【平成のABCトリオ】B:ホンダ ビートとC:スズキ カプチーノは買うなら今しかねぇ!
カテゴリー: 特選車
タグ: ホンダ / マツダ / スズキ / クーペ / オープンカー / ロードスター / タルガトップ / Tバールーフ / 軽自動車 / FR / MR / AZ-1 / カプチーノ / ビート / 高橋満
2021/02/27
空前の好景気が生んだ軽2シータースポーツモデル
現在、軽自動車のオープンスポーツモデルはホンダからS660、ダイハツからコペンが発売される。どちらもエンジンを思い切り回して軽自動車ならではの軽いボディを操れるモデルとして、走り好きの人たちから人気の高いモデルだ。
軽2シーターは1990年に軽自動車メーカーが相次いで発売し、一大ムーブメントを作り上げた。
それがマツダ AZ-1、ホンダ ビート、スズキ カプチーノの3モデルだ。これらは車名の頭文字をとって“平成のABCトリオ”とも呼ばれた。
1980年代後半のバブル景気により、各社は潤沢な開発費を投じてこれらを開発。1980年代の軽スポーツがボンバン(軽ボンネットバン/軽セダン)の派生車的な位置付けだったのに対し、ABCトリオはそれぞれオリジナルモデルとして登場している。
しかも3車が独自の思想で開発され、他に類を見ない個性的なキャラクターが与えられている。
車好きの間で大きな話題になった3モデルだが、一方で軽自動車規格(当時はボディサイズが拡大された現在の規格より前の規格になる)内で作られているのでキャビンが極端に狭く荷物はほとんど載せられないこと、そもそも2人乗りで利便性とはかけ離れた存在だったことからあくまで趣味車であり、販売台数は伸びなかった。
そのため、当初から流通している中古車の台数も限られていたが、現在では年数経過によるタマ数の減少に加え、海外への輸出により中古車の台数が激減。
逆に当時欲しかったけれど乗れなかった人、新車で楽しんでいてもう一度乗りたいと考えている人に加え、当時まだ生まれていないけれどゲームやマンガなどで存在を知った若い人から需要もあり、相場は上昇傾向になっている。
AZ-1はすでに新車時価格を大幅に超えるプレミア相場になっているが、ビートとカプチーノはまだ手が届く価格帯にある。ただ、この2モデルがプレミア相場に突入するのも時間の問題と言える。
最後の買い時、と言えなくもない平成のABCトリオがどんな車だったか、そして狙い目中古車の探し方などを見ていこう。
【マツダ AZ-1】ガルウイングドアを採用した軽スーパーカー
1992年10月に登場したAZ-1は、何もかもが異色のモデルだった。エンジンを運転席後方に配置したミッドしプレイアウトを採用したスポーツクーペで、最大の特徴はドアが上に向かって開く、ガルウイングドアを採用したこと。
ドア上部(ルーフ部)やドアサイドは大きなガラス面になっているが、実際に開閉できる部分は極めて狭い。ETCがなかった時代は、高速道路でドアを開けなければ料金支払いができなかったほど。
シートの着座位置も極めて低く、運転中は文字どおり地面を這うようにして走る感覚だった。
ボディ外板は、FRPを採用して徹底的に軽量化。ボディ剛性は、強固なスチール性のスケルトンモノコック構造で確保している。この構造で、ガルウイングという軽量化には不利な機構にも関わらず、車両重量はわずか720kgに抑えられた。
エンジンは、スズキ アルトワークスに搭載されていたF6A型3気筒DOHCターボを採用。トランスミッションは5MTのみの設定に。足回りもアルトワークスのものが採用されている。
ステアリングのロック・トゥ・ロックが2.2回転と極めて小さいため、少しステアリングを切っただけでギュンと向きを変える。
そのため、究極のハンドリングマシンとも評されたが、挙動があまりにもピーキーで、乗り手には高い技術が求められるモデルでもあった。
AZ-1は、特殊な構造だったこともあり大量生産はできず、また生産期間もわずか2年と短かったため、総生産台数は4500台以下だったといわれている。
現在ではタマ数の自然減少と海外への流出で国内流通台数が19台と極端に少なくなり、価格帯は170万~350万円と、新車時価格(149.8万円)を大きく上回るプレミア相場に。
それでもAZ-1は、これまでの世界の自動車史の中でも唯一無二の存在なので、乗りたい人は是が非でも手に入れるしかない。今後は台数減少がさらに進み、ますます手に入れづらくなるはずだ。
【ホンダ ビート】NAで64psを達成した軽MRオープンスポーツ
1990年9月に発売されたNSXに続くホンダの2シーターMRスポーツとして、1991年5月に登場したビート。スペースに制約がある軽自動車をオープンモデルにすることで、爽快な走りを味わえるとして登場した。
ルーフは手動式の幌で、1人でも簡単に開閉できる。風の巻き込みを最小限に抑えるフロントウインドウ形状を採用するとともに、大容量エアコンを搭載して季節を問わずオープンエアを楽しめるようにしているのもビートの特徴だ。
