レーシーな雰囲気を演出する

SPECIFICATIONS

グレード S
駆動方式 MR
トランスミッション 7DCT
全長×全幅×全高(mm) 4380×1800×1295
ホイールベース(mm) 2475
車両重量(kg) 1350
乗車定員(人) 2
エンジン種類 水平対向6DOHC
総排気量(cc) 3436
最高出力[ps/rpm] 325/7400
最大トルク[N・m/rpm] 370/4500-5800
車両本体価格(万円) 820
Tester/岡崎五朗 Photo/向後一宏