▲ひと足先にサーキットでの走行をしたため、インプレッションをお伝えする▲ひと足先にサーキットでの走行をしたため、インプレッションをお伝えする

新たなユーザー層獲得

先代クラウンは、新たなユーザーターゲットを獲得し、裾野を広げたいという意図がマーケティング戦略に表れていたことは記憶に新しい。フェンダーパネルを替え、カラーも極端に若向のモデルを発売するなど、何とか購買層を下げようと試みていた。

しかし、結果的にはユーザーの年齢層を下げることができなかった。

というよりも以前と年齢層はほぼ変わらず、60歳中頃だったのだ。

そこで今回の新型クラウンに課せられた使命は、クラウンで培われた伝統芸を残しつつ全く新たなエッセンスを導入するということであった。

高級感もありつつ先代よりもスポーティな印象に

まず車の根幹となるメインシャシーには、クラウンでは初となるTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)プラットフォームを採用した。すでにレクサスでも採用されているが、それをベースにクラウン用に凝縮してしる。

デザインはプレミアムブランドでは少し前から採用している、シックスライトと呼ばれるタイプになっている。Dピラー前にウィンドウを追加し、よりDピラーを後方に伸ばすデザインである。

これにより、トランクエリアがコンパクトに見え、ロングノーズが強調される。また、ルーフのBピラーを頂点に後方へと緩やかに流れるデザインも新しい。

一見するとキープコンセプトのようなフロントグリルは、より空力的な形状になっている。そして、ヘッドライト造形をフェンダー後方まで回りこませることで、斜め前方から見たときの存在感も際立たせた。

リアについてもフェンダーを張り出すような形状にしている。テールランプをより内側に取り付けることで、限られたディメンションでもボリュームをしっかり感じられるデザインだ。

さらに重心を低く見せて安定感を演出するために、ドアノブ下に走る強調しないプレスラインがドアの厚みを見いだす。

固定概念にとらわれずにデザインされたことが理解できる。

▲2.5L HV RS Advance。ボディカラーはプレシャスブラック ▲2.5L HV RS Advance。ボディカラーはプレシャスブラック
▲シックスパネルを採用しスポーティなスタイルに。ボディカラーはプレシャスシルバー ▲シックスパネルを採用しスポーティなスタイルに。ボディカラーはプレシャスシルバー

走ってみるとどのモデルも個性ある仕上がり

ドライブしたフィールをお伝えしたい。コースはお馴染みのサイクルスポーツセンターである。クローズドコースの最良の路面状況なので素性がわかりやすい。

今回はプロトタイプを6台試乗した。

1台目は2.5L HV RS Advance Fourである。18インチホイールを装着したスポーティーモデルだ。

エンジンはカムリと同じものを搭載している。 走り出しの静粛性は高く、クラウンを継承した部分は良好である。4人乗っての試乗であったが、起伏のあるコースでもパワー不足は感じない。何度かフルロード(全負荷)での加速を繰り返したが、カムリに搭載されているときよりもエンジンのバイブレーションが少なく4気筒HVでも良好な感じだ。

ブレーキフィールもリニアで、現行型HVモデルに比べるととても自然になった。ハンドリングも四輪がしっかりと足が地に着いた印象で、4WDの効果はあるが押し付けがましい部分はない。

▲2.5L HVのエンジン ▲2.5L HVのエンジン

後から試乗するモデルも同様だが、運転すると外観で見るよりもずっと小さく感じる。前方が見やすく位置を把握しやすいのだ。

これが日本専用のディメンションなのだと感じずにはいられない。乗り心地もシャシーがシッカリとしいるので路面の細かな入力をいなす。シートに座ったときの腰あたりの揺れも少なく、重心が低いことがわかる。

次に3.5L HV RS Advanceだ。最もパワフルなユニットを搭載している。これはとにかく力強い。 余力を残した加速を得ることができる。初めに乗った2.5L HV RS Advance Fourよりも、乗り心地がさらにしっとりとして高級な印象だ。

今度は極めて標準的な2.5L HV Gである。 普段乗るには十分で、これはかなり従来のユーザーが選びそうなモデルだ。 急なステアリング操作でも、姿勢を乱さず安心感を与える仕様である。

続いて最も興味のある2.0L ターボRSの試乗だ。 この2LターボはレクサスNXやISなどに搭載された形式だが、走り出しから自然なトルクの立ち上がりでドライバビリティに優れ、エンジンを回したくなるユニットだ。

エンジンのバイブレーションも気にならずブロック剛性が高い。 ATとの統合制御もステップアップにシフトして、スポーツマインドを残した最良のクラウンのように思える。 ステアリングを握っていて楽しい。

2.5L HV RS Advance のFRにも試乗した。4WD仕様の方が落ち着いたサスペンションだが、軽やかで軽快なHVであることには違いない。

最後の試乗は3.5L HV G Executiveだ。これはやはり大味の感じであるが、今までのどっしりとした静粛性に富んだゆとりのドライビングには最も適している。歴代クラウンの王者のDNAが最も詰まっている印象があるモデルだ。

今回のクラウンは、どのモデルを乗っても個性がある。

新たなプラットフォームの完成度が高く、その結果どのエンジン、どの駆動方式でもグレードに関係なく体に不快な印象は全くなかった。強いて言えば、3.5L HVの仕様は大味に感じられるほど2.5L HVが良くなっている。

text/松本英雄
photo/尾形和美


【SPECIFICATIONS】
※試乗(プロトタイプ)時点での開示情報
■エンジン種類:2.0Lターボ、2.5L HV、3.5L HV
■駆動方式:電子制御4WD、FR ■トランスミッション:CVT、8速AT