日産 ジューク▲下記ではスポーツカーとしての魅力を主に紹介したが、日産 ジュークの大きな魅力のひとつはファッション性もある。台数が多く、価格も手頃で選びやすいはずだ

戦国時代のSUV界で短い時間だが光り輝いた3台

流行は移ろいやすいもの。いくらSUVが人気といっても、ちょっと長い目で見れば、実は少しずつトレンドが変わっていることに気づく。

そもそも「SUV」という言葉は、北米でBMW X5やレクサス RXが人気になった頃から使われるようになった。

それまで使われていた「クロカン四駆」との差別化のためだ。

クロカン四駆とは、クロスカントリー4WDから生まれた言葉で、その言葉からオフロードをガンガン走れるというイメージが強かった。

対してSUVはスポーツ・ユーティリティ・ビークル(BMWはスポーツ・アクティビティ・ビークル=SAVと今でも呼ぶ)の略で、まあサーフィンやスノボなどスポーツを楽しみに行く際に、避けては通れないオフロードや雪道“も”走れちゃいますよ、って感じだろうか。

ともあれ当初のSUVは、特に日本ではBMW X5やレクサス RX(当時の日本名はハリアー)クラスがSUVの代表格となり、他社も積極的にそのクラスか、それより大きなモデルを投入していた。

今や気がつけば人気のSUVは、トヨタ ライズ/ダイハツ ロッキーなどに代表されるコンパクトクラスだ。

様々なSUVが登場した、まさに戦国時代とも言える厳しい競争の中で、残念ながら1代限りで散っていったモデルもある。

今回はそんな中から、日産が2010年以降に生産を中止したSUVを3モデル紹介しよう。

どれも「生産中止なの?もったいないなぁ」と思わずにはいられない、今見ても魅力ある個性派モデルばかりだ。

コンパクトSUVのスポーツカーは今なお新鮮
日産 ジューク(2010年6月~2019年12月)

日産 ジューク▲「コンパクトなスポーツカー、しかもSUV」というジュークの魅力を最も色濃く表したのがNISMO RS。CVTのマニュアルモードは8段もある。レースの知見を生かしたエアロパーツもたっぷり採用されている
日産 ジューク▲NISMO RSのスピードメーターは240km/hまで刻まれている。シートはレカロ社と共同開発された専用バケットシートとなる。ベースのジューク自体、バイクのタンクをモチーフとしたセンターコンソールなど、インテリアも個性的だ

全長約4.3mと今人気のライズ/ロッキーよりはやや大きいけれど、いまだに販売台数トップ10の常連組のトヨタ C-HRやホンダ ヴェゼルとほぼ同じサイズのジューク。

だからてっきり次期型が出るかと思いきや、後継はキックスなる新型車に切り替わるらしい。

ちなみにヨーロッパでも販売されており、かの地では昨年めでたく2代目が登場。しかし、日本には入ってこないのだ……。

ジュークを語るうえでは外すことができないのが、スポーツモデルの存在だろう。

標準のジュークは1.5LエンジンにCVTという組み合わせなのだが、登場して間もなく1.6Lターボ×4WDの1.6GT FOURが追加される。

この4WDは「ALL MODE 4X4-i(トルクベクトル付)」という、運転操作や状況に応じて最適なトルクを後輪に送り、コーナリング時には後輪外側に大きなトルクを伝えてスポーティな走りが楽しめる4WDだ。

そして2013年には1.6GT FOURをベースにした、ジュークNISMOが登場。1.6Lエンジンは最高出力が190psから200psに高められ、CVTのマニュアルモードは6速から7速へと変更。足回りも専用チューニングが施されている。

さらに2014年11月には214psまで高められたNISMO RSが追加された。足回りやALL MODE 4X4-iもそれに合わせてスポーティな設定が施されている。

デビュー時の車両本体価格は、1.5Lモデルが162万~198万4500円、1.6GT FOURが245万1750円、NISMOが285万750円、NISMO RSが343万4400円。

全体では台数が多く、原稿執筆時点(2020年3月16日)で1200台以上見つかった。うち1.6GT FOURは89台で支払い総額約70万円から、NISMOは83台で約100万円から、NISMO RSは25台で約100万円から見つけることができる。

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日産 ジューク(初代)×全国

ヨーロッパ車っぽい優しい乗り心地が魅力
日産 デュアリス(2007年5月~2014年3月)

