いい車なんだけどありがちな(?)BMW 3シリーズが嫌なら「2シリーズクーペ」でどうだ!
2020/02/29
イケメン系デザインに生まれ変わった元1シリーズクーペ
こちらは、雑誌「カーセンサーEDGE」で8年以上続いている自動車評論家MJブロンディさんの長寿連載「EDGEセカンドライン」のB面である。すなわち、なぜかその取材現場に同席している自動車ライター伊達から見た「同じ車の別側面」だ。
第10回目となる今回は、2020年2月27日発売のカーセンサーEDGE 4月号で取材した2014年式BMW 220iクーペ スポーツのB面をお届けする。
結論から申し上げると、こちらの個体は「旧型3シリーズはあまりにも数が多すぎて嫌だと感じる単身者またはお子さんのいないご夫婦で、なおかつ“運転好き”な人」には最適な1台であろうと思われた。
結論に関するご説明へと進む前に、BMW 2シリーズクーペという車についてのごく簡単な解説はしておこう。
2014年2月に登場したBMW 2シリーズクーペは、従来の「1シリーズクーペ」の後継車種にあたる比較的コンパクトな2ドアクーペ。
ベースは旧型1シリーズだが、スリーサイズとホイールベースは1シリーズクーペよりひと回り大きく&長くなっている。全体のデザインは――こう言ってしまうと1シリーズクーペ愛好家は怒るかもしれないが――いわゆるブサかわいい系だった1シリーズクーペから大きく変わり、いかにもBMWの2ドアクーペらしいイケメン系になっている。
日本仕様に当初用意されたエンジンは最高出力184psの2L直4直噴ターボと、最高出力326psを発生する強烈な3L直6直噴ターボの2種類。後者の強烈な直6ターボは2016年9月に最高出力340psの仕様へと変更され、前者の直4ターボも同年11月に新世代へと置き換わった。
今回の取材車両は初期型の2L直4直噴ターボを搭載する、2シリーズクーペの中ではベースグレードに相当する「220iスポーツ」。しかしベースグレードとはいえ自動ブレーキや「BMW SOSコール」「BMWテレサービス」などは標準装備で、トランスミッションもかなり出来の良い8速ATである。
「超メジャーブランドなのに数は少ない」という絶妙なニッチ感
で、そんな220iクーペ スポーツの中古車。ユーズドカーとしてのコンディションについては説明を割愛させていただく。なぜならば、取材車両はまだまだ走行3.8万kmのBMW認定中古車ゆえ、「内外装および機関は全般的にかなり良好でした」ぐらいしか書くべきことがないからだ。
それよりも、本稿の冒頭付近で申し上げた「旧型3シリーズはあまりにも数が多すぎて嫌だと感じる単身者またはお子さんのいないご夫婦で、なおかつ“運転好き”な人に、この車は最適であろうと思われた」という結論について、その根拠をご説明したい。
まずは「旧型3シリーズはあまりにも数が多すぎて嫌だと感じる」という部分について。
BMW 3シリーズという車に対してこう感じている方は、決して少なくはないはずだ。
F30こと旧型BMW 3シリーズの日本における新車販売台数は寡聞にして知らないが、相当数が売れまくったことは間違いない。筆者が住まう都内某所では、カローラやフィットよりもF30型BMW 3シリーズと出くわす機会の方がはるかに多いぐらいである。
まぁ出来が良くてイメージも良い車ゆえに売れまくったわけであり、寄らば大樹ではないが「たくさん売れてるモノの方が安心」と考える人も多いだろう。
だがそれと同時に「人とカブりまくるのはどうも……」という人種もいる。そういった方がマニアックなフランス車等に走るのではなく「それでも自分はBMWなどのドイツ車が大好きである」となった場合には、言ってはなんだが新車ではあまり売れていない2シリーズクーペの中古車は、ドンピシャな選択肢のひとつとなるのである。
ちなみに2020年2月下旬現在、旧型BMW 3シリーズの中古車流通量は全国で1055台。さらにちなみに、3シリーズの競合である現行型メルセデス・ベンツ Cクラスは1326台もの数が流通している。
それに対してBMW 2シリーズクーペは、全国でわずか88台。
……この、「超メジャーブランドのプロダクトでありながらニッチでもある」という絶妙なポジショニングが、ある種の人にとって、まずは好ましいポイントなのだ。
後席の広さって「あなたにとって」必要なのか?
