これから価値が上がっていくだろうネオクラシックカーの魅力に迫るカーセンサーEDGEの企画【名車への道】
クラシックカー予備軍モデルたちの登場背景、歴史的価値、製法や素材の素晴らしさを自動車テクノロジーライター・松本英雄さんと探っていく!
自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。「車は50万円以下で買いなさい」など著書も多数。趣味は乗馬。
運転しやすいスタイルオールラウンダーで気取らない本格派SUV
——この季節、エリアによっては積雪で大変なことになりますよね。スタッドレスタイヤでも身動きできなくなるじゃないですか。
松本 豪雪地域だとそうなるよね。そういうところに行くときは最低地上高の高いモデルに限るよ。僕だったら、ロングドライブもできるランドローバー系を選ぶかな。ランドローバーならADAS(先進運転支援システム)が付いていないモデルで1日800㎞以上走っても、疲れを全然感じさせないしね。しかし、あの感覚ってなんなんだろうって思うよね。
——よくオフロード車って見切りがいいっていいますけど、それとはまた別の話ですもんね。
松本 そうなんだよ。もちろん、見切りがいいから狭い道でもストレスを感じないのも、特徴ではあるんだけどね。
——松本さんがお好きなのは知ってましたし、以前からランドローバー系も探してはいたんですよ。確か初代ディスカバリーとか、独立懸架になってすぐのディスカバリー3を推していましたね?
松本 そうだね。せかしてたのは、早くしないとモノがなくなっちゃうのと、値段が高騰する可能性があるからなんだ。そうすると乗ってほしいモデルとして、ちょっと勧めにくくなるじゃない? クラシックレンジのように高くなりすぎちゃうとね。とにかく普段から使える車でかっこいいのがディスカバリー系なんだよ。
——フリーランダーも挙げましたよね?
松本 もちろんフリーランダーも好みだけどね。横置きエンジンでこの当時の四輪駆動って、僕の記憶だと性能的にどうかと思うんだよね。しかもATは確かアイシンだったかな。MT だったらオススメだけど……。さすがに中古車物件としてはもう出てこないだろうね。
——じゃ、やっぱりタフな骨格のディスカバリーですね。
松本 オールラウンダーで気取ってなく、本格派の香りがする車。ヨーロッパのSUVではこれしかないんじゃないかなぁ。
——実はとっておきのがあるんですよ。ディスカバリー4、正確にはディスカバリーになるんですけど。編集部の車なんですが。
松本 そうなの? いいじゃない。ディスカバリー4って街中で見るとナチュラルだし、インテリっぽいオーナーが乗ってることが多いよね。
——社用車なんですが、そのディスコでもよいですか?
松本 僕の友人も初代モデルをディスコって呼んでたけど、新しいモデルはちゃんとディスカバリー4って言った方が好感が持てるんじゃないかな? ところで年式は?
——確か2016年だったと思います。
松本 へー。新しいね! じゃあ最終仕様だね。最高じゃない。
——登場したときはディスカバリー3って名前でしたよね?
松本 そうだね。ディスカバリー4は2009年から2016年まで生産されたモデルのことで、2004年に登場したディスカバリー3がベースだからね。個人的にはディスカバリー3のフェイスリフト前が好きだなぁ。すごくタフな感じがして。デザイナーはランドローバーのアンディ・ホイール氏だね。初代ディスカバリーのタフさとモチーフを踏襲しながらスタイリッシュに仕上げたんだよ。
——確かに車のシルエットはシリーズでずっと同じですよね。
松本 ディスカバリー3になってサスペンションが独立懸架式になったんだけど、一気にクラシックな雰囲気から近代的な印象になったよね。
——ディスカバリーが日本で発売された2005年ってEDGEの創刊の年だから撮影でもかなり乗ったし、スタッフで乗ってる人もいたなぁ。
松本 そうだよね。僕もたくさんドライブしたよ。ボディは大きく長くなっていたけど、見切りはランドローバーの黄金比で決めているから、とにかく運転しやすかったね。今みたいにセンサーやモニターが付いていなくても、感覚で奥行き感がわかるデザインなんだよ。
——確かに、サイズの割に運転しやすかった記憶がありますね。
松本 ちなみに、アンディ・ホイール氏は最新ディフェンダーのエクステリアも担当しているんだ。彼は上品さとタフさを表現することに関してはホントに天才的だよね。日本車メーカーもかなり参考にしたんじゃないかな。フォードのSUVもこの頃からデザインのエッセンスに取り入れていたしね。
——ディスカバリー3のあとディスカバリー4になって、最後にディスカバリーだけになったんですよね?
松本 そうだね。このモデルは2016年式だからV型6気筒のスーパーチャージャーのユニットを積んだモデルなんだよね。ハイエンドモデルのレンジローバーにも使われたユニットだよ。
——そうか、エンジンも違ってたのか。
松本 フォード製のエンジンという人もいるけど、この当時はAJ126というジャガー設計のユニットだね。もともと5L V8のAJ133という90度のバンクをもったユニットがあって、その2気筒分をクローズドし、ボアを小さくして3Lユニットとして使っているんだよ。
——へー、それはまったく知りませんでした。
松本 ジャガー製のエンジンはAJという表記になるんだけど、これはアドバンスド、ジャガーユニットの頭文字をとったものって聞いたことがあるよ。ディスカバリー3にもV6の4Lエンジンがあるんだけど、こちらはケルンユニットと言って間違いなくフォード製なんだ。
V型6気筒でもこっちは60度バンクだからね。そう考えると、ディスカバリーはランドローバーでもプレミアム路線にシフトしたモデルの始まりなんだ。しかもディスカバリー4の初期は、ボンネットのロゴがLAND ROVERだったんだけど、途中から“DISCOVERY”になったんだよね。メーカーのブランド戦略がうかがえるでしょ?
——確かにディスカバリー4とかこのディスカバリーって、高級感ある素材やランプに変更していますよね。
松本 そうなんだよね。レンジローバーが好きだけど、そこもこだわる人にとってはぴったりのモデルなんじゃないかな。この車みたいに艶やかなボディカラーもあったしね。
——近年、人気が高いというのもうなずけますね。
松本 ATもZF社製の8速に変わって、滑らかで信頼性が向上したからね。乗り心地もパワーも申し分ない。伝統的なラダーフレームとボディを融合したビルトインフレームなのに、乗り心地はとてもコンフォートだからね。ディスカバリー3に比べるとどっしりした感じが増した印象かな?
——僕はSUVってあまり好きじゃないけど、こういう味のあるモデルはいいですよね。
松本 そうだね。大きさも風貌も市街地で威圧感がなくて、さらに趣味の良さがディスカバリー4で一気に花開いた感じだね。本物のタフと都会的な加飾が新しさを感じる。飽きのこないデザインの見本のようなモデルだね。
※カーセンサーEDGE 2023年4月号(2023年2月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています
文/松本英雄、写真/岡村昌宏
【関連リンク】