メルセデス・ベンツ 123型 ▲人気絶版モデル「W123型」など1970~80年代のメルセデス・ベンツの車両を取り扱う専門販売店にお邪魔してきた

人気絶版モデル「W123型」を買うための極意を専門店に聞いてみた

2020年3月19日発売のカーセンサー5月号では、「絶版厳選6モデルを購入目線で徹底リサーチ 今乗ってもカッコいい!」と題した特集を掲載している。

「何事も流行は20年周期で繰り返される」ということで、最近は自動車の世界でも、20年ほど前のモデルに「今乗りたい!」と考える人が増加中。そんなトレンドを背景に、人気のネオクラシック系6モデルに関する徹底的なバイヤーズガイドを展開している大特集だ。

とはいえ紙の雑誌にはどうしても「紙幅の制限」がある。そしてなおかつビギナー向けに特化した特集内容であったため、取材はしたものの、誌面では紹介できなかったネタも実は山ほど残っている。

そこでここでは、同特集ではほんの少々しか掲載できなかったW123型メルセデス・ベンツについての「エディターズカット/完全版」を、非ビギナーな各位に向けてお届けしたいと思う。

今回お邪魔したのは、東京都足立区にある1970~80年代のメルセデス・ベンツの車両を専門に取り扱っている「5sense」というお店。お話を伺ったのが代表の水上拓さん。
 

5sence▲「5sense」
水上拓さん

5sense 代表

水上拓さん

W123型を中心とする1970~80年代のメルセデス・ベンツを専門に扱う東京都足立区の販売店「5sense」代表。

伊達軍曹

インタビュアー

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。ちなみに独立前はドイツ車専門誌の編集者としてW123に関する取材もしばしば行っていた。

伊達軍曹
伊達軍曹

どうも、お久しぶりです(※前職の関係で水上代表と面識あり)

水上さん
水上さん

久しぶりですね。今日は何ですか?

伊達軍曹
伊達軍曹

端的に言いますと、これからW123(セダン)またはS123(ステーションワゴン)、あるいはC123(クーペ)を買おうかな、どうしようかな? なんて考えている人向けに、専門店としてのアドバイスをいただければ、と。

水上さん
水上さん

う~ん、S123(ステーションワゴン)はちょっと難しいかな。

伊達軍曹
伊達軍曹

人気のワゴンですが、ダメですか?

水上さん
水上さん

ダメってことはないんだけど、ご存じのとおり正規輸入車のS123はディーゼルしかないじゃない? それだと登録できるエリアが限られちゃうし、これまたご存じのとおり、並行輸入されたガソリンエンジン版のS123は、程度イマイチなものが多いしね。

伊達軍曹
伊達軍曹

そ、そうでしたっけ?

水上さん
水上さん

……もう忘れたの? あとはまぁS123っておしゃれだからサーファーさんとかに愛用されてたんだけど、その後ロクに整備しないで乗りっぱなしにされたり、潮風の影響を受けたりなんかして、いいモノがどんどん少なくなってるんですよ。

伊達軍曹
伊達軍曹

なるほど……。じゃ、買うとしたらW123(セダン)かC123(クーペ)だと?

水上さん
水上さん

そうですね。でもC123は数が少なくて、全体の5%ぐらいしかないって感じだから、やっぱりW123の中から探すのがいいんじゃないですか?

伊達軍曹
伊達軍曹

なら、W123を探すときは「どこ」をチェックすればいいんですかね

水上さん
水上さん

細かく言えばもちろんいろいろあるんだけど、わかりやすいというか、基本とするべきは「サビ」と「内装」でしょうね。

伊達軍曹
伊達軍曹

なるほど。ではまず「サビ問題」から解説をお願いします。

水上さん
水上さん

最終年式でも35年以上前の車だから、多少サビてるのはいいんですよ。ある意味当たり前というか。例えばドアの内側とか、ホイールハウス内の後ろの方とかがちょっとサビてるぐらいだったら、それって別に大問題ではないです。

メルセデス・ベンツ 123型
メルセデス・ベンツ 123型▲ドアの内側とホイールハウス内の後ろの方。こちらの個体は目立つサビもない
伊達軍曹
伊達軍曹

逆に「サビてると大問題」と言える箇所は?

水上さん
水上さん

まずは「フロア」ですね。経験上、フロアがサビてるW123はその他の部分もサビサビである可能性が高い。もうね、ハッキリ言って解体屋さんに直行させるべきレベルですよ。カーペットをめくった先にあるフロアがもしもサビサビだったら、絶対に買わない方がいいですね。

伊達軍曹
伊達軍曹

ううむ……。

水上さん
水上さん

あとはココ(と言ってCピラーを指差しながら)、ココを板金塗装したw123の中には、板金のときに盛ったパテがやせて陥没しちゃってる個体があります。そういった個体はたいていの場合、そこだけじゃなくて「ボディの鉄そのもの」が弱ってるから、手を出さない方がいいでしょう。

メルセデス・ベンツ 123型▲こちらがCピラー。ここが(パテが痩せて)陥没している個体は避けるのが吉


伊達軍曹
伊達軍曹

了解です。あと、さっき言ってた「内装」については?

水上さん
水上さん

これはもう単純で、「内装がキレイかどうか」ってことですよ。内装っていうのは、その車の生い立ちというか「使われ方」が如実に現れますからね。新車時から30年以上たってるのにまだまだキレイな内装っていうのは、歴代のオーナーからそれなりにちゃんと扱われてきた証拠みたいなものですよ。

伊達軍曹
伊達軍曹

そんなもんですか?

水上さん
水上さん

そんなもんです。自分もこれまで星の数ほどのW123を見てきましたけど、「内装はキレイなのに機関部分はダメダメ」っていうW123は、1台も見たことがない

伊達軍曹
伊達軍曹

なるほどぉ……。でも、その他モロモロの機械、例えばですけどエアコンとか、ショックアブソーバーとかデフとか、そういった部分のコンディションも気にした方がいいわけですよね?

メルセデス・ベンツ 123型
水上さん
水上さん

それはもちろんそうなんだけど、でも機械って直せるじゃない?

伊達軍曹
伊達軍曹

確かに、基本的には部品を交換してやれば直りますね。

水上さん
水上さん

うん。W123の場合は(一部を除いて)まだまだ部品供給も問題ないし。あと機械部品はさ、「どのくらいの費用がかかるか?」とか「直すのにかかる時間はどれくらいか?」というのが、事前におおむねわかるわけですよ。

伊達軍曹
伊達軍曹

確かにそうですね。例えばエアコンであれば「エキスパンションバルブ交換で●万円ぐらい、作業完了までにだいたい●日」みたいなのが、ざっくりとは読めますね。

水上さん
水上さん

でしょ? だから、まずは納車前に部品交換をしてやればいい。それでも、乗ってるうちに必ずどこかの部品が寿命を迎えると思いますが、その場合も「部品交換」をすればいいんですよ。そうすれば、素性の悪くないW123だったら普通に直りますから。

伊達軍曹
伊達軍曹

でも、その「乗ってるうちに必ずどこかが壊れる」というのは年式的に仕方ないと思いますが、その際の修理代がウン十万円とか、極端な話「ご請求額は100万円です」みたいになったら困ってしまうのですが?

水上さん
水上さん

そんなにかかりませんよ(笑)。もちろん一概には言えない話であり、「素性の良いW123であれば」という条件付きですが、自分の経験から言うと「1回の修理で10万円かかる」というケースは非常に少ない。だいたいが「ウン万円」ぐらいだと思っていただいてOKかな?

伊達軍曹
伊達軍曹

そんなもんですか?

水上さん
水上さん

そんなもんなんですよ。……でもこれが機械部品じゃなくて「フロアのサビ」だと、先ほど言ったとおり解体屋さんに直行させるべきって話になるし、ボロボロの内装も、直すとなるとコストがぜんぜん読めない。内装って、とにかく高いんですよ。

メルセデス・ベンツ 123型
メルセデス・ベンツ 123型▲内装のコンディションは、その個体が「どう扱われてきたか」の履歴書のようなもの。ちなみにこちらの個体の内装は超絶キレイ


伊達軍曹
伊達軍曹

なるほど。ならば、そのあたり(内装の程度とフロアやCピラーなどのサビ)に気をつけて選べば、おおむね大丈夫ということですね?

水上さん
水上さん

少なくとも「ババ」は引かないはず。あとは「直すとなると高くつく機械」であるエンジンやAT、マフラーなんかのコンディションも当然だけどチェックしながら選べば、悪くないW123が買えると思いますよ。

伊達軍曹
伊達軍曹

最近はどんな人がW123を買っていくんですか? 私がドイツ車専門誌の編集者だった10年以上前は、極論すると「車好きのおっさんかサーファー」みたいな感じでしたけど。

水上さん
水上さん

そういった人からも相変わらず人気だけど、最近は20代とか30代ぐらいの若い人も買っていかれますよ。「昭和っぽい感じ」が逆に新鮮なんでしょうね。

伊達軍曹
伊達軍曹

レトロ感、ありますからね。

水上さん
水上さん

うん。あとは外国の方からの問い合わせやご来店も最近は多いかな。先日も、オーストラリアの若い方がいらして「コレ買いたい!」とおっしゃったんですが、結局、輸出やら通関やらの作業はそんなに簡単ではないということを理解され、帰っていかれましたけど。

伊達軍曹
伊達軍曹

W123って世界的にもけっこう人気なんですね?

水上さん
水上さん

まぁどのぐらいの温度感で「人気」というかはさておき、仕入れるに値する、つまり我々専門店がそこからちゃんと仕上げられる状態のW123が減っていることは確かです。……いいモノがまだあるうちにW123に乗って、この独特の魅力を知っていただきたいですよね。

伊達軍曹
伊達軍曹

かなりレトロなのに、エアコンとかパワーウインドウ、パワステなんかの近代的な装備が実は普通に付いてるっていう、希有な存在ですからね。……了解です。本日はありがとうございました!

水上さん
水上さん

どういたしまして!

文/伊達軍曹、写真/早川佳郎

▼検索条件

メルセデス・ベンツ ミディアムクラス(1976~1985年生産モデル)×全国

▼検索条件

メルセデス・ベンツ ミディアムクラスワゴン/Tシリーズ(1976~1985年生産モデル) ×全国

▼検索条件

メルセデス・ベンツ ミディアムクラスクーペ(1976~1985年生産モデル)×全国