お次は、「旧型3シリーズはあまりにも数が多すぎて嫌だと感じる単身者またはお子さんのいないご夫婦で、なおかつ“運転好き”な人に、この車は最適であろうと思われた」という結論の中の「単身者またはお子さんのいないご夫婦」という部分について。
前章で見たとおり、絶妙なマニアック感というかニッチ感が魅力となるBMW 2シリーズではあるが、小ぶりゆえに、いわゆるファミリーカーとして使うにはやや厳しい側面もある。
具体的なボディサイズは全長4440mm×全幅1775mm×全高1420mmで、旧型3シリーズと比べると全長は19cmほど短く、全幅は2.5cm狭いということになる。この数値自体は特になんと言うこともないのだが、問題は「2シリーズクーペは2ドア車であり、なおかつその後席はさほど広くない」という部分だ。
いわゆる子育て世代であっても、2ドアクーペを家族の車としているご家庭はもちろんある。だが、まぁ現実的には4ドア車やミニバンなどの方が子供を乗せるには圧倒的に便利であるため、さすがに「お子さんがいるご家庭にも2シリーズクーペは十分オススメできますよ!」などと簡単に言い放つことはできない。
だが、世の中というのは何も「夫婦+子供(たち)」というユニットだけで成り立っているわけではない。単身で暮らしている方や、夫婦者ではあるがお子さんはいらっしゃらない人、あるいは事実婚的な二人暮らしをしている方等々も大勢いらっしゃる。現に筆者も、婚姻はしているが子供はいない。
そういったユニットが所有する自家用車では、「後席はたいてい無人のまま走っている」という場合が大半であるはず。であるならば、そういった人らにとっては後席など「荷物が置けて、そしてたまに人を乗せることができればそれでOK」という存在でしかない場合も多いものだ。
このあたりは人それぞれの価値観と状況および美意識次第だが、もしもあなたが「そうだよね、後席なんてさほど重要ではないよね」と思っているのであれば、お世辞にも後席が広いとは言えないBMW 2シリーズクーペも、「あなたにとっては」何ら問題のない選択肢なのだ。
小ぶりで強靭な肉体ゆえ操縦感覚はほぼ「人馬一体」
最後に、「旧型3シリーズはあまりにも数が多すぎて嫌だと感じる単身者またはお子さんのいないご夫婦で、なおかつ“運転好き”な人に、この車は最適であろうと思われた」という結論の中の「運転好きな人に最適」という部分について。
これはもう本当にそのとおりで、「車を自分で運転する行為」を愛好するすべての人間にとりあえずはオススメしたいほど、2シリーズクーペの運転は本気で楽しい。
まずは小ぶり(現代の車としては)であり、小ぶりなそれが、いかにもBMW車らしいきわめて高い全体の剛性感を伴っているものだから、ドライバーはほとんど人馬一体とでも言うべき感触を、低速域でも高速域でも味わうことができる。
そして「インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー」で1.8~2Lクラスの部門賞を受賞した直4直噴ターボエンジンはカタログの数値以上にトルクフルに感じられ、8速ATは常に理想的なギアと回転数を、鬼のような素早さでもって選択してくれる。
これらBMW 2シリーズクーペの美点は、旧型3シリーズにもおおむね共通している美点ではある。だが2シリーズクーペの方がひと回り小さい分だけ、より強烈に、よりダイレクトにその美点を味わうことができる――という寸法なのだ。
以上のとおり、「家族持ちの人にとってはやや不便である」という点以外は素晴らしいことだらけのBMW 2シリーズクーペだが、実はもうひとつ「欠点」がある。
いや、これを欠点と言うべきかどうかは微妙だが、端的に言ってしまえば、BMW 2シリーズの中古車相場は旧型3シリーズのそれよりもやや高いのだ。
具体的には、今回の取材車両(支払総額212万円)とほぼほぼ同条件の中古車は、旧型BMW 3シリーズであれば総額180万円前後から探すことができる。あちらは数が多い分だけ全体の相場が下がっており、こちらはエクスクルーシブ感の強い「クーペ」というジャンルゆえ、そこまで大幅には下がってはいないのである。
このあたりのエクストラフィーをどう考えるかは難しいところだが、「それでも、ありがちな3シリーズを選ぶのは絶対に嫌だ!」という人であれば、このニッチな1台に注目してみる価値は大であろう。
自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。
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