昭和な車好き必見! 静岡県浜松市の「スズキ歴史館」は落涙必至な「俺たちのテーマパーク」だった!
2020/01/04
浜松滞在時に空き時間ができた車好きは、ぜひ立ち寄るべき場所
静岡県浜松市まで仕事などの用事があって行ったとき、もしも「ちょっとした空き時間」ができたら、あなたはどこへ行って何をするだろうか?
浜名湖まで足を延ばしてうなぎを食べる? いいですね、おいしそうだ。
そのついでに「ボートレース浜名湖」に行って舟券を買ってみる? 筆者はやったことないけど、それもエンタメとして面白いかもしれない。
あとは「『炭焼きレストランさわやか』に並んでげんこつハンバーグを食べる」なんてのもかなり魅力的だが、それに加えてひとつ、強烈に推したいアクティビティがある。
浜松市南区にある「スズキ歴史館」に行ってみる――ということだ。
さすがに平成後期生まれの少年少女が楽しめるかどうかはわからないが、筆者同様の昭和世代か、あるいは平成初期生まれまでの世代で、なおかつ「車や二輪車にまずまず興味がある」という人であれば(たぶん)99.9%の確率で超絶楽しめる無料のミュージアム。
それが、「スズキ歴史館」だ。
■施設情報
【住所】静岡県浜松市南区増楽町1301
【入館方法】予約制(電話またはインターネットにて)
【開館時間】9:00~16:30(16:30閉館)
【休館日】月曜日、年末年始、夏期休暇等
【入館料】無料
【問い合わせ】電話番号/053-440-2020
1階と2階はさておき、3階は絶対に見てほしい!
スズキ歴史館は、1909年に創業し、1920年に織機メーカーとして設立されたスズキの創業以来の製品多数や、現在の車づくりの様子などが展示されている、スズキ本社の向かい側にある公式施設だ。
建物は3階建てで、1階にはインフォメーションカウンターがあり、その他に現行世代のスズキ製四輪車と二輪車もここに展示されている。
この1階もまあ悪くはないが、正直近所のディーラーさんでも見ようと思えば見られるモノばかりなので、筆者からのコメントは特にない。
その上の2階はフロア全体が「現在のクルマづくり ~世界のお客さまへ~」と題されたコーナーになっていて、企画やデザイン、設計、テストなどの「スズキ車の開発過程」が紹介されている。
これも1階同様に悪くはないのだが、言ってみれば「小学生の社会科見学には向いてるかもしれませんね」と言えるニュアンスであるため、これまた大人相手にカーセンサーnetでいちいちコメントする必要性を感じない(すみません)。
スズキ歴史館の白眉は、なんといっても3階だ。
「ものづくりの歴史 ~お客様と歩んだ歴史~」と題されたこのフロアは、初代社長の鈴木道雄が発明した「杼箱上下器搭載の足踏み式織機」から2004年登場の「2代目スイフト」あたりまでのスズキ製品各種が、大まかに5つの時代に分類されたうえで、当時の世相やスズキの社内で起こったもろもろの出来事などとからめながら展示されている。
ここを見た際の筆者は――正直に打ち明けよう――「これこそが『俺のテーマパーク』だ!」と叫んだうえで落涙したのだった。
筆者が上記のように叫び、そして涙したのは「実行(1964~1977)」と題された昭和中後期のコーナーだった。
つまり、筆者が幼児としておぼろげな記憶を持ちはじめた頃に近所の道路などで見かけた(ような覚えがある)小型四輪車や二輪車の数々が、ほぼ当時そのままの姿で、しかも時代背景を説明する写真パネルや文章とともに展示されている様を見て、凄まじいまでの郷愁にかられてしまったのだ。
「そういえばこんな車が近所の道を走り回ってたし、隣の家のおっさんはこんなバイクに乗ってた……ような気がするなぁ。(そして当時のスズキ社員などを写したパネルを見て)うん、オレの父も母も、こんな感じで腰にタオルぶら下げて働いてたよ。汗びっしょりになってさ。あの頃はみんな若かったんだよなぁ……。考えてみれば今の俺よりぜんぜん年下なわけだし」
なんてことを考えているうちに、思わず目から大量の汗が流れ出てしまったのである。
平成初期生まれまでの世代であれば、どこかのコーナーで必ず盛り上がるはず
筆者(1967年生まれ)に最も刺さったのは、前述のとおり「実行(1964~1977)」と題された一角だった。
だが、あなたが仮に筆者とはぜんぜん違う世代であったとしても、少なくとも平成後期生まれの少年少女でない限り、どこかの一角でたぶんグッと込み上げるものがあるはずだ。
例えば、筆者よりずいぶん上の世代であれば、「創意 1909~1945」のところで「うんうん、昔はこんな織機を町のあちこちで見かけたし、ついでに言えばあの戦争も大変だったよね……」的な感慨に襲われるだろう。
また、現在60歳台ぐらいの人は「開拓・勤勉(1946~1963)」のコーナーでピカピカのスズライトSSに涙し、そして戦後の焼け野原から不屈の精神で再び立ち上がった当時のスズキ社員たちの写真パネルを見て、これまた何かを思うはず。
昭和後期生まれの世代であれば、落涙ポイントは「革新・貢献(1978~1985)」のコーナーだろうか。
ここは筆者の場合も小学生から高校生あたりまでを過ごした時代にあたるため、「アルト47万円」の現車やそれに付随する世相資料、あるいは高校生の頃に憧れた二輪車「スズキ RG250ガンマ」を見て、またあるいは小学校高学年の頃に乗っていた「セミドロップハンドルのフラッシャー付き自転車」を見て、思わず「うおおおおおおっ!」と吠えたものだ。
最後のコーナーとなる「挑戦(1986~)」は、筆者の場合は大学生以降の時代に相当するため、さすがに「うおおおおおおっ!」と吠えたり、いきなり泣くなどの奇行はしなかった。
だが、昭和末期生まれまたは平成初期生まれの車好き各位には刺さるだろう。また筆者も、名車というか迷車「スズキX-90」のビカビカの現車をここで見た際には、思わず変な声が出てしまったことはご報告しておく。
いずれにせよ、車や二輪車にまるで興味がなく、そして「昭和的なモノ」へのノスタルジーを感じることがまったくない人にとっては、スズキ歴史館は立ち寄る意味のない場所だ。ここへ行くより、浜名湖に行ってうなぎでも食べることをオススメする。
しかしそうでないのなら――つまり四輪車や二輪車というものがわりと好きで、なおかつ「失われたカルチャー」にご興味があるのであれば、スズキファンであるか否かに関わらず、ぜひとも予約のうえ立ち寄ってみることを強くオススメしたい。
自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。
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