6MTの低走行系フェラーリ 360モデナがこの価格というのは、正直かなりの狙い目かも【NEXT EDGE CAR】
カテゴリー: 特選車
タグ: フェラーリ / 360モデナ / EDGEが効いている / 伊達軍曹
2020/09/27
今のうちから注目しておきたい「近未来の名車」を探せ
こちらは9月26日に発売された、雑誌カーセンサーEDGE11月号に掲載された自動車評論家・MJブロンディさんの人気連載「NEXT EDGE CAR」の、担当編集者から見た「別側面」である。アナログレコードで言うB面のようなものと思っていただきたい。
なお「NEXT EDGE CAR」というのは、「今現在はまだ名車扱いされていないが、近い将来、中古車マーケットで名車または名品と呼ばれることになるだろうモデルを探そうじゃないか!」というのが、そのおおむねの企画趣旨である。
で、カーセンサーEDGE 11月号の同連載で取り上げた中古車は、2001年式のフェラーリ 360モデナ。流通の中心はセミATである「F1 マチック」なのだが、こちらは希少かつ人気の6MTで、走行距離も2.8万km。それでいて車両価格は1250万円という、6MTの360モデナのなかでは「お手頃」といえる水準だ。
いきなりの結論としては、「フェラーリ 360モデナという車自体が若干『買う人を選ぶ車』ではあるのだが、個体の状態としては文句なしで、間違いなくNEXT EDGE CAR=近い将来の名車候補ではある」というものだった。
だが結論の説明へと進む前に、フェラーリ 360モデナという車についてのごく簡単な説明は行っておこう。
360モデナは、大ヒット作となった「F355」の後継モデルとして1999年に登場した、V8エンジン搭載のミッドシップフェラーリ。デザインを担当したのはイタリアのピニンファリーナ社で、担当デザイナーはイタリア人だったが、当時のデザインディレクターは日本人の奥山清行氏だった。
車体中央に搭載されたエンジンは、F355の3.5L V8を改良した3.6Lの自然吸気V8で、最高出力はF355比で20ps増の400ps。トランスミッションは6MTとセミATの「F1マチック」で、F355でも採用されたF1マチックは、360モデナでは改良が施され、シフトダウン時に自動でブリッピングが行われるようになった。
クーペである360モデナの他にオープンタイプの「360スパイダー」もあり、さらにはワンメイクレース用車両である360チャレンジの公道向けバージョンである「チャレンジストラダーレ」もラインナップされた。
360モデナの現在の中古車相場は、モデル全体で約680万から約1600万円と上下に広いが、これは今ひとつ人気薄なF1マチック搭載車も含んでいるがゆえ。人気かつ希少な6MT搭載車の低走行物件に絞った相場は、おおむね1200万から1600万円となっている。
「ネオクラシック感」にやや欠けるデザインをどう評価するか?
そして、冒頭付近でのいきなりの結論として「フェラーリ 360モデナという車自体が若干『買う人を選ぶ車』ではあるのだが」と申し上げた理由。
なぜ、360モデナは買う人を若干選ぶかと言えば、それは主に「デザインのせい」だ。
比較的最近の車のような気もするフェラーリ 360モデナだが、冷静に考えれば、20年以上前もにデビューした「ネオクラシック」である。
だが360モデナのデザインには、率直に申し上げて「ネオクラシック感」があまりないのだ。
360モデナの前身であるF355は「これぞまさに往時から連綿と続くフェラーリの造形!」といったフォルムであったため、1990年代の新車当時はモダンな車として人気を集め、販売終了から20年以上が経過した今では「可憐なネオクラシック」として、新車当時とはまた別のニュアンスで大人気となっている。
しかし360モデナは、年式的にはネオクラシックと呼べるものであるにもかかわらず、造形的には「ちょっと異質」なのだ。
いわゆるフェラーリらしいフォルム=誰がどう見ても「あぁ、フェラーリですね」と言うだろうわかりやすい美しさを伴った造形ではなく、どこかちょっと昆虫っぽいテイストも含まれているというか。
この「異質な感じ」を好まない人は、可憐な造形であるF355の方に行く。で、世の中にはF355的な可憐系フェラーリを好む人の方が多いため、F355の(良質物件の)相場は必然的に上昇するのだ。
具体的には、360モデナ(6MT)の低走行物件の相場が前述のとおり約1200万から約1600万円であるのに対し、F355のそれは約1500万から約1800万円となっている。
だが、360モデナのデザインの異質さを、異質ではなく「好ましい個性」ととらえることができる人にとっては、この相場の逆転劇は、むしろ好ましい現象となる。すなわち、コンディション良好なMT車を(相対的に)安く入手できる――ということだ。
この好条件な6MTがこのプライスとは、正直安い!
もしも360モデナのデザインが「あまり好みではない」というのであれば、話はここで終わりなのだが、「いや、意外と好きなんですよ」という人のため、今回の取材車両のコンディションについてご報告しよう。
結論から言えば、素晴らしいものであった。
何が素晴らしいかといえば、まずは「F1マチックではなく6MTである」という点だ。
360モデナの後継車種である「F430」からは、セミATであるF1マチックの信頼性もずいぶん上がったようだが、360モデナまでのそれは、率直に言って耐久性にいささかの疑問があった。クラッチの寿命がMT車の半分程度でしかかなく、その交換には60万円ほどのコストを見込まねばならなかった。
しかし取材車は、そういった面での心配がいらない6MTであり、なおかつ、車両価格がけっこう高めとなる場合が多い「MTの低走行モデナ」のなかではかなりお手頃といえる1250万円。もちろん万人向けな車ではないが、この種の車を狙っている人からすれば「お買い得!」と感じられるプライスであるはずだ。
そして(MTのモデナとしては)ロープライスであるにもかかわらず、いわゆるチャレンジグリルやカーボンスポーツシートなどのオプション装備は充実していて、低走行物件だけあって内外装の美観はほぼ完璧。
さらに取材車両の販売店である、アリアガレージの自社工場で工場長を務めているのは、「跳ね馬を2000台直したメカによる フェラーリ・メカニカル・バイブル」(講談社)という著書もある平澤雅信氏。物事に「絶対」はないが、「かなり心強い!」とは断言できるコンビネーションだと言えよう。
要するにこの取材車両は「かなり好条件な割にはずいぶんとお手頃価格なフェラーリ」ということであり、問題点は、「ところであなたは360モデナのデザインがお好きですか?」ということだけなのである。
最後の問いに対する答えが「いや、あまり好きではないですね」という人に筆者から申し上げることは、特にない。
だが「はい、実はけっこう好きなんですよ」という人がいらっしゃったなら、その方には、老婆心から「なるべく早く現車を見に行った方がいいですよ。たぶん、すぐ売れちゃうと思いますから!」と申し上げたい筆者である。
▼検索条件
フェラーリ 360モデナ(初代)×全国自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。
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