テリー伊藤が、エンスーとは真逆にあるアバンギャルドなアルファロメオ モントリオールに魅了される
2023/02/26
専門書には少ししか出てこない、独特な魅力をもったモントリオール
今回は、「COLLEZIONE Co.,Ltd」で出合ったアルファ ロメオ モントリオールについて、テリー伊藤さんに語りつくしてもらいました。
~語り:テリー伊藤~
アルファ ロメオのビンテージモデルの中でも相当な異端児であるモントリオール。ランボルギーニ カウンタックやミウラを手がけたベルトーネによるデザインはアバンギャルドですよね。
一般的に古いアルファ ロメオ好きの人の多くは、段付きのジュリアなどを手に入れるでしょう。初代スパイダーもボートテールのシリーズ1が人気です。
でも僕は、スパイダーだと最終型のシリーズ4が好きです。理由はアルファ ロメオというブランドが市場拡大を狙って様々な施策を打つ中で、迷走している感じが見て取れるから。意地を失くして大衆にすり寄ったデザインに切ない魅力を感じるのです。
車に限らず、日本人はクラシックなものに興味を持つとまず知識を身につけようとします。専門書や雑誌を読んで、ブランドの歴史やモデルの変遷を学ぶのですね。
知識を身につければブランドに詳しくなりますが、一方で自分の感性を信じて好きなものを自由に選ぶことができなくなってしまいます。例えば、時計だとスイスの老舗ブランドの王道モデルのうんちくばかり話したりしてね。
でも、実はジュネーブには独自の感性でアバンギャルドな時計を作っていた職人もたくさんいました。専門書には決して出てこない彼らの作品も素晴らしい。そこと出合うことができれば楽しみはもっと広がるのに、もったいないことです。
でも僕のような考え方は特殊なのもわかっています。僕の本業――テレビ番組の演出も一緒。おもしろい! と思って企画書を出してもすぐに「テリーさん、こんなことを今の時代にやったら大変なことになります……」と言われてしまう。だから全然企画が通らないのですよ(笑)。
モントリオールからは専門書で得た知識だけでは語ることができない魅力を感じます。きっとエンスーの方程式からは外れたところにあるからだと思います。ビンテージ・アルファの中からこれを選べる人は、相当な傾奇者ですよ。
テリー伊藤ならこう乗る!
モントリオールの最高速度は220km/hといわれていますが、まずそこまで出せないでしょう。当時は自動車メーカー自体が様々なストーリーをフィクションとして語ることが許されていた時代。ファンもそれをわかったうえでいろいろなことを空想していました。今だったらコンプライアンス的に許されないでしょう。
この独特なヘッドライトもいいですね。モントリオールが発売された当時はリトラクタブルライトが大人気だった時代。多くのメーカーが「どうやってライトをカッコよく上にあげよう」と考えていた中で、モントリオールは逆にライトのフードを下に格納するという荒業に出たのですから。普通の会社なら、決済者がハンコを押しませんよ。
Bピラーに開けられた穴もすごいですよね。普通なら「こんなところに通気孔を作ったら室内が寒くなる」とボツになるはずです。
コンプライアンス的にアウトなことや時代の流れとは真逆の発想でも「カッコいいだろう」とやってのける勇気。僕は笑いながら“ファンタジー”として楽しみたいですね。
モントリオールに搭載されるエンジンは、アルファ ロメオのレーシングモデルであるティーポ33用のものを2.6Lにデチューンしているそうです。ということは本来なら走りを楽しむべきなのでしょうが、僕は運転に自信があるわけではないし、あえてこの車で湘南の海岸線をのんびり走りたいですね。トランスミッションはマニュアルですが、できればオートマで乗りたいくらいです。
特殊なエンジンが搭載され、しかも古いモデルなので、エンジン始動にはある程度の気遣いが必要とのこと。エンジンをかけた後も温まるまでは回転が安定しないので、暖機運転を入念に行わなければなりません。パンパンという大きな始動音は近所迷惑になりそうですね。
今回お邪魔したコレツィオーネの成瀬社長によると、最近は古いイタリア車に乗りたいと、若いお客さんが来店することが増えているそうです。成瀬さんがお客さんに理由を尋ねたら、「古着が流行っているので、車もそのテイストに合わせたい」のだとか。
彼らはお店が仕上げる前の車でも「昔のテイストで乗りたいから」と、そのままの状態で売ってほしいと話すそうです。なんだか頼もしいじゃないですか。
アルファ ロメオ モントリオール
1967年にカナダのモントリオールで開催された万博に出展されたプロトタイプが、ほぼそのままの形で1970年に市販化。車名にはプロトタイプが初公開された地名が付けられた。ボディは2+2のクーペで、ベルトーネに在籍していたマルチェロ・ガンディーニが設計を手がけた。ライトを覆うブラインドのようなカバーは、ライトをつけるとライト下に格納される。搭載されるエンジンはスピカ製の機械式インジェクションが使われた2.6L V8 DOHC。最高出力は200psを発揮する。
演出家
テリー伊藤(演出家)
1949年、東京・築地生まれ。早稲田実業高等部を経て日本大学経済学部を卒業。「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」「ねるとん紅鯨団」「浅草橋ヤング洋品店」など数々のテレビ番組の企画・総合演出を手掛ける。現在は演出業のほか、タレント、コメンテーターとしてマルチに活躍している。テリーさんの半生を綴った「出禁の男 テリー伊藤伝」(イーストプレス)が発売中。TOKYO MXでテリーさんと土屋圭市さんが車のあれこれを語る「テリー土屋の車の話」(隔週水曜日/21:25~21:54)が放送中。YouTube公式チャンネル『テリー伊藤のお笑いバックドロップ』も配信中。