アルファロメオ 155

■これから価値が上がるネオクラシックカーの魅力に迫る【名車への道】
クラシックカーになる直前の80、90年代の車たちにも、これから価値が上がる車、クラシックカー予備軍は多数存在する。そんな車たちの登場背景、歴史的価値、製法や素材の素晴らしさを自動車テクノロジーライター・松本英雄さんと探っていく企画「名車への道」。

松本英雄(まつもとひでお)

自動車テクノロジーライター

松本英雄

自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。

天才が手掛けた90年代を代表する名車予備軍だね

――今月も車探し、苦労しました。

松本 何にしたの?

――アルファ155です。しかもMTで走行距離も少ないQ4です。どうです?

松本 素晴らしいじゃない。

――ちょうどよく素晴らしい個体を見つけたんですよ。あ、こちらがそうですね。

アルファロメオ 155
アルファロメオ 155

松本 いいねぇ。めちゃくちゃキレイじゃない。僕にとってこの車で印象に残ってるのはイタリア国内のツーリングカーレースで活躍した155 GTAなんだ。実は中身はランチア インテグラーレの4WDシステムが搭載されていたんだ。知ってた?

――全然知りませんでした……。

松本 作ったのはアバルトのレーシングチームでね。155はフィアットのプラットフォームを使っていたからあり得そうと思うかもしれないけど、結構知らない人も多いみたいね。

――4WDだからQ4がベースですか?

松本 そのとおり。ベース車両は155 Q4なんだ。しかもこの頃は日本でいう5ナンバー枠の全幅だったんだよ。初期のQ4は全幅が1700㎜以下だからね。

――イタリア車って四駆モデルの評価が二駆より低いとき、ありますよね?

松本 そうかな? 155はそんなことないよ。最高速も速くて0-100㎞/h加速も7秒だよ? ちなみに2.5LのV6モデルが8.4秒。いかにQ4のロードホールディング性能が良かったか、分かるよね。

――4WDシステムが一緒ってことは、ランチア インテグラーレとプラットフォームが同じだったんですかね?

松本 そのあたり、いろいろ調べたんだけど事実は分からないんだよね。インテグラーレのプラットフォームはティーポ2といってフィアット クーペとかアルファロメオ145とかコンパクトクラスのプラットフォームなんだ。155は日本でも一時期マツダが販売していたランチア デドラ(* 1)と同じプラットフォームなんだよ。

でもエンジンルームなんか見るとほとんどデルタも155も変わらない感じだった。あ、ちなみにエンジン自体はフィアットのブロックにアルファロメオが設計した16Vのシリンダーヘッドが搭載されているんだ。このエンジンのレイアウトデザインがいいんだよね。
 

アルファロメオ 155

――そもそもデザイナーは誰ですか?

松本 知らないの? この車のデザインはエルコール・スパーダ(*2)だよ。この天才はエンスージャストならば誰もが憧れる、アストンマーティン DB4 GTザガート(*3)をデザインした人なんだよ。

アルファロメオだとTZ(*4)なんかがそうだね。コーダトロンカの代表するストラダーレのスポーツカーでレーシングカー。美しい形で有名なSZもそうなんだよ。

――それは凄い方ですね……。

松本 もう歴史的なモデルがいっぱいあって伝えきれないよ。155Q4は95年のマイナーチェンジでワイドフェンダーになるんだ。これがブリスターフェンダーなんだけどこれが痺れるほどカッコいいんだよ。

大抵のモデルは初期型の方がいいとされるんだけど、僕は断然ブリスターフェンダーの後期型だね。

――改めて見ると素敵ですよね。

松本 このワイドフェンダーにしてからステアリングのロックトゥロックもクイックになってスポーティなんだよ。しかもさっき言ったけど戦歴が素晴らしい。名車以外の何物でもなね。

もっともレースで活躍していた頃はナローボディのタイプだったんだけどね。ナローボディーのQ4は2600台近く作られているんだけどワイドボディの155 Q4はなんと110台程度しか生産されなかったんだ。

――え? それも知りませんでした。

松本 少ないよね。そもそも155自体、あっという間に生産終了になってしまったからね。

――確か1992年から98年ですよね?

松本 そう。そのわずか6年間で約19万2000台ほど生産されたらしいけど、ほとんどがベースグレードみたいなおとなしいモデルだったんだ。日本には4気筒ターボのQ4やV6 2.5L、2Lのガソリンもあったね。欧州では1.6Lのガソリンから2.5Lのディーゼルも存在してて6年間に11種類のバリエーションがあったんだ。

――結構グレード豊富なんですね。

松本 今後こんなに個性があって上品、しかもピュアなデザインってなかなか出てこないんじゃないかな。なんたって超一流のスポーツカーをデザインした天才が手掛けたモデルだからね。名車予備軍として僕のイメージにぴったりとはまる90年代の名車だね。
 

アルファロメオ 155

■注釈
*1 ランチア デドラ
プリズマの後継として1989年から発売。セダンとワゴンボディがあり、約10年と兄弟車の中で最も長く生産されたモデルである。

*2 エルコール・スパーダ
1938年生まれのイタリア人デザイナー。ザガートやBMWに所属し、多くの名モデルを生み出した。代表モデルはジュリエッタSZなど。

*3 アストンマーティン DB4 GTザガート
アストンマーティンラゴンダが作ったスポーツカーで生産は1960~63年。DB4GTを軽量化し、総生産台数は19台のみ。

*4 TZ
1963年に開発されたジュリエッタSZの後継モデル。正式名称はジュリアTZ。多くのレースに参戦し、輝かしい結果を残している。
 

アルファロメオ 155(初代)

アルファ75の後継車として1992年から1998年まで製造された4ドアセダン。フィアットグループ内の3社による開発プロジェクトで生まれたモデルで、ランチア デドラやフィアット テムプラと兄弟車種となる。発売期間が短い割にグレード数は多めで、Q4は4WDモデル。
 

※カーセンサーEDGE 2019年11月号(2019年9月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています

文/松本英雄、写真/岡村昌宏