40年以上の時を経て今、W123型のメルセデス・ベンツに乗る極意を聞いてきた
2020/04/09
人気絶版モデル「W123型」を買うための極意を専門店に聞いてみた
2020年3月19日発売のカーセンサー5月号では、「絶版厳選6モデルを購入目線で徹底リサーチ 今乗ってもカッコいい!」と題した特集を掲載している。
「何事も流行は20年周期で繰り返される」ということで、最近は自動車の世界でも、20年ほど前のモデルに「今乗りたい!」と考える人が増加中。そんなトレンドを背景に、人気のネオクラシック系6モデルに関する徹底的なバイヤーズガイドを展開している大特集だ。
とはいえ紙の雑誌にはどうしても「紙幅の制限」がある。そしてなおかつビギナー向けに特化した特集内容であったため、取材はしたものの、誌面では紹介できなかったネタも実は山ほど残っている。
そこでここでは、同特集ではほんの少々しか掲載できなかったW123型メルセデス・ベンツについての「エディターズカット/完全版」を、非ビギナーな各位に向けてお届けしたいと思う。
今回お邪魔したのは、東京都足立区にある1970~80年代のメルセデス・ベンツの車両を専門に取り扱っている「5sense」というお店。お話を伺ったのが代表の水上拓さん。
5sense 代表
水上拓さん
W123型を中心とする1970~80年代のメルセデス・ベンツを専門に扱う東京都足立区の販売店「5sense」代表。
インタビュアー
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。ちなみに独立前はドイツ車専門誌の編集者としてW123に関する取材もしばしば行っていた。
どうも、お久しぶりです(※前職の関係で水上代表と面識あり)
久しぶりですね。今日は何ですか?
端的に言いますと、これからW123(セダン)またはS123(ステーションワゴン)、あるいはC123(クーペ)を買おうかな、どうしようかな? なんて考えている人向けに、専門店としてのアドバイスをいただければ、と。
う~ん、S123(ステーションワゴン)はちょっと難しいかな。
人気のワゴンですが、ダメですか?
ダメってことはないんだけど、ご存じのとおり正規輸入車のS123はディーゼルしかないじゃない? それだと登録できるエリアが限られちゃうし、これまたご存じのとおり、並行輸入されたガソリンエンジン版のS123は、程度イマイチなものが多いしね。
そ、そうでしたっけ?
……もう忘れたの? あとはまぁS123っておしゃれだからサーファーさんとかに愛用されてたんだけど、その後ロクに整備しないで乗りっぱなしにされたり、潮風の影響を受けたりなんかして、いいモノがどんどん少なくなってるんですよ。
なるほど……。じゃ、買うとしたらW123(セダン)かC123(クーペ)だと?
そうですね。でもC123は数が少なくて、全体の5%ぐらいしかないって感じだから、やっぱりW123の中から探すのがいいんじゃないですか?
なら、W123を探すときは「どこ」をチェックすればいいんですかね
細かく言えばもちろんいろいろあるんだけど、わかりやすいというか、基本とするべきは「サビ」と「内装」でしょうね。
なるほど。ではまず「サビ問題」から解説をお願いします。
最終年式でも35年以上前の車だから、多少サビてるのはいいんですよ。ある意味当たり前というか。例えばドアの内側とか、ホイールハウス内の後ろの方とかがちょっとサビてるぐらいだったら、それって別に大問題ではないです。
逆に「サビてると大問題」と言える箇所は?
まずは「フロア」ですね。経験上、フロアがサビてるW123はその他の部分もサビサビである可能性が高い。もうね、ハッキリ言って解体屋さんに直行させるべきレベルですよ。カーペットをめくった先にあるフロアがもしもサビサビだったら、絶対に買わない方がいいですね。
ううむ……。
あとはココ(と言ってCピラーを指差しながら)、ココを板金塗装したw123の中には、板金のときに盛ったパテがやせて陥没しちゃってる個体があります。そういった個体はたいていの場合、そこだけじゃなくて「ボディの鉄そのもの」が弱ってるから、手を出さない方がいいでしょう。
了解です。あと、さっき言ってた「内装」については?
これはもう単純で、「内装がキレイかどうか」ってことですよ。内装っていうのは、その車の生い立ちというか「使われ方」が如実に現れますからね。新車時から30年以上たってるのにまだまだキレイな内装っていうのは、歴代のオーナーからそれなりにちゃんと扱われてきた証拠みたいなものですよ。
そんなもんですか?
そんなもんです。自分もこれまで星の数ほどのW123を見てきましたけど、「内装はキレイなのに機関部分はダメダメ」っていうW123は、1台も見たことがない
なるほどぉ……。でも、その他モロモロの機械、例えばですけどエアコンとか、ショックアブソーバーとかデフとか、そういった部分のコンディションも気にした方がいいわけですよね?
それはもちろんそうなんだけど、でも機械って直せるじゃない?