日産 デュアリス▲オールモード4×4は、簡単に2WD/4WDの切替ができる他、走行状況に応じて前後トルクを100:0から約50:50の間で可変するオートモードや、50:50に固定するロックモードを備えていた
日産 デュアリス▲1037mm×880mmという大開口ガラスルーフが一部グレードに標準装備された。ラゲージ容量は9インチ相当のゴルフバッグを2個収納できるなど十分な収納量だ

ヨーロッパを主な市場として開発されたSUVがキャシュカイ。その日本市場向けがデュアリスだ。当初はイギリスで、その後、日本向けは九州工場で生産された。

プラットフォームは、後に登場した2代目エクストレイルと共有。

販売当初は、悪路走破性を重視したエクストレイルと、オンロード重視のデュアリスという役割分担だった。

しかし、ジュークとほぼ同じサイズで全長約4.3m(エクストレイルは約4.5m)と、上と下に挟まれてしまい結局ヨーロッパでは2代目キャシュカイへと進化したが日本にはやってこなかった。

搭載されたエンジンは2Lで、2WDと4WDがある。トランスミッションはいずれも6速マニュアルモード付きCVTだ。

オンロード重視とはいえ、最低地上高は205mmと同サイズのC-HR 4WDモデルの155mmより高いし、4WDシステムはエクストレイルのオールモード4×4iより一世代前とはいえオンロードからオフロード、雪道までこなせる実力派。

エクストレイルよりはコンパクトで、ジュークよりはエンジンが大きい分、走りに余裕がある。

また、ヨーロッパの名門ザックス社と共同開発したショックアブソーバーがもたらす、欧州車のような優しい乗り心地が魅力のSUVだ。

デビュー時の車両本体価格は、195万3000円~243万750円。

中古車は原稿執筆時点で約180台見つかった。走行距離が10万km超なら支払総額50万円以下で、5万km未満でも100万円以下で十分狙える。

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最新の快適装備が充実したSUVがお手頃価格で手に入る
日産 スカイラインクロスオーバー(2009年7月~2016年6月)

日産 スカイラインクロスオーバー▲コーナリングの際に曲がる方向を積極的に照らすアクティブAFSやサイドブラインドモニター、バックビューモニターを標準装備。4WDシステムにはGT-R由来の、前後トルクを電子制御するアテーサE-TSが採用されている
日産 スカイラインクロスオーバー▲本木目が採用されたラグジュアリーなインテリア。フロントは電動シートで、本革仕様も選べた。後席はラゲージルームからスイッチを押せば背もたれを前倒しできる。復帰させるのも電動だ

北米でインフィニティEX35として販売されていたモデルの、日本仕様がスカイラインクロスオーバーだ。

全長約4.6mのボディに、当時のスカイライン同様3.7LのV6エンジンと7速ATが組み合わされFRの2WDと4WDが用意された。

スカイラインと名乗る以上、日本仕様は徹底的に走行性能が極められ、FRらしいハンドリングと、セダンやクーペよりも優しい乗り心地にセッティングされた。

当時のスカイライン3車種(セダン・クーペ・クロスオーバー)の中で、最もラグジュアリーなモデルとして装備が充実しているのもこの車の特徴だ。

BOSEサウンドシステムは全車に標準装備。同社独自のアラウンドビューモニターを2WD/4WDともタイプPに標準装備した。

さらに当初はオプションではあったが、停止まで行うインテリジェントクルーズコントロール(ACC)や、ステアリング操作のアシストも行う車線逸脱防止支援システム(LDP)も用意されていた。

2012年12月には、ACCやLDPなど安全先進機能が全車標準装備となり魅力を増した。

しかし、時代はダウンサイジングターボが主流に。大排気量の3.5LのV6エンジンを積み、さらに豪華装備による高いプライス(デビュー時の車両本体価格は420万~499万8000円)があだとなり、1代限りで日米ともに販売が終了した。

原稿執筆時点では約50台が見つかり、最安値は支払総額約73万円。先進技術を搭載した2013年式以降は支払総額約150万円から見つかった。台数が少ないので、気になる車があればすぐ行動を。

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日産 スカイラインクロスオーバー(初代)×全国
文/ぴえいる、写真/日産、篠原晃一

ぴえいる

ライター

ぴえいる

『カーセンサー』編集部を経てフリーに。車関連の他、住宅系や人物・企業紹介など何でも書く雑食系ライター。現在の愛車はアウディA4オールロードクワトロと、フィアット パンダを電気自動車化した『でんきパンダ』。大学の5年生の時に「先輩ってなんとなくピエールって感じがする」と新入生に言われ、いつの間にかひらがなの『ぴえいる』に経年劣化した。