フォルクスワーゲン ゴルフ|ニューモデル試乗

妙なたとえだが、かまどで炊いた高級ブランド米のように、シンプルだけれど奥深い味わいがゴルフの真骨頂。それだけに、激辛好きや高級食材にしか興味のない人には飽きられるかも。「ごはんがうまいんだから、おかずは塩鮭と梅干しで十分」という人向け

“志の高さ”が生み出した出色の名作

写真では想像もできないほど大きなインパクト

一見したところあまり変わっていないと感じた現行型オーナーも少なくないのでは? けれども、実物を目の当たりにすれば、それが大きな間違いだったことに気づくはずだ。

ボディパネルの面精度は格段に向上しているし、キャラクターラインは触れただけで指が切れると思えるほどシャープになった。「造形は極力シンプルにして、質感の向上によりデザインの新しさを表現する」。それが現在のフォクルクスワーゲンのデザインストラテジーだが、最新のスマートフォンを思わせるこの意匠変更には、写真で見ただけでは想像もできないほど大きなインパクトがある。

目立った変化はないのに、質感の向上を強く意識させるのはそのデザインだけではない。

レベルは上がり、価格は下がった

静粛性は増し、ハンドリングと乗り心地のバランスはさらに磨きがかかった。軽量化によってパフォーマンスと燃費が改善され、最新のセーフティーデバイスも選べるようになった。それでいて価格は下がったのだから、驚きを通り越してもはやあきれるしかない。

新世代プラットフォーム戦略のMQB(モジュラー・トランスバース・マトリックスのドイツ語の頭文字)に話題が集中しているが、その本質がクォリティとコストパフォーマンスをかつてないレベルまで引き上げることにあったのは明らか。単なるコストダウン狙いではないところが、いまのフォルクスワーゲンのすごさといえる。

それにしても、この志の高さは何だろう? まるで、勝てるとわかっている試合に全力で挑むアスリートのようだ。彼らの生真面目さこそ、ゴルフ7という出色の名作を生み出す原動力だったに違いない。

水平基調のデザインで幅広感を強調。旧型ではフェンダーがボンネットより高かったが、それが逆になりシャープさが強調されている

水平基調のデザインで幅広感を強調。旧型ではフェンダーがボンネットより高かったが、それが逆になりシャープさが強調されている

旧型より全長55mm、全幅10mm拡大、全高は25mm低くなった。前輪位置は40mm前方に移動。今回も前回に引き続きの拡大となった

旧型より全長55mm、全幅10mm拡大、全高は25mm低くなった。前輪位置は40mm前方に移動。今回も前回に引き続きの拡大となった

センターコンソールが運転席側に傾けられドライビングプレジャーを演出。室内が広くなり、新形状のシートと相まって快適性も向上

センターコンソールが運転席側に傾けられドライビングプレジャーを演出。室内が広くなり、新形状のシートと相まって快適性も向上

SPECIFICATIONS

グレード TSI Highline
駆動方式 FF
トランスミッション 7DCT
全長×全幅×全高(mm) 4265×1800×1460
ホイールベース(mm) 2635
車両重量(kg) 1320
乗車定員(人) 5
エンジン種類 直4DOHCターボ
総排気量(cc) 1394
最高出力[ps/rpm] 140/4500-6000
最大トルク[N・m/rpm] 250/1500-3500
車両本体価格(万円) 299
Tester/大谷達也 Photo/河野敦樹