ボディは、量産車世界初となるミッドシップ・フルオープンモノコック構造を採用。ねじり合成を高めるとともに、万が一の衝突時も乗員の安全性を確保する構造が採用されている。
エンジンはF1のテクノロジーを応用したもので、NAで軽自動車自主規制数値となる64psを達成。8100rpmで最高出力を発生する、ホンダらしい高回転型のエンジンとなっている。
トランスミッションは、ショートストロークの5MTで、走行時は小気味いいシフトチェンジを味わえる。
タイヤはフロントが13インチ、リアが14インチという異径サイズに。ブレーキは軽自動車で初めて四輪ディスクブレーキが採用された。
ABCトリオの中では、どちらかというとマイルドな味付けのモデルだったが、随所にホンダらしさが盛り込まれているモデルだ。また、登録車のスポーツモデルと比べると比較するとパワーは非力な分、ファンは一般道を走る速度域で存分に楽しめると話す。
現在は150台弱の中古車が流通していて、価格帯は30万~220万円。ビートはまだ予算100万円以内で買える中古車も100台近く残っているが、今後も相場の上昇傾向は続くだろう。
高価格帯には走行数万kmのノーマル車も存在する。もし、ビートを一生ものの車として手に入れたい人は、予算をかけてでもこのような車を手に入れたいところ。
低価格帯は走り込んだ車が多いので、購入前に状態をしっかり確認したうえで、購入後にどのくらいの維持費が必要かをしっかりお店と話し合っておきたい。
【スズキ カプチーノ】4通りのオープンスタイルを楽しめる軽FRターボ
AZ-1が軽スーパーカー、ビートが気持ちいいライトウェイトスポーツだとすると、カプチーノは、軽のピュアスポーツだ。
1991年10月にデビューしたカプチーノは、何もかもがおきて破りのモデルだった。規格上サイズに制約のある軽自動車は、スペース効率を高めるため、基本的にFFレイアウトにするのが鉄則。
ビートのMRにも驚いたが、カプチーノはなんとエンジンを縦置きにしたFRレイアウトを採用した。
これにより、エクステリアは超ロングノーズなシルエットに。サイドから見ると、ドライバーは車体センターよりかなり後ろに座っているのがわかるはずだ。
考えてみれば軽自動車がパッケージ重視になった現在でも、FRベースの4WDモデル「ジムニー」を作り続けている。その車に必要なことなら、常識から外れてもちゅうちょなく採用する。おそらくこれがスズキの伝統なのだろう。
そんなカプチーノの特徴といえば、ルーフが4分割の構造になっていて、クーペ、Tバールーフ、タルガトップ、フルオープンと、1台で4つのスタイルを楽しめること。
エンジンは、前期型と1995年5月以降の後期型で異なっていて、前期型は3代目アルトワークスに搭載されていたエンジン、後期型は4代目アルトワークスRS/Zと同じオールアルミ製ターボが搭載された。トランスミッションは5MTが基本で、後期型は3ATも選ぶことができた。
現在、100台ほどの中古車が流通していて、価格帯は40万~180万円。前期型と後期型で価格差はなくなっている。
車の性格上ハードな使われ方をされてきたものが多く、流通している中古車の半分以上は修復歴があるものに。とくに低価格帯は修復歴が多くなる。
また、チューンされているものも多いので、購入時は販売店に車両状態を確認し、納得できるものを購入したい。
長く乗るつもりなら、予算を多めに用意してでも状態のいいものを選んだ方が、結果的に安い買い物になる可能性が高い。
ABCトリオを得意としている店で早めに買うのが吉
平成ABCトリオは、すでにデビューから30年近く経過しているため、輸出を差し置いても台数は減少傾向にある。
短期的に見れば、平均価格が下がるときもあるだろうが、今でも人気が衰えていないことを考えると、相場は今後ますます上昇するのは間違いない。
また、この3モデルは旧車の域に入っているので、気になるのはトラブルがあった際のパーツ供給状況。
昨年、ホンダはビートの純正部品の生産を一部再開するというリリースを出した。カプチーノもまだパーツ類は比較的手に入りやすいようだ。しかし、AZ-1は生産台数が少なかったこともあり一部のパーツは探しにくくなっているという話もある。
「いつか憧れの車を手に入れよう」と思っているのであればなるべく早く決断し、パーツ探しも含めて楽しむのがよさそう。
これだけ古くなると、購入する車の状態はもちろん、専門的な知識や整備のノウハウをもった販売店で買う方が安心。
購入時はどのように乗られてきた車かに加え、お店の車に対する知識なども確認したい。
自動車ライター
高橋満(BRIDGE MAN)
求人誌編集部、カーセンサー編集部を経てエディター/ライターとして1999年に独立。独立後は自動車の他、音楽、アウトドアなどをテーマに執筆。得意としているのは人物インタビュー。著名人から一般の方まで、心の中に深く潜り込んでその人自身も気づいていなかった本音を引き出すことを心がけている。愛車はフィアット500C by DIESEL
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