ランドローバー レンジローバーイヴォーク▲かつては2ドアもしくは3ドアが主流だったクロカン四駆。SUVが人気となった現在ではほとんど姿を消してしまったが、わずかながら3ドアSUVが存在する(写真はランドローバー レンジローバーイヴォーク)

かつては主流だが、今や激減している2ドア・3ドアSUV

ファミリーカーとしての人気を得て久しいSUVが、使い勝手のよい5ドアであることは、もはや当たり前。

けれど、SUVの祖であるクロカン四駆は、2ドアや3ドアから歴史をスタートさせている。

例えば、ジープをはじめ軍用小型四駆は2ドア(オープンなのでバックドアなし)だし、レンジローバーも最初は3ドア(バックドアを入れて)のみだった。

その他にも、メルセデス・ベンツのGクラスやトヨタ ランドクルーザー70系、三菱 パジェロ……と、5ドアモデルの他に、3ドアモデルもラインナップしていたクロカン四駆はいくつもある。

しかし、クロカン四駆からSUVへと呼ばれ方が変化したころから次第に姿を消していった。

ランドローバー レンジローバー▲実はSUVの祖先は2ドアや3ドアのモデルが多い(写真は初代レンジローバー)


乗降性を考えれば、当然後席用のドアも備えた5ドアが便利だ。

また、かつてのパジェロのように、3ドアと5ドアモデルで全長のサイズが異なるモデルであれば、積載量でも5ドアの方が有利。

けれども、ルーツをたどれば2ドアや3ドアモデルが正統派を名乗ってもおかしくはない。

さらには、現在のように5ドアSUVが主流の時代になると、逆に新鮮で個性的にさえ映る。

2ドアや3ドアだって運転席または助手席のドアを開けて乗り込めば、後席にちゃんと座れる。

ほんの少しだけ乗り降りをガマンするだけで、個性的でかっこいいSUVが手に入るのだ。

これだけちまたにSUVがあふれている昨今、見た目はやっぱり重要じゃないだろうか。

とはいえ、初代のレンジローバーのようなクラシックモデルは、さすがに気軽に手を出せるものではないだろう。

そこで今回は、2010年以降の物件が見つかる比較的新しめの2ドア、3ドアSUVを紹介しよう。

コンセプトカーどおりのフォルムはクーペの方だ
ランドローバー レンジローバーイヴォーク クーペ(初代)

ランドローバー レンジローバーイヴォーク▲クーペと5ドアとでは、ルーフラインに違いがある。5ドアの方が若干後席の頭上に余裕があるのだ。一方3ドアのクーペのルーフラインは、デトロイトモーターショーで発表されたコンセプトカーの「LRX」を正確に反映している
ランドローバー レンジローバーイヴォーク▲クーペと5ドアモデル、コンバーチプル、いずれも2Lターボエンジン+6速AT、これに同社ならではの高い走破性を誇る4WDシステムが組み合わされた。2014年モデルからATは9速ATとなった

2008年のデトロイトモーターショーで発表されたコンセプトカー「LRX」の、市販車モデルとして登場したのがレンジローバーイヴォーク クーペだ。

デザインは、LRXのものがほぼそのまま踏襲されている。

レンジローバーイヴォークは、3ドアのクーペの他に5ドアと、3ドアオープンモデルのイヴォークコンバーチブルが用意された。

SUVのオープンカーなんてかなりレアなモデルだなと思っていたら、今年のフルモデルチェンジでラインナップから外れてしまい、それどころかクーペも外れてしまった……。

2011年のデビュー当時は、動力性能や装備は5ドアと同等だったが、次第に5ドアがバリエーションを増やしていく一方、クーペは一時期ワングレードのみに削減された。

その後、2017年11月にはディーゼルターボモデルが追加されたことで2グレードにはなったが……5ドアほどではない。

デビュー時の車両本体価格はピュアが450万円、ダイナミックが598万円。

原稿執筆時点(2019年10月2日)で掲載台数は22台と、200台以上掲載のある5ドアの10分の1ほどの台数だ。

イヴォークは3ドア・5ドアとも中古車が人気で比較的中古車価格が高く、支払総額表示車の最安値は約250万円からとなる。

▼検索条件

ランドローバー レンジローバーイヴォーク(初代)×3ドア×全国

ミニクロスオーバーのクーペモデル
ミニ ミニペースマン(絶版)

