フナタン

情報誌 カーセンサー8月号(2020年6月19日発売号)では「クルマは、買うまでが楽しい!」と題した特集を掲載しています。

買う・買わないに関係なくついつい欲しい車を探してしまう。そんな車好きの性にフォーカスした特集です。

今回は特集に連動して、中古車評論家の伊達軍曹に「お気に入り」ベスト3を紹介してもらいました!
 

伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。

妻のことは愛しています。ただ刺激も欲しいのです。

2012年頃から「輸入中古車評論家」との看板を掲げて、中古の輸入車に関する文筆商売を続けていた筆者だった。

しかし2年ほど前に人生初の新車、それも「国産新車」を買ったことですっかり宗旨変えと相成り、現在は2017年式スバル XV 2.0i-Lアイサイトという我が愛機を、それこそ愛している。そこに不満のようなものはいっさいない。本当に、ない。

だが、人間というのはわがままなものだ。

そのように「不満はいっさいない! むしろ愛しまくってるぜ!」というニュアンスの本妻=スバルXVがありながら、時おり別の車が無性に欲しくなる瞬間もある。具体的には、自宅からさほど遠くはない、かといって近くもない場所まで、自分ひとりでXVを運転しているときだ。

荷物を載せたり、家人を助手席に乗せてゆったりめに走る分には、あるいはけっこう遠い場所まで走っていく分には、ウルトラ素晴らしい現行型スバル XVというSUVである。
 

スバル XV▲「本妻」の現行型スバル XV

だが、自分ひとりで「ちょっとそこまで」ぐらいのニュアンスの移動をする際には、つくづく思うのだ。「もっと小さい車でも十分だな」「こんなに乗り心地良くなくて構わないし、アイサイトとかも付いてなくていいので、何かとパンチの利いた走りが楽しめる車で移動したいな」と。

現行型スバル XVという「本妻」と別れるつもりはない。いや、仮に別れたとしても、わたしは「次の本妻」として、おそらくは次期型のスバル レヴォーグ STIスポーツという車を選ぶだろう。それぐらい、スバル車の各種魅力にハマっている。

だが、それはそれとして、わたしは「本妻とはまた別の誰か」とも付き合いたいのだ。

無論、そういったことを実生活でやってしまうと、何かと差し障りがある。かなり、ある。

だが「車」でやる分には何の問題もない。あるとすれば、「カネの問題」だけだ。

ということでわたしの「お気に入り」には今、現行型スバル XVとは真逆のキャラクターを備えた物件が登録されている。ベスト3を順番に紹介していこう。
 

第3位:スマート ロードスター

スマート ロードスター

これが好きな人は死ぬほど好きなのだが、一般的にはまるで不人気であったため、割とあっという間に廃番となってしまったスマートの2シータースポーツ。

同世代のスマート クーペに積まれたモノより強力な0.7L直3ターボエンジンをリアに搭載し、後輪を駆動する。これがまだ新車として販売されていた頃、広報用の車両に箱根の山で乗ったが、そのミズスマシのような走行フィールには最大級の感銘を受けた。スバル XVではなくコレで歯医者やイオンに行けば、通院や買い物すらも「エンターテインメント」になること必至であろう。

こちらの物件はフルノーマルの低走行車で、カーセンサーnetの画像を見た限りでは、各部コンディションにはウルトラ良好そうな気配がビンビンにただよっている。ちなみにスマート ロードスターの流通量は減少の一途をたどっており、6月中旬現在で全国わずか10台。絶滅してしまう前に、ぜひこの上モノを「我が軍の局地戦闘機」として制式採用したいものだ。
 

▼検索条件

スマート ロードスター(2003年9月~2006年3月) 生産モデル×全国

第2位:ローバー ミニ クーパー

ローバー ミニクーパー

ミズスマシのような走行フィールが楽しめる車、あるいは「歯医者やイオンに行くことすらエンターテインメントに変わる車」といえば、英国の元祖ミニも忘れるわけにはいくまい。当然それも、わたしの「お気に入り」に入っている。

こちらの物件は東京都世田谷区の某ミニ専門店が販売しているもので、お店のこだわりっぷりについては以前の取材により、自身の目で確かめている。中古車選びはお店選び。ここが扱っているミニであれば、年式的に古くても不安はないと、個人的には確信している。

しかしこの99年式クーパーは、わたしが好む「フルノーマル」ではない。というか、むしろ大々的に改造された1台である。

具体的には、ミニの純正色ではなくポルシェ 911に使われていた「ファッショングレー」というボディカラーに全塗装されており、インテリアも、どことなく初代911っぽい千鳥格子のハーフレザーシートに交換済み。ウッドパネルも、あえてブラックに変更されている。

その他もろもろの処理を含め、要するにこの物件は「もしもミニをドイツ車として解釈したならば……」というテーマで実験的に作られたものなのだろう。

で、筆者はこの物件を生で見たことがあるのだが、その仕上がりはきわめてハイセンスかつハイクオリティ。正直、わたしは今すぐこのミニにひとりで乗り込み、都庁までパスポートの更新に行きたいと思っている。このミニであれば、退屈な役所へ行く道すがらさえもバラ色になるはずだ。
 

▼検索条件

ローバー ミニ(1983年5月~2001年6月) 生産モデル×全国

第1位:ホンダ ビート

ローバー ミニクーパー

第2位のミニは「かなり欲しい!」と思っているのだが、正直ちょっと高いのが玉にキズ。いや、クオリティから考えればぜんぜん高くはないのだが、あくまで「わたしのおサイフ事情からすると高い」ということである。

しかしこのホンダ ビートであれば、支払総額は138.7万円。わたしのおサイフでもギリギリなんとかなる金額だ。

ホンダ ビートはご存じのとおり、1991年から1996年にかけて製造販売されたホンダの軽ミッドシップオープン2シーター。

量産ミッドシップ車としては世界初のフルオープンモノコックボディであり、サスペンションは四輪独立懸架のストラット。そして軽としては初めて四輪ディスクブレーキを採用し、その後輪ブレーキはプレリュードの物であるという(ちなみにルームミラーはNSXと同じ)、何もかもが異例の軽スポーツであり、紛れもない「名車」だった。

……ということを知識としては知っていたのだが、過日、カーセンサーnetとはまったく関係ない取材で茨城県の某ビート専門店の試乗用ビートに乗らせてもらい、わたしはぶっ飛んだ。

しっかりと整備されたホンダ ビートは、2020年の今乗ってもまさに「名車!」としか言いようがないフィールを備えており、個人的には「……この快感は、往年のポルシェ 911に勝るとも劣らないんじゃないか?」などと思ってしまったのだ。

まぁポルシェ 911との比較はさておき、この物件はそんなビート専門店がエンジンのヘッドガスケットとタイミングベルトを交換し、その他モロモロもしっかり整備して納車するという1台。素晴らしくないわけがないと、濃厚に予想される。

このビートがあれば……と、わたしは夢想する。

長距離移動をする際や、何らかの荷物を載せる必要があるとき、あるいは家人を乗せたり、ただ単に「ゆったりめに走りたいな」と思うときは、“本妻”であるスバル XVを積極的に使うだろう。

だがそれ以外のケースでは――ほぼすべての移動に、思わずこのビートを使ってしまう可能性もある。それほど、完調なホンダ ビートは素晴らしい。

……なんて書いてたら、本当に欲しくてたまらなくなってきた。明日、買いに行こうかな……。
 

▼検索条件

ホンダ ビート(1991年5月~1996年12月) 生産モデル×全国
文/伊達軍曹、写真・イラスト/日刊カーセンサー