実用ハッチバックとは一線を画すクーペモデル

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↑1.4ツインチャージでも十二分に速いが、DCCの効果は絶大。低中速域のしなやかさと高速コーナーでの安定感の両立ぶりは、2.0を選ぶ価値があると感じさせる(左)ゴルフV用と比べチェーン採用など大幅な部品変更を受けた2.0TSIエンジン(右)
16年ぶりに復活した3代目となるシロッコ。本国ではゴルフⅥより先にデビューしており、フォルクスワーゲンのチーフデザイナーであるワルター・デ・シルヴァによってワッペングリルが廃された最初のモデルである。実車を見ると、しかしフロントグリルなどよりも圧倒的な車高の低さに心を奪われる。踏ん張りの利いたスタイルは、アウディTTやアルファのミトと同じように、実用ハッチバックから一線を画したクーペモデルであることを主張している。

グレードは1.4L直噴ツインチャージに7速DSGを組み合わせた160馬力のTSIと、2L直噴ターボに6速DSGで200馬力を叩き出す2.0TSIの2種類である。前者がゴルフⅥのハイラインと同じ、後者はGTI本国仕様の10ps落ちだ。豪華仕様となる2.0TSIには2色の本革シートのほか、ダンパー減衰力やパワステ特性を制御するDCCや18インチタイヤなどが標準。魅力的なパノラミックルーフも2.0だけのオプションだ。

室内はどことなくゴルフの面影を残すものの、シートやドアトリムなどの洒落たデザインでクーペらしさを演出している。長いルーフのおかげでリアシートは頭上空間こそ余裕がないが、ひざ回りや左右幅は十分である。ラゲージも左右幅はないが深さがあるので意外にモノが入る。ドイツモノらしい真面目な一面だ。

精緻な走りのクーペは、やっぱりドイツモノ!

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↑両グレードとも、ETC車載器やUSBデバイス接続装置付きの純正HDDナビが標準装備される。シート以外に内装関連の装備差は少ない(左)2.0TSIに標準の本革シートは黒と茶の2色。前席は電動&ヒーター付き(右)
もちろんドイツモノらしいのは走りも同様。エンジンパワーは1.4ツインジャージでも十二分に速い。もちろん2.0はさらに速く、トルクフルだ。専用のチューンを施された足回りはゴルフより少々硬いが、よりキビキビとしたフットワークは見た目を裏切らない。特にDCCの効果は絶大だ。低中速域のしなやかさと高速コーナリングでの安定感の両立ぶりは、これだけで2.0を選ぶ価値があると感じさせる。

アルファのミトには、イタ車の走りもずいぶん洗練されたという印象を受けた。しかしシロッコと比べてしまうとエンジンの回り方や足回りの味つけに依然雑味がある。それが昔からのイタ車の魅力でもあるのだが、やはり走りの精緻さではドイツ車が一枚上手だ。一方でインテリアの艶っぽさではミトに分がある。クラスも値段も違うこの2台を比べる人は少ないかもしれないが、ドイツ車とイタ車の変わらない魅力が詰まっているという点で、この2台は興味深い。もちろん両車には、パイの小さなクーペマーケットに君臨するアウディTTという才色兼備の強力なライバルがいるわけだが。

SPECIFICATIONS

 
主要諸元のグレード TSI2.0TSI
駆動方式 2WD
トランスミッション 7AT 6AT
全長×全幅×全高(mm) 4255×1810×1420
ホイールベース(mm) 2575
車両重量(kg) 1340 1360
乗車定員(人) 4
エンジン種類 直4DOHC+ターボ+スーパーチャージャー 直4DOHC+ターボ
総排気量(cc) 1389 1984
最高出力[ps/rpm] 160ps/5800rpm 200ps/5100-6000rpm
最大トルク[kg-m/rpm] 24.5kg-m/1500-4500rpm 28.6kg-m/1700-5000rpm
10・15モード燃費(km/L) 15.8 13.2
ガソリン種類/容量(L) 無鉛プレミアム/55
車両本体価格 392.0万円 447.0万円
(Tester/馬弓良輔(インポートカーセンサーメディアアドバイザー) Photo/尾形和美)