ミニ ミニペースマン▲スポーティさと多様性をあわせ持つ走行性能を備えるべく、SUVでありながらもスポーツサスペンションを標準装備したことで、ベースのミニクロスオーバーより10mm車高が低い
ミニ ミニペースマン▲ベースであるクロスオーバー同様、前席から走るセンターレール(専用カップホルダーを置ける)が後席も左右に分ける4人乗り。後にクロスオーバーは後席のセンターレールを廃止して5人乗りとなるが、ペースマンは最後まで4人乗りのままだった

ミニファミリーに、当時のミニよりちょっと大きなボディのSUV、ミニクロスオーバーが加わったのは2011年のこと。

ミニとして初の5ドア車として話題となったが、2013年にはミニクロスオーバーを3ドアのクーペに仕立てた、ミニペースマンが登場した。

リアに向かって降下するルーフラインと、それに合わせてサイドウインドウもリアに向かうほど天地が狭くなるという、独特のフォルムがこの車の最大の特徴だ。

1.6Lのクーパーと1.6LターボのクーパーS、さらにチューンナップにより最高出力&最大トルクを高めたジョンクーパーワークスや4WDモデルがあり、ミッションも6速MTと6速ATがほとんどのグレードで用意された。

結局この1代限りで終わった短命モデルだが、バリエーションは豊富だ。

デビュー時の車両本体価格は、312万~396万円。

原稿執筆時点で39台が見つかり、最安値は総額約100万円と手頃な価格になってきている。

▼検索条件

ミニ ミニペースマン(初代)×3ドア×全国

2ドアこそ軍用車由来の正統派
ジープ ラングラー(2007年3月~2018年10月生産モデル)

ジープ ラングラー▲一目で「ジープ!」と分かる伝統的な丸目2灯と7スロットルグリル。4ドアのアンリミテッドが5人乗りなのに対し、2ドアのスポーツとサハラは4人乗りとなる
ジープ ラングラー▲2011年の一部改良でインテリアが大幅に変更された(写真は2013年式)。また2012年に4速ATは5速ATに。カーナビはオプション

祖先をたどれば軍用小型四駆のジープにたどり着く、ジープ ラングラー。

それゆえ、1987年の初代から2ドアスタイルが継承されてきたが、2007年に登場した3代目では、2ドアに加え、初めて4ドアのアンリミテッドが設定された(リアはいずれもハッチゲートで、バックドアではない)。

つまり、ジープ ラングラーの伝統的なフォルムといえば、2ドアなのだ。

ちなみにアンリミテッドは、2ドアのホイールベースを520mm伸ばしている。

搭載されたエンジンは、3.8LのV6エンジン。

2ドアにはソフトトップのスポーツと2ドアハードトップのサハラ、ルビコンがあり、スポーツは4速AT、サハラは4速ATと6速MT、ルビコンには6速MTが用意された。

4WDは直結式で、普段は2Hを選んでFRとして走行でき、路面状況に応じて4Hや4Lにギアを入れるという、硬派な4WD車だ。

特にルビコンは、アクティブ・スウェイ・バー・システムなど、酷な地形を走破するための専用装備が備わる本気のオフローダーだ。

ただし2012年以降、2ドアモデルはサハラのみとなり、究極のオフローダー・ルビコンは4ドアのアンリミテッドに設定されるようになった。

デビュー時の車両本体価格は、323万4000円から。

原稿執筆時点で、2010年式以降は5ドアの約12分の1にあたる21台が見つかった。

最安値は総額約270万円のスポーツだ。

▼検索条件

ジープ ラングラー(2007年3月~2018年10月生産モデル)×3列シート×全国

イヴォークとペースマンが絶版となり、現行型では唯一2ドアを用意しているのはジープ ラングラーのみとなった。

そのラングラーも、5ドアの方がグレードは多い。

希少な2ドア・3ドアSUV、乗れるうちに楽しんでおきたい。

文/ぴえいる、写真/ランドローバー、ミニ、FCA

ぴえいる

ライター

ぴえいる

『カーセンサー』編集部を経てフリーに。車関連の他、住宅系や人物・企業紹介など何でも書く雑食系ライター。現在の愛車はルノーのアヴァンタイムと、フィアット パンダを電気自動車化した『でんきパンダ』。大学の5年生の時に「先輩ってなんとなくピエールって感じがする」と新入生に言われ、いつの間にかひらがなの『ぴえいる』に経年劣化した。