トヨタ 86▲2012年にトヨタとスバルの共同開発によって登場した86&BRZ。今更かもしれないがやっぱり車好きな若者にオススメしたいモデルだった(写真は86)

若者の車離れなんて実はないのでは?

「若者の車離れ」が叫ばれて久しいが、それを感じさせない場所があった。とある日の夜、きれいな夜景が見える首都高の某PAへと足を運んだ。

するとそこには何台ものスポーツカーが集まっているではないか。しかも、オーナーの顔を見れば皆20代前半くらいか? 中には初心者マークを付けた10代くらいの若者もいる。

そして車種を見ると、圧倒的に台数が多いモデルがある。トヨタ 86スバル BRZだ。

オーナー数人に話を聞くと、「最初はこの車って決めていた!」とか「スポーツカーを探していたらこの車にたどり着いた」というコメントが多いことに気づいた。

また、話を聞けば聞くほど86とBRZこそ、車好きの若者にオススメしたいスポーツカーだという結論にたどり着いた。

そこで今回はオーナーに聞いた話をもとに、どうして86とBRZをオススメしたいのかを解説しよう。

▲平日の夜だというのに、駐車場には様々なスポーツカーが止まっていた▲平日の夜だというのに、駐車場には様々なスポーツカーが止まっていた

理由1
軽自動車や国産コンパクトカーと同じくらいの金額で買える

若者の中には、当然初めての車を買おうとしている人も多いはずだ。そして、もちろんすべての人がとは言わないが、年長者に比べ予算が限られていることが多い。

「最近の車、特にスポーツカーは高くて手が出ない……」
「働き始めたばかりで、正直給料は高くないので……」


といった声も多い。

その結果、「初めての車は、比較的お手頃そうなコンパクトカーか軽で」という選択をしがちだ。それは決して間違ってはいないし、特に最近のモデルであればきっと満足いく結果となるだろう。

しかし、一部の走りが好きな車好き諸君には、少し立ち止まって考えてほしい。なぜなら、そのコンパクトカーや軽自動車を買う予算と同じくらいの金額で、86&BRZを狙うことが可能なのだ。

例を見てみよう。

老若男女に人気のコンパクトカー、ホンダ フィット。2016年式、走行距離4万~5万kmくらいで、総額140万円前後といった感じだ。

また、爆発的ヒットとなっているホンダ N-BOX。2012年式、走行距離3万~4万kmでおおよそ総額130万円前後。

フィットにはRS、N-BOXにはカスタムターボなどの、スポーティグレードも存在するが価格はもっと高くなる。そして本当に“スポーツ”なのかは疑問が残る。

では86&BRZはどうだろうか。2014年式、走行距離6万km前後で総額150万円くらい。前述の2モデルに比べれば確かに割高感は否めないが、それでもスポーツカーが欲しいと感じている人にとっては、決して頑張れない金額ではないはずだ。

スバル BRZ▲こちらはスバル BRZ。登場から7年がたち、中古車流通台数も増え価格もだいぶ手ごろになってきた

理由2
ほどよいパワーと素直なハンドリング

86&BRZは、トヨタと富士重工(現SUBARU)が共同開発し2012年に登場した2ドアクーペだ。

「ドライバーの感覚ひとつでいかようにも取り回せる“手の内感”や操る楽しさを体感できる、直感ハンドリングFR」をコンセプトに登場。スバル製の水平対向エンジンを搭載することで、超低重心パッケージングとなり、優れたハンドリング性能を実現している。

さらに、四輪をしっかりと接地させることができ、操縦性と走行安定性が高められていることはもちろん、乗り心地の高さを高次元でバランスさせることに成功している。

また、新たに開発された軽量高剛性ボディを採用し、高い運動性能に最適なボディ剛性を手に入れるとともに、高張力鋼板の積極採用などにより軽量化も図られている。

まさにハンドリングマシンと言えるのだ。

そして、搭載される2L 水平対向エンジンは200psを発生。めちゃくちゃパワフルというわけではないが、先述したように軽量ボディと合わさることで、過不足がない“ちょうどいい感じ”なのだ。

また、NAならではのレスポンスの良さも相まって、アクセルワークを磨くことにも貢献するはずだ。

実際のオーナーからも、

「スポーツカーなのにとても運転しやすい」
「決して速くはないけど、とにかく気持ちよく運転できる」
「運転技術を磨くのにピッタリな車だと思う。教習車よりも運転しやすい」


といった声を聞くことができた。

昨今は、安全運転支援技術や快適装備の進化により、車側から運転に介入してくることも増えた。しかし、これから運転に慣れていこうと思っている若者だからこそ、86やBRZのように、自分の操作がそのままの形で挙動に反映される車をオススメしたい。

初めての車で得た運転技術が、今後のカーライフの基礎になるのだから。

トヨタ 86▲とても素直な挙動をするモデルで、基礎を身につけるにはピッタリだと思う
スバル BRZ▲全長4.24m×全幅1.78m×全高1.3mと、大きくもなく小さくもない、ちょうどよいサイズ感なのだ
▲搭載されるFA20型エンジンは最高出力200psで、NAらしい高いレスポンスを発揮する▲搭載されるFA20型エンジンは最高出力200psで、NAらしい高いレスポンスを発揮する

理由3
ユーティリティ性もそこそこ高い

スポーツカーは趣味性が高い車のため、使い勝手があまり良くないモデルが多い。例えば、重量バランスやエンジンレイアウトを考慮して2シーターが採用されていたり、トランクルームが狭くて荷物を積めなかったり……。

