▲買えるもんなら100%欲しい。けれど、たとえお金があってもロールス・ロイスを買うためには、高い徳を備えた社会的ポジションが必要だと思う。あの人は似合うよね。そう、見る人に思われなきゃいけない。経済的のみならず、買うことの難しい車。だからあえて自分で買う可能性は50% ▲買えるもんなら100%欲しい。けれど、たとえお金があってもロールス・ロイスを買うためには、高い徳を備えた社会的ポジションが必要だと思う。あの人は似合うよね。そう、見る人に思われなきゃいけない。経済的のみならず、買うことの難しい車。だからあえて自分で買う可能性は50%

華麗なるイメチェン走り

もはやロールス・ロイスは、後席にちーんと座って、ゆるゆると運転させる貴族の車ではなくなってしまったかのようだ。運転席に座って、積極的にドライブを楽しむ。そういう車に変貌した。つまり、若返り。

それゆえ、スタイリングも色っぽい。レイスほど奇抜じゃなく、正統派の美人さん。それも、飛び切り。フロントオーバーハングの短さが、走りの良さを強く意識させる一方で、優雅なテールエンドはまるでパーティドレスのように華やかで美しい。大胆かつ繊細なスタイリングは、他にない価値である。

6層からなるソフトトップはもはやソフトでも何でもない。切り裂きいたずらなんてしようものならケガするのがオチ。クローズド状態で走れば、静粛性は固定ルーフモデル級で、屋根が開くなんて信じられない。ただ、ときおり、道が荒れるとフロアが震える。開口部の大きなオープンカーのクローズド状態に特有のものだが、それでも極小に収まった。

フル電動、時速50km/h以下なら走行中も可能な開閉に要する時間は、実測で20から22秒。ちょっとした時間だけれど、大きさを考えれば無理もない。開閉そのものは至ってスムーズかつ、驚くほどに静かだ。

オープンにして、海岸線をかっ飛ばす。重い車だし、長さもあるし、で、変則的なリズムに合わせるときのように最初はちょっと戸惑うけれど、すぐに慣れた。リズムを掴めばこっちのもの。ひらりひらりと大柄なボディを思いのままに操れる。スポーツカーにはない、柔らかな正確さが、心地よい

さすがのV12パワーをもってしても、ドッカーンと強烈な加速は望めないが、追い越し加速の気持ちよさは他に比べるものがない。見えざる神の手に引かれたかのようだった。

▲最逆ヒンジのコーチドアなど伝統のデザインを踏襲。ボディパネルの80%をオリジナルとし美しいドロップヘッド・クーペに仕立てられた ▲最逆ヒンジのコーチドアなど伝統のデザインを踏襲。ボディパネルの80%をオリジナルとし美しいドロップヘッド・クーペに仕立てられた
▲運転席側Aピラーから後席後方を回り助手側Aピラーまで続く、スリングショット・レイアウトを採用 ▲運転席側Aピラーから後席後方を回り助手側Aピラーまで続く、スリングショット・レイアウトを採用
▲セパレート式バケット・シートを採用。ソフトトップは後席周りをいかに包み込むかにも注力されている ▲セパレート式バケット・シートを採用。ソフトトップは後席周りをいかに包み込むかにも注力されている

【SPECIFICATIONS】
■グレード:DAWN ■乗車定員:4名
■エンジン種類:V12DOHCターボ ■総排気量:6600cc
■最高出力:570/5250[ps/rpm]
■最大トルク:780/1500-5000[n・m/rpm]
■駆動方式:FR ■トランスミッション:8AT
■全長x全幅x全高:5295x1945x1500(mm) ■ホイールベース:3110mm
■車両価格:3740万円

text/西川淳
photo/ロールス・ロイス・モーター・カーズ