絶滅危惧車のMRスパイダーは、「雨漏り上等!」な幻のオープンカーだった!
2020/03/19
製造台数はたった92台の幻のオープンカー
今回、紹介するトヨタ MRスパイダーとはSW20型のMR2というモデルをベースにし、トヨタテクノクラフトがオープンカー仕様にした特装車だ。
まず、ベースのトヨタ MR2について紹介しよう。
トヨタ MR2は、1984年から1999年の間に販売されていた、日本で初めての市販化された2人乗りミッドシップ車だった。トヨタがもつ多彩なラインナップからパーツを寄せ集めて作ることで、価格を抑えていたことも特徴的だった。
それゆえ、海外のメディアからは「Poor man’s Ferrari(貧乏人のフェラーリ)」と評された。これは批判的な評論というより、「手頃なミッドシップ・スポーツカーで、フェラーリに乗った気分にさせてくれる」というポジティブな意味合いの評価であった。
1989年に2代目のMR2が登場し、初代よりもボディサイズは大きくなり車内も広くなり、エンジンも大きくした。
バブル期ということもあって、より高級に、より快適に、という市場の声に応えたのだろう。
ボディ形状は初代同様、クーペとTバールーフ(ルーフパネルの取り外しが可能だが骨組みが1本残る)がラインナップされていた。
2代目MR2はデビューから、合計4回のマイナーチェンジが施された。
ここで紹介する、MRスパイダーが投入されたのは1996年の3回目のマイナーチェンジ時からだった。
2LNAエンジンはそれまでの最高出力165psから170ps(AT)/180ps(MT)まで引き上げられ、ABSはスポーツABSへと進化。ストラットタワー部に金属プレートを入れることで剛性を高め、さらにスポーティーな乗り心地にこだわった。
ただ、バブル崩壊によりスポーツカーそのものの販売台数が大きく低下してしまい、MR2は受注生産へと変わった。
MRスパイダーはMR2のノンターボバージョンである「Gリミテッド」をベースに、トヨタテクノクラフトでオープンボディに架装したモデルだ。合計92台しか生産されなかったので、「幻の車」と呼びたくなる……。
MR2のTバールーフでもオープンエアっぽさは味わえたが、MRスパイダーではリアウウインドウからごっそりなくなり、開放感の質が異なっていた。
簡易的な幌はもつもののオープンでの使用が前提となっており、カタログには「雨漏りする可能性」について注意書きがあるほどだ。
(以下原文“本車両はオープン状態で使用することを前提とした簡易幌仕様です。ソフトトップを掛けた状態でも一部雨水が侵入することもありますのでご了承願います。”)
ターボエンジンを望むユーザーもいただろうが、MRスパイダーはスポーツカーらしくガンガン走るというよりも、オープンエアを満喫するための車だったためNAのみ。なお、トランスミッションは5速MTと4速ATが選べた。
オプションとして、TRD(トヨタ・レーシング・ディベロップメント)のハイレスポンスマフラー、ストラットタワーバー(フロントならびにリア)、アルミホイールなどを選択することができた。
生産された92台中2台がカーセンサーに掲載中
中古車市場に目を向けてみると、カーセンサーnetでは原稿執筆時点(2020年3月10日)で「MRスパイダー」として1台、「MR2」として1台が掲載されていた。
どういうことかというと、MRスパイダーが1台だけMR2の車種一覧に掲載されており、物件ソートを“価格の高い順”で並べると見つかる。
生産された92台のうち、計2台がカーセンサーnetに掲載されているのだ。
1台は1998年式の4回目のマイナーチェンジモデルがベースのもので……、片手で数えられるくらいしか新車販売されなかったもの。走行距離は6万5000kmでトランスミッションは4速AT、車両販売価格は348万円。
MR2として掲載されているものは、1997年式の同じく4回目のマイナーチェンジモデルがベースのもの。走行距離は4万3000㎞でトランスミッションは5速MT、車両価格は348万円。
デビュー当時の新車時価格が300万円ほどだったので、もはやプレミア付きということだ。決して安くはないがこれほどまでにレアな存在も珍しい。
今見ても新鮮かつ斬新で、“雨漏り上等!”なんてラテンなノリをトヨタがやってのけたこと自体、エポックメイキングだと思う。
ちょっとでも気になった方は、中古車物件をチェックしてみてほしい!
▼検索条件
トヨタ MRスパイダー(1996年2月~1999年10月生産モデル)×全国▼検索条件
トヨタ MR2(1989年10月~1999年10月生産モデル)×全国自動車ライター
古賀貴司(自動車王国)
自動車ニュースサイト「自動車王国」を主宰するも、ほとんど更新せずツイッターにいそしんでいる。大学卒業後、都銀に就職するが、車好きが講じて編集プロダクションへ転職。カーセンサー編集部員として約10年を過ごし、現在はフリーランスのライター/翻訳家として活動している。
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