もしもセカンドカーとしてスポーツカーを手に入れたい人なら、まったく問題ないかもしれない。しかし、多くの若者は、通勤通学や日々の買い物、旅行などにも使うメインカーとして考えている人がほとんどなはずだ。

86、BRZを見てみよう。まず何といっても、2+2で4人乗りが可能なのだ。仲の良い友人たちとちょっと出かけるとき、2人乗りよりも4人乗りの方が、何かと便利なのは言うまでもないだろう。

「この車2人乗りだから、お前は留守番な」みたいなどっかの漫画で聞いたことのあるようなセリフも避けられるのだ。

そして、この車は積載性がとても高い。サーキットでスポーツ走行をすることも考慮されているため、リアシートバックを倒せばタイヤ4本と工具類が収納できるスペースが登場する。

休日にホームセンターに家具を買いに行ったり、アウトドア用のバーベキューコンロを積み込んだり、使い勝手は意外と良いのだ。

オーナーの声を聞いてみると、

「友達同士3人で旅行に行きましたよ」
「引っ越しのときに結構使えました」


というコメントも聞けた。

▲後部座席はあるとないとでは大きく使い勝手がかわるものだ▲後部座席はあるとないとでは大きく使い勝手が変わるものだ

理由4
ランニングコスト、実はそこまで高くない

大排気量のスポーツカーだと、燃費が悪く税金も高い、そして自動車保険も高いといったデメリットがある。

そしてさらに少し古めの平成初期モデルなんかになってくると、いろいろなところにガタがきており、修理が必要になるかもしれない。

その点86&BRZは、上記のようなランニングコストは意外と高くなさそうだ。

2Lクラスのエンジンを載せる車の自動車税は、年間3万9500円。例えば、1.2Lのエンジンを積む日産 ノートは年間3万4500円で、その差5000円である。人によって感じ方は違うかもしれないが、月で割ればたったの400円ちょっとだ。

そして、燃費。ハイブリッドカーには到底かなわないのは当然だが、86 2.0GT 6MT(初期型)の燃費は12.4km/L(JC08モード)、決して悪い数字ではない。ただし、使用燃料がハイオクになることだけは注意してほしい。

また、保険料を算出する際の指標として、「保険料率クラス」というものがある。あくまでも参考値だが、算出してみたところ以下のような数値となった。なお、数値が高くなるほど保険料は高くなる。

トヨタ 86

対人賠償責任保険 4
対物賠償責任保険 4
搭乗者傷害保険  3
車両保険     5

参考として、大人気ハイブリッドカーのトヨタ アクアも算出してみた。

トヨタ アクア

対人賠償責任保険 4
対物賠償責任保険 5
搭乗者傷害保険  4
車両保険     4

※あくまでも仮算出で、装備や時期によって変動する可能性があります。

車両保険の料率が1ランク高く、搭乗者傷害保険は1ランク低くなった。このことからも、劇的に保険料が高くなるということはなさそうだ。

そして86&BRZ、何より年式が2012年以降からと比較的新しめということもあり、平成初期のモデルと比べればトラブルは少ないことが予想できる。

もちろん、機械製品であるがゆえに絶対大丈夫ということはないが、それは86&BRZに限ったことではない。

そもそも車を持つということが大きなハードルになっているのかもしれないが、すでに車を購入しようとしている若者にとってはプラスになる話だ。

「多少節約することもありますが、ギリギリで維持してるってことはないです」
「維持って点では、意外と普通の車ですよ」


などの声を聞くことができた。

▲避けては通ることができないランニングコストも、思っている以上に普通の車と変わらないようだ▲避けては通ることができないランニングコストも、思っている以上に普通の車と変わらないようだ

理由5
自分らしさを発揮できる

そして最後にオススメしたい理由が、カスタマイズの自由さだ。メーカーも、「自分だけの1台を楽しみながら育てるというAE86の精神を受け継ぎ、カスタマイズを前提に開発されたクルマです」と公式にうたっている。

「常日頃からSNSなどを使って自分らしさを発信する」という若者の文化に通ずるものを感じる。

メーカーはもちろん、社外アフターパーツも豊富に流通しているので、きっと自分らしさあふれる1台を作り上げることが可能なはずだ。

ちなみに、実際にPAで遭遇した86&BRZのほとんどが、何かしらカスタムされていた。

「買ってすぐにエアロパーツ付けました!」
「マフラー換えるために、今お金を貯めている最中です」


そんな若者の声からは、本当に車を楽しんでいるということが伝わってきた。

▲ちなみにこちらはトヨタから発売された86のカスタムカー“style Cb”。中古車で見つけることは難しいが、社外パーツを使えばカスタムの幅は無限大だ▲ちなみにこちらはトヨタから発売された86のカスタムカー“style Cb”。中古車で見つけることは難しいが、社外パーツを使えばカスタムの幅は無限大だ


今回は実際のオーナーに話を聞いたうえで、車好きな若者に86&BRZをオススメしたい理由を解説した。

「若者が買える楽しい車がないから、若者の車離れが起こっている」などの意見があるが、86、BRZはまさにその問題を解決してくれる1台なのではと感じた。

これから車選びをしようとしている、車が好きな若者の皆さんはぜひ参考にしてみてほしい。

文/編集部 神崎洋平、写真/篠原晃一、トヨタ、スバル、photo AC

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神崎洋平

カーセンサー編集部

神崎洋平

小さい頃から車が好きで、中学生のころからカーセンサーを愛読。若者の車離れに一矢報いたいという動機で、2017年にカーセンサー編集部にやってきた。好きな車はセダンとスポーツカーで、現在の愛車はE90型BMW 3シリーズ。趣味はダム観賞で、休日には全国各地のダムへ足を運んでいる。