確かに、基本的には部品を交換してやれば直りますね。
うん。W123の場合は(一部を除いて)まだまだ部品供給も問題ないし。あと機械部品はさ、「どのくらいの費用がかかるか?」とか「直すのにかかる時間はどれくらいか?」というのが、事前におおむねわかるわけですよ。
確かにそうですね。例えばエアコンであれば「エキスパンションバルブ交換で●万円ぐらい、作業完了までにだいたい●日」みたいなのが、ざっくりとは読めますね。
でしょ? だから、まずは納車前に部品交換をしてやればいい。それでも、乗ってるうちに必ずどこかの部品が寿命を迎えると思いますが、その場合も「部品交換」をすればいいんですよ。そうすれば、素性の悪くないW123だったら普通に直りますから。
でも、その「乗ってるうちに必ずどこかが壊れる」というのは年式的に仕方ないと思いますが、その際の修理代がウン十万円とか、極端な話「ご請求額は100万円です」みたいになったら困ってしまうのですが?
そんなにかかりませんよ(笑)。もちろん一概には言えない話であり、「素性の良いW123であれば」という条件付きですが、自分の経験から言うと「1回の修理で10万円かかる」というケースは非常に少ない。だいたいが「ウン万円」ぐらいだと思っていただいてOKかな?
そんなもんですか?
そんなもんなんですよ。……でもこれが機械部品じゃなくて「フロアのサビ」だと、先ほど言ったとおり解体屋さんに直行させるべきって話になるし、ボロボロの内装も、直すとなるとコストがぜんぜん読めない。内装って、とにかく高いんですよ。
なるほど。ならば、そのあたり(内装の程度とフロアやCピラーなどのサビ)に気をつけて選べば、おおむね大丈夫ということですね?
少なくとも「ババ」は引かないはず。あとは「直すとなると高くつく機械」であるエンジンやAT、マフラーなんかのコンディションも当然だけどチェックしながら選べば、悪くないW123が買えると思いますよ。
最近はどんな人がW123を買っていくんですか? 私がドイツ車専門誌の編集者だった10年以上前は、極論すると「車好きのおっさんかサーファー」みたいな感じでしたけど。
そういった人からも相変わらず人気だけど、最近は20代とか30代ぐらいの若い人も買っていかれますよ。「昭和っぽい感じ」が逆に新鮮なんでしょうね。
レトロ感、ありますからね。
うん。あとは外国の方からの問い合わせやご来店も最近は多いかな。先日も、オーストラリアの若い方がいらして「コレ買いたい!」とおっしゃったんですが、結局、輸出やら通関やらの作業はそんなに簡単ではないということを理解され、帰っていかれましたけど。
W123って世界的にもけっこう人気なんですね?
まぁどのぐらいの温度感で「人気」というかはさておき、仕入れるに値する、つまり我々専門店がそこからちゃんと仕上げられる状態のW123が減っていることは確かです。……いいモノがまだあるうちにW123に乗って、この独特の魅力を知っていただきたいですよね。
かなりレトロなのに、エアコンとかパワーウインドウ、パワステなんかの近代的な装備が実は普通に付いてるっていう、希有な存在ですからね。……了解です。本日はありがとうございました!
どういたしまして!
▼検索条件
メルセデス・ベンツ ミディアムクラス(1976~1985年生産モデル)×全国▼検索条件
メルセデス・ベンツ ミディアムクラスワゴン/Tシリーズ(1976~1985年生産モデル) ×全国▼検索条件
メルセデス・ベンツ ミディアムクラスクーペ(1976~1985年生産モデル)×全国【関連リンク】
この記事で紹介している物件
あわせて読みたい
- 【試乗】メルセデス・ベンツ 新型Sクラス│”新時代の車”を堪能できるラグジュアリーセダンの最高峰!
- 植田圭輔さんが、真っ赤なポルシェで緑の中を駆け抜ける!
- 手にするものはすべてがアート。自然を愛するアーティストは世界で1台だけのメルセデス・ベンツ Gクラスに乗る
- アルピナ B8 4.6リムジン。それはある意味「永遠の命」をもつ希少名車だった。【NEXT EDGE CAR】
- 小沢コージが自動車界の勇者・救世主を探すべく「激レア変態車」の取引現場、白金の魔窟を直撃!【カーセンサーニッチ】
- メルセデス・ベンツの“異端児”CLAシューティングブレークに乗るとテリー伊藤に胸毛が生える!?
- おでかけは、あえて2台で。家族のようなランドローバー ディフェンダー90とルノー カングー
- 「燃費」から「愛着」へ。エコ視点で選んだのは、中古のボルボ XC60だった
- 本場ドイツの名門レース「DTM」が、再び注目を集めるワケ!【EDGE MOTORSPORTS】
- 絶版クラシックモデルが今でも現役、オーバークオリティで時代を先導するセダンの最高峰 メルセデス・ベンツ Sクラス【Back to